デジタルフォト&デザインセミナー2014

写真の基本はレンズにあり! キヤノンEFレンズの使いこなし

講師:南雲暁彦(フォトグラファー)

7月2日・4日に開催された「デジタルフォト&デザインセミナー2014」1本目のセッションには、フォトグラファーの南雲暁彦氏が登壇。デジタルカメラの黎明期から研究と実践を重ねてきた氏が、その体験に基づいたレンズの見極め方、使いこなしについて語った。

デジタルカメラの進化とともに

img_event_dpds201401_27.jpg 南雲暁彦 氏(フォトグラファー)
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。1993年日本大学芸術学部写真学科卒業後、凸版印刷株式会社入社。トッパンアイデアセンター映像企画部所属。チーフフォトグラファー。コマーシャルフォトを中心に映像制作、セミナー講師なども行なう。海外ロケを得意とし世界中をフィールドに映像制作を行なう。APA広告年鑑、全国カタログ・ポスター展グランプリなど受賞歴多数。APA会員。知的財産管理技能士。

こんにちは。トッパンアイデアセンター映像企画部でチーフフォトグラファーをしています南雲です。今日は「写真の基本はレンズにあり! キヤノンEFレンズの使いこなし」と題しまして、私自身が長く付き合ってきた、キヤノンEFレンズでの撮影経験をもとに、よいレンズはどういうものなのか、どう選べばいいのかといったお話をさせていただければと思っています。

話の本題に入る前に、簡単に自己紹介をさせていただきます。凸版印刷ではデジタルカメラの黎明期から、デジタルデータをどう扱えばその真価を発揮させることができるのか、研究と実践を重ねてきました。キヤノンのカメラで言うと、1995年に発売された同社初のデジタル一眼レフカメラ「EOS DCS3」が最初だったかと思います。ご存じない方が多いかと思いますが、130万画素の、大変高価なカメラでした。

そんななかで私自身は、いわゆるコマーシャルフォトの領域から、特にキヤノンの仕事に多く携わってきました。その代表的なものがカメラやレンズのサンプルフォトなどのプロモーション撮影です。振り返ってみると、ほとんどのカメラ、レンズの撮影を担当しています。今回はそのなかでも代表的なものをスライドムービーにまとめましたのでご覧いただければと思います。ほとんどの写真がカメラとレンズの性能を見るものですので、撮影したまま、ノーレタッチの作品です。

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海外の写真が多いのは、キヤノン製品が世界中で使われていることもありますが、天候などを鑑みつつ、カメラやレンズの最高の性能を引き出すための、もっともコンディションのいい地域をその都度選んできた結果とも言えるかと思います。なかには、性能向上をわかりやすく示すために、あえて過酷な環境で撮影を行なったものもあります。その代表的なものがオーロラです。

夜景撮影はカメラの世代が改まるごとに驚くほどに仕上がりがよくなっています。たとえば「EOS 5D」から「EOS 5D Mark II」、そして「EOS 5D Mark III」と、その進化は驚くほどのものがあります。デジタルの進化という点で言えば、はじめてカタログの表紙に、デジタルカメラで撮影した写真が使われたのは1998年の「EOS D6000」だったと記憶しています。そこからここまでの進化は、本当に素晴らしいと思います。

img_event_dpds201401_06.jpg EOS D6000・D2000のカタログ表紙(左)

最近の仕事としては「EF16-35mm F4L IS USM」の撮影をしました。関心を持っている方も多いかと思いますが、この6月に発売された新しいレンズですね。

img_event_dpds201401_07.jpg キヤノンの海外サイトに掲載されているEF16-35mm F4L IS USMの作例写真(左)

また、日産自動車のカレンダーも撮影も担当したり、EOS 5D Mark II以降は、ムービーの撮影も行なうようになりました。これもカメラの進化に伴う大きな変化の一つだと思います。

img_event_dpds201401_08.jpg img_event_dpds201401_09.jpg 日産自動車のカレンダー(上)と、同じく日産自動車のムービー(下)

コマーシャルフォトの世界でも使われるようになった「35mmカメラ」

さて、ここからは本題に入っていきたいと思います。今日お話ししたいと思っていることを、箇条書きでまとめてみましたが、まず最初にお話しするのが「35mmフォーマットの守備範囲」というテーマです。何をいまさら、とお感じの方もいらっしゃるかと思いますが、私はとても重要なポイントだと考えています。

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コマーシャルフォトの世界では、アナログの時代には「4×5」フィルムを使うのが一般的でした。蛇腹のついたカメラに、35mmよりはるかに大きなサイズのフィルムを入れて撮っていたわけです。トリミングがしやすく、なにより画質が素晴らしかったというのが、選ばれた大きな理由です。

しかしデジタルの時代になって、中判サイズのデジタルカメラが、価格の高い、使いにくいものになったこともあり、画質が飛躍的に向上した「35mmフォーマット」のデジタルカメラが使われるようになりました。それまでコマーシャルフォトの世界では、ロケーション撮影などの部分使用にとどまっていた、小さな35mmフォーマットが、メインのスタジオ撮影にも進出してきたというわけです。

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ただし、スタジオで使うカメラにいくつかの条件があり、どんなカメラでもいいというわけではありません。逆に言いますと、たとえばキヤノンのEOSとEFレンズの組み合わせはこういった点をクリアしいるからこそ、多くのフォトグラファーに使われていると言うことができると思います。

一つはポスター等での印刷ができる「解像度」があること。さらには4×5のカメラでは可能な「あおり撮影」ができること。さらにはスタジオに用意されている「機材との親和性」も大切な条件です。ストロボ機材とのシンクロ用の端子がついているのか、といった点ですね。

プロが考える「よいレンズ」とは

そして、もっとも大事だといえるのが「レンズ」です。よいレンズが使えなければ、撮影はできません。では、プロが使ううえで、よいレンズとはどういうものか。ここからが今日のお話の本題です。ここではその条件を二つに分けて説明したいと思います。

まず一つ目は、適切な「撮影設計に適応するか?」という点です。撮影設計とはどんな仕上がりが求められ、どんな環境で撮影をするのかといった条件に合った、計画を立てることを言います。その設計に基づいたレンズが用意されているのかどうか。たとえば、接写が必要な場合にマクロレンズがあるか、あおり撮影が求められる場合にシフトレンズが用意されているのかといったことです。プロの要望に応えたラインナップを揃えているのか、と言い換えることができるかと思います。

そのうえで二つ目の条件、「光学的に優れている」かがポイントになります。ではここでいう「光学に優れている」とはどういうことをいうのかというと、「味がある」とか「色がいい」といったことではなく、「撮りたいものが要求どおりしっかり描写されるのか?」、もう少し具体的に言うと、「レンズの描写に大きく関わる収差の少ないレンズかどうか」といった点に今回は注目します。

画質に悪影響を及ぼす「収差」とは

レンズは、光を何枚ものガラスを通して集光しているわけですが、その際に生じる、「物理的に逃げられない諸問題」を総称して収差と呼びます。たとえば、光にはさまざまな色がついていますが、光の色によって屈折率が異なるため、光が一点に集束しないといった問題が生じます。それが画質に悪影響をもたらすわけです。

たとえば建物のエッジの部分に紫色のラインが発生していますが、これは「倍率色収差」です。小さな画面ではわからないもしれませんが、たとえば印刷してみるとはっきりと出てしまう。商品撮影などではNGが出ることもあるでしょう。

img_event_dpds201401_13.jpg エッジの部分に紫色のライン(倍率色収差)が発生している

次に挙げるのが、先ほども触れた「周辺画質の劣化」です。ここでお見せする作例は「EF17-40mm F4L USM」という、デジタル初期から広く使われているレンズで撮影したものです。このレンズの描写はとても素晴らしくて、私なんかは同じシーンを別アングルで同時に撮影したいがために複数本を揃えていたぐらいですが、その後、カメラ側の高精細化が進んだおかげで、写真の周辺画像の流れが目立つようになってきました。これが周辺画質の問題です。

img_event_dpds201401_14.jpg EF17-40mm F4L USMの作例。最近のカメラは高精細になったので、周辺画像の流れが目立つようになった

また「歪曲収差」も問題の一つです。まっすぐなものがまっすぐに映らないという問題です。作例は樽型に歪曲していますが、これもまた、ガラスを通して撮影することにによって生じる収差の一つです。

img_event_dpds201401_15.jpg 本来まっすぐなはずのドアが樽型に歪んでいる

もう一つ、収差ではないのですが、画像に悪さをする現象の一つが、「回折現象」です。「小絞りぼけ」といったりするのですが、同じレンズでも絞りこむことで、画像のシャープネスが低下し、描写が甘くボケて見えてきます。

img_event_dpds201401_16.jpg 右は回折現象が発生して描写が甘くなっている

収差にどう対応するか

いいレンズは、ここまで紹介した収差などの問題が少なくなるよう設計がされています。後で紹介するように、最新のEFレンズには驚くような進化を見せているものがあります。それでも、光学的にどうしても避けられない現象として、多かれ少なかれ問題は発生します。では、これらの諸問題とどう付き合って、いい仕上がりを得ればよいのか。

EOSシリーズの場合は、カメラのなかに、EFレンズそれぞれの固有の情報を保存し、自動的に倍率色収差や周辺光量収差を補正してくれる仕組みが用意されています。

img_event_dpds201401_17.jpg カメラのメニューの中に「レンズ光学補正」という項目があり、周辺光量補正や色収差を補正できる

また、キヤノンがリリースしている「Digital Photo Professional」に搭載された「デジタルレンズオプティマイザ」という機能を使えば、レンズごとに異なる収差や回折などに対し、理想的な光学特性となるよう処理を行ない、特に画像周辺部における画質を向上してくれます。古いレンズを使っている場合などは、こういったアプリケーションを活用することで画質の向上を図ることができると思います。

img_event_dpds201401_18.jpg Digital Photo Professionalに搭載されたデジタルレンズオプティマイザの機能

レンズの進化も驚くようなものがあります。新しいレンズは、絞りを開放に設定した場合でもシャープです。たとえば、定番レンズの一つである「EF17-40mm F4L USM」と、最新の「EF16-35mm F4L IS USM」で、それぞれの開放で撮影したものを比較してみると、特に周辺を拡大すると大きな差があることがわかるかと思います。この差は、新しいカメラで撮影した場合によりはっきりと確認できるもので、先ほど紹介したアプリケーションでは埋めることのできないほど大きなものだと感じます。

img_event_dpds201401_19.jpg 周辺画質の比較。左は最新レンズのEF16-35mm F4L IS USM、右はこれまでの定番であったEF17-40mm F4L USM

絞った場合の画質にも大きな差が生じています。レンズの精度はもちろん、収差や回折などの問題に対しても許容度が上がっていることがわかるかと思います。新しいレンズを使う意味は、やはり、小さくないと言えるのではないかと思います。

なお、ここまで、カメラやレンズの精度が高まってくると、以前と比較してよりいっそう重要になっている要素が「フォーカシング」です。その際に「ライブビュー」は、撮像面での状態を直接確認できる機能ですので、積極的に活用するのがいいと思います。

アプリケーションを積極的に利用する

「仕上がり画質を高めるには」といった話になると、できるだけ光学上で解決すべきだと考える方が多いかと思います。確かにそうなのですが、ケースによっては、アプリケーションが有利になることがあるという例をあげてみたいと思います。

「TS-Eレンズ」は「あおり」を行なうためのレンズです。素晴らしいレンズで、私も長く活用しており、これがあるからEFシステムを使っているというフォトグラファーもいるくらいのレンズです。とはいえ、状況によってはうまく使いこなせないこともあります。

作例は、左が広角レンズで撮影したもの、右がTS-Eレンズを使って撮影したものです。TS-Eレンズのほうは、建物をまっすぐにすることに気が行ってしまったからか、結果的に不自然な形に写ってしまっています。

img_event_dpds201401_21.jpg 左は広角レンズ、右はTS-Eレンズで撮影したもの。TS-Eレンズの方は、少しあおり過ぎてしまっている

これと比較する形で、広角レンズの画像に対して、Photoshop CCのCamera Rawの「レンズ補正」機能を適用してみました。こちらのほうはPhotoshop CCに搭載されているUprightテクノロジーのおかげで、自然な仕上がりに補正されています。

img_event_dpds201401_21b.jpg 左は広角レンズで撮影した元画像、右はPhotoshop CCのCamera Rawで補正したもの

ここで言いたいのは、どちらが優れているということではありません。おそらく、現場でTS-Eレンズを使ってしっかりと追い込んで撮影すれば問題のない写真を撮影できたでしょう。とはいえ、状況によってはアプリーションの力を借りるほうがいいケースもある、ということを言いたいのです。アプリケーションでできることをよく知って、使い分けることでより良い仕上がりを得ることができるということを覚えておくといいでしょう。

これは、画像の一部にしかピントの合っていない、いわゆる「ミニチュア写真」を撮影する場合でも同様です。Photoshopの「ぼかしギャラリー」の「チルトシフト」を使うと、TS-Eレンズを使った場合(左)と遜色のないミニチュア写真にすることができます。

img_event_dpds201401_22.jpg 左はTS-Eレンズを使って一部だけピントを合わせた作例。右はPhotoshop CCのチルトシフト機能を使って同じような効果を出した画像

ただし、こういったアプリケーションを使うと、不自然な仕上がりになってしまうことがあります。それを避けるためには、現場でイメージをしっかりと固めておくこと、さらには、アプリケーションの使い方をよく知っておく必要があります。その点は気をつけてください。

過酷な現場で正否を分けるもの

さて、ここで話題を変えて、これまでキヤノンの撮影で訪れた、少々過酷な現場で得た撮影のノウハウをいくつか紹介したいと思います。冒頭のスライドでも紹介していますが、撮影場所のなかには風が強かったり、極端に寒かったりと、環境の厳しい場所が多々ありました。そんな時にはカメラだレンズだという前に、撮影を滞りなく行なうための環境を整えることが大事になります。

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たとえばズームレンズは花の形状をした特殊なフードを使っているものが多いのですが、フードが回転してしまうと画面に写り込んでしまう。風の強い空撮などでは、ロック機構がないとフードが回ってしまうことがあり、非常に困ります。また、雪の多い場所では手袋、マスク、サングラスなどもシューティングギアだと思って、しっかりとした用具を揃えないと撮影どころではなくなってしまいます。こうした準備がしっかりできてはじめて、カメラやレンズの性能が発揮されるというわけです。

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新しいアウトプットの形

さて、最後に「アウトプット」の話をしたいと思います。以前は写真作品でのオリジナルといえば、「オリジナルプリント」だという時代がありました。もしかするといまも、オリジナルプリントを一段上に見ている方もいるかもしれません。しかし、いまはiPadのようなタブレットで見たり、インクジェットプリンターで出力して見たりと、さまざまな「見られる形」があり、むしろ、そちらのほうが機会が多いと言えるでしょう。

実は最近、インクジェット技術を使った印刷機を利用して「BRASIL」という写真集を作ったのですが、これが画質面で高く評価されるという経験をしました。また、日々撮影している作品の反響は「ネット上で配信された作品」からのものが圧倒的です。「オリジナル」というものに対する、見る側の意識はすでに変わってしまっていると考えるほうが適当なのかもしれません。

img_event_dpds201401_25.jpg インクジェット印刷機で制作した写真集はその画質が高く評価され、全国カタログポスター展でグランプリを受賞した

これからの写真作品は大きくプリントされたり、タブレット上で拡大して見られたり、といったことを意識しないといけなくなると思います。だとすると、ここまで説明してきた「収差」や「回折」なども、写真を評価する際の一つのポイントになってくるでしょう。

「テクスチャの肌の部分までわかるレンズがいいレンズ」だという言い方がありますが、先ほど紹介した「EF16-35mm F4L IS USM」はズームレンズであるにも関わらず、シャープネスが良い。しかも単焦点レンズのように素材の肌理まで表現できるので、レンズの価値はより高くなっています。

アウトプットのクオリティを上げるためには、このような最新のレンズを積極的に活用したり、その一方で、アプリケーションの力を借りて画質の品質を上げることも、大事なポイントになると思います。

写真で大切なのは、どんな技法を使っているかではなく、仕上がりの品質だと思います。レンズ選びもアプリケーションの活用も、どちらも目的を達成するためには重要なファクターになります。さまざまな技法を駆使して、よい画質を追求していっていただければと思います。

今日は長時間にわたって話を聞いていただき、どうもありがとうございました。

取材:小泉森弥

「写真の基本はレンズにあり! キヤノンEFレンズの使いこなし」 当日の動画はこちら

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