デジタルフォト&デザインセミナー2014

広告ビジュアルのためのレタッチテクニック

講師:吉川たけし(ライジン エグゼクティブCGデザイナー)
山田陽平(ライジン シニアCGデザイナー)

3本目のセッションは、フォトレタッチ業界最大手のクリエイター集団「ライジン」所属のCGデザイナー、吉川たけし氏と山田陽平氏が登場。広告で使用されるビジュアルがPhotoshopによってどのように仕上げられるのか、吉川氏が2Dの広告ビジュアルを、山田氏が3DCGモデルを例に挙げてレクチャーした。今回のセミナーレポートではその中から、山田氏のパートを詳しくお伝えする。

8GBのデータも軽快に扱えるPC環境

はじめまして。ライジンの吉川たけしと申します。同席しているのは同じくライジンの山田陽平です。我々ライジンは、広告などで使われている写真や動画の3Dと2D、CGの制作を数多く手がけています。私は主に2Dの分野で、山田が3Dの分野を担当しています。

img_event_dpds201403_01.jpg 吉川たけし 氏(CGデザイナー)
1997年、(株)アマナの前身、(株)イマ入社。デジタルイメージング部門の入出力オペレーターとして多くのフィルム写真に触れ、2000年、レタッチャーとして活動開始。2012年から(株)ライジンに所属。広告写真を中心に多くのレタッチを手がけ、数多くの受賞歴をもつ。写真ならではの良さを活かし緻密なプロセスから絵を仕上げていくことを心がけ、仕上りに自分の痕跡を残さないことがモットー。
img_event_dpds201403_02.jpg 山田陽平 氏(CGデザイナー)
1978年7月生まれ。カメラマンである父の影響で、幼少からPhotoshopで遊び始める。2004年デザイナーデビューの後、アマナにCGクリエイターとして入社。現在は(株)ライジンにて、3DCGと2DCGの融合をめざし常に新しい技術開発に奮闘する日々。2011年 ワンショウ Collateral Designブロンズ賞ほか受賞、2013年 産業広告賞ストーリー部門1位、アドフェスト Mobile Lotus シルバー

今日は「広告ビジュアルのためのレタッチテクニック」というテーマでPhotoshopによるテクニックを紹介したいと思います。

話を始める前に、我々が使用しているPC環境を紹介したいと思います。普段我々がメインマシンとして利用しているのが「HP Z820 ワークステーション」です。CPU、メモリ、グラフィックボードといずれも高性能なものが搭載されており、プロフェッショナル向けの環境が構築できます。これから紹介するテクニックに使用しているデータは、8GBほどもある大きなデータなのですが、それを感じさせないほどに軽快に扱うことができます。

img_event_dpds201403_51.png HP Z820 Workstation
CPU:Intel Xeon 12core/2.7GHz x 2
メモリ:48GB HDD:1TB
グラフィックボード:NVIDIA Quadro K6000
Thunderbolt 2カード搭載
PROMISE Pegasus2 R8接続
img_event_dpds201403_53.jpg Wacom Cintiq 13HD
液晶ディスプレイ:13.3型 / IPS方式 / 1920×1080ピクセル / Adobe RGBカバー率 75%
ペンタブレット機能:筆圧レベル2048レベル / 傾き検出角度40° / プロペン付属

ペンタブレットは通常ワコムのIntuos 5を使用していますが、今日はワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq 13HD」を使用します。ワコムのペンタブレットは制作の現場にはなくてはならないものとしておなじみのものですが、液晶ペンタブレットは細かな作業を手元で、全体を見るには大きなスクリーンを利用してといった使い方が可能です。そしてHP Z820には、つい最近アップデートされた、「Adobe Creative Cloud」の新バージョンである「Photoshop CC 2014」をインストールして使っています。

3D作業の工程とは

ライジンの山田です。私の方からは、3DのフルCGを扱う場合のPhotoshopの使い方を紹介していきたいと思います。いま、水素自動車の完成図が画面に表示されています。車が水に溶け出していくような、有機的な表現を狙っています。

img_event_dpds201403_54.jpg 車:(c) Storm 909 / TurboSquid / amanaimages 背景:(c) Giimann / TurboSquid / amanaimages

今回の制作は3つのパートに分かれています。まず、流体をシミュレーションする「RealFlow」で車が水に変わっていく部分を作り、次にそこに「Maya」を使って水のテクスチャを貼り付けレンダリングをし、最後に「Photoshop CC 2014」でそれら素材を組み上げていく、という工程になります。

img_event_dpds201403_41.jpg

img_event_dpds201403_42.jpg 元の素材となる車の3DCGモデル

「RealFlow」では、あらかじめ用意しておいた「車」のモデリングを水で満たし、そこに風を吹きかけたりして水滴を飛ばす、といったイメージです。

img_event_dpds201403_43.jpg img_event_dpds201403_44.jpg

その水滴に塗料のテクスチャを与えて水に溶けていく感じを出しました。撮影の際にいいカットのあがりを待つのと同じような感覚で、何度もトライを繰り返して、最適なものを仕上げます。

img_event_dpds201403_45.jpg 水滴に塗料のテクスチャを載せていく

3Dの場合、テクスチャを変更してレンダリングをしなおす、といった作業を繰り返し行なうことができますので、今回のように塗料が溶け出して水になるといった、独特な表現にもトライしやすいと思います。

実際に作業する際には、複数の出力から「いいとこどり」をするのが基本です。数枚の出力から、必要な部分をピックアップしてPhotoshopで組み合わせます。

「パース」と「デプスオブフィールド」を活用する

また3Dアプリでは、レンダリング時に正確なマスクも出力することができますし、「パース」や「デプスオブフィールド(被写界深度データ)」も同時に出力することができます。「デプスオブフィールド」は白黒の画像データで白いところがカメラから近いところ、黒い部分がカメラから遠い場所を示しています。これらは後々、非常に重要なデータとなります。

img_event_dpds201403_46.jpg
img_event_dpds201403_47.jpg
画像をレンダリングする際に同時に出力した「パース」と「デプスオブフィールド(被写界深度)」のデータ。さまざまな活用ができる

なお、これらのでデータすべてを含む「openEXR」という形式を選択し、画像を32ビットで保存しておきました。図は背景を出力したものです。32ビットは写真でいう「HDR」のようなもの。きちんと階調が保存されていますので、後からでも余裕を持って画像の明るさを調整することができます。白とびを抑えたり、一見つぶれてしまっているデータもコントロールすることができます。

img_event_dpds201403_48.jpg 出力された背景画像

ここからはPhotoshopでの作業となります。先ほど紹介した「デプスオブフィールド」のデータをマスクとして使ってトーンの調整をすると、カメラの手前から奥に向かってだんだんと暗くなるという演出が簡単にできますし、手前から奥に向かって少しずつぼけていく様子を表現することも可能です。

ぼかす場合ですが、データを選択範囲に変換した後、アルファチャンネルとして保存しておきます。そのうえで、「フィルター」メニューの「ぼかし」から、「ぼかし(レンズ)」を使います。「ぼかし(レンズ)」には「深度情報」の「ソース」から、アルファチャンネルに保存しておいた「デプスオブフィールド」の情報を読み込むことができます。これを使うことで自然なぼけができあがります。

img_event_dpds201403_49.jpg 「デプスオブフィールド」のデータをぼかしフィルターのマスクとして使う

車のCGと組み合わせたら、Photoshop CC 2014に新たに搭載された便利な機能を使って効果を加えたいと思います。それが「フィルター」メニューの「ぼかしギャラリー」にある「パスぼかし」です。パスに動きに沿ってぼかしを適用する機能で、狙ったぼかしをかけることができます。先に出力した「パース」のラインに沿ってぼかしをかけていくと、自然なぼかしになります。始点と終点のぼかしの量を変えることができますし、同じ場所に何本もバスを入れてぼかしをかけることができるので、さまざまな応用が可能になります。

最後に、同じく新しい機能である「スピンぼかし」でタイヤの回転している様子を表現できますのでこちらを使って仕上げとしたいと思います。これもまた、非常に便利な機能です。皆さんもぜひ試してみてください。

img_event_dpds201403_50.jpg 「スピンぼかし」でタイヤの回転している様子を表現する。

少々駆け足でしたが、3DデータとPhotoshopとの連携を紹介しました。自分なりのアイデアを活かしながら、その機能をうまく活かすことでオリジナルな表現を見つけていただければと思います。

今日は長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

取材:小泉森弥
会場写真:竹澤宏

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