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「Adobe CS5 DSLR MOVIE DAY」セミナーレポート② フォトグラファーが始める映像作成

取材:丸山陽子

アドビシステムズが主催したデジタル一眼動画製作セミナー「Adobe CS5 DSLR MOVIE DAY」のユーザー講演、フォトグラファーの山崎雄一氏のセッションを紹介する。山崎氏がどのように映像を仕事にしていったのか、さらにフォトグラファーが映像の分野に足を踏み入れたときの実際など、具体的な話が飛び出した刺激的なセッションとなった。

動画を撮影できるデジタル一眼を手にしたことをきっかけに映像へ

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山崎雄一氏

もともと映像には興味があったという、山崎雄一氏。一例として映画の予告編を挙げ、短い尺の中に「この映画を見たい」と思わせる作りなどに関心があったという。しかし、やってみたいと思いつつも、デジタル一眼に動画機能が搭載されるまでは敷居が高かったそうだ。そんな山崎氏にとって、EOS 5D Mark Ⅱの登場は魅力的だった。

「ただ、5D Mark Ⅱのシャープでクリスピーな感じがいかにもデジタルというように思えて、発売後すぐには買わなかったんですね。でも24P動画対応のファームウェアが公開されると聞いて、これはもしかしたら面白いんじゃないかということで購入しました」

EOS 5D Mark Ⅱを手にした山崎氏は、さっそく2ヵ月ほどで何通りものプレゼン用作品を創り上げ、出来上がった作品はクライアントにどんどん見せていったという。その時の作品が4つほど会場で披露されたが、女性モデルをメインにした映像、オフロードバイクの映像、バンドの音楽PVなど、バラエティに富んだ作品群であった。

これらの作品の音楽は、著作権料フリーの素材を使って仕上げている。またモデルは、リレーションがあったモデルエージェンシーに声をかけてほとんどノーギャラで協力してもらっているが、最初は「動画なんて…」と理解が得られず苦労したという。しかし撮影した映像を見せると、だんだんと協力してくれるエージェンシーが増えるようになり、なによりモデル自身がものすごく喜んでくれたという。

こうしてテストシューティングを行なっていた山崎氏が、プレゼンツールとして大いに活用したのが映像投稿サイト「Vimeo」だ。

「(映像をユーザーが投稿するという)コンセプトはYouTubeみたいなものですが、デザインがいいので世界中のクリエイターが好んで使っています。無料でも使えますが、年間59.95ドルを支払うと自分のページのデザインをもっとカスタマイズできるんですね。そのURLを(クライアントに)どんどん送りました」

実際にVimeoの山崎氏のページが会場に映し出され、映像のサムネイルがずらりと並んでいる様子を見ると、YouTubeとはひと味も二味も違うのが分かる。確かに、シンプルながら見やすくカッコいいサイトだ。

img_event_other_cs5dslr02_02.jpg 山崎さんのVimeoページ(http://vimeo.com/channels/yzgraphics)。こういったツールも武器にし、どんどんプレゼンを仕掛けたという。

低予算でも、経験が少なくても、すぐに何本か作って実際に見せる。とにかく山崎氏は、撮影だけでなく、映像の編集ができて音を付けることもできますよ、ということをアピールしたかったという。その姿勢からは、新たに映像という分野で仕事をしていきたいという意気込みが伝わってくる。プレゼン用作品も「これはアパレルに持って行こう」など、相手を想定した作品作りを行なっている。とはいえ、大切なのは自分の個性だ。

「どんどん、自分の個性を作って見せて、プレゼンしていくしかないと思いました。たくさんの方に見せたのですが、いいねといってくれる人もいれば、もちろん反応がない人も(笑)。その中の一人の方が、ほんとにできる?と言ってくれて、仕事として話が進みました」

フォトグラファーにとっての映像の仕事

山崎氏がこれまで手がけた映像の仕事として、アパレルメーカーの「Haute Hippie」とファストバッグブランド「SAVOY」の映像が会場で紹介された。Haute Hippieは日本初上陸となるアパレルブランドで、グラフィックのアートディレクションと映像を担当。撮影はニューヨークで行なわれた。スチール撮影は別のフォトグラファーが担当していたので、その撮影風景を映像化していった。また、SAVOYはもともとフォトグラファーとして請け負っていた仕事であり、今回はスチール撮影と映像の両方を行なったという。

a day with coco_Haute Hippie from Yuichi Yamazaki on Vimeo.
Haute Hippie Webムービー(1分54秒)

CF 30" sec. from Yuichi Yamazaki on Vimeo.
SAVOY 店頭用映像(1分3秒)

「Haute Hippieでは、フォトグラファーが撮影しているところを後ろから撮影したり、横から撮影したりしました。メイキング風の映像だったので、経験がなくてもすんなり入れましたね。SAVOYはカバンのブランドですから、カット数が多くて。そして、その合間合間に映像を撮るということで、現場は戦場のようでした(笑)」

スチール撮影での豊富なキャリアを持つ山崎氏が、スチールと映像の違いをどのように考えているのだろうか。

「動画だから当たり前といえば当たり前ですが、“動き”を重視した映像を撮っていきたいと思っています。たとえば最初に見てもらったバイクの映像(プレゼン用に作った映像のうちの一つ)は、激しい動きを追いかけているから、フォーカスがずれるところがあるんですね。でも、そういうことにこだわりすぎず、自由にやっていこうかと思っています。もちろんフォーカスが重要な場面では、そういうことを気にしますが」

まだまだ自分の個性が出し切れていないという山崎氏だが、映像ならではの表現を追求している様子が窺えた。

撮影や編集はともかく、フォトグラファーが映像の仕事を行なうとき一番わかりにくいのが納品データの作成、特にテレビの電波に乗せる場合だ。スチールの場合とは違い、テレビ信号の規格に準じて仕上げなくてはならない。山崎氏も、初めてのCM納品は非常に苦労したという。

「SAVOYはテレビCMと店頭用映像の2種類を作ったのですが、テレビCMのノウハウも経験もなかったので、正式に発注があってから焦ってしまいました(笑)。映像畑の知り合いに聞いたり、ポストプロダクションも2社回っていろいろ聞きましたね。本当にわからないので、例えば音は最初の12フレームを空けてくださいとか、そんなことからポスプロの人には教えてもらいました」

CMとして納品するには、ポスプロで放送用ビデオテープに落としてもらう必要があるが、自分で編集したデータとMacをポスプロに持ち込んで、その場でポスプロのスタッフと相談しながら編集の手直しを行なったという。一方で、Web用の納品データ作成はほとんど手間がかからない。デザイナーの要望があればそれに合わせるが、たいていの場合はクイックタイム形式で納品し、データ自体もYouTubeにアップする程度の容量でよいという。

初めて使ったPremiere、そのストレスのなさ

山崎氏は、実はこれまで「Adobe Premiere Pro CS5(以下、Premiere)」を使ったことがなかったという。セッションの最後は、初めてPremiereで仕上げた作品を披露しながら、Premiereのインプレッションについて語った。

One Tokyo Morning for adobe premiere pro CS5 from Yuichi Yamazaki on Vimeo.
今回のセミナーのためにPremiereで編集した作品(2分21秒)

「これは一見CGを使っているように見えますが、実はゆりかもめに乗って走行中の風景を撮影したものに、Premiereのミラーフィルターをかけています。映像の上半分を下に反転させただけですが、CGのように見えて面白いなと。Premiereを使ってみて便利だと思ったのが、外付けハードディスクの素材をドラッグ&ドロップしただけでプロジェクトに移せること。それから、Final Cut ProではいったんProResに変換する必要がありますが、Premiereではそのストレスがなくて、頭の中のイメージをそのままタイムラインに置いていけるんですね。イメージが頭から抜けないうちに、どんどん作業できました。このMacBook Proで作業しましたが、ノートブックでも作業にはまったく問題ありませんでしたね」

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初めてPremiereを使った山崎さんだが、素材をそのまま使える、操作に違和感がないなど、動画編集のストレスがなかったという。

“ストレスを感じない”という感想を一番に挙げた山崎氏だが、Premiereのインターフェイスが、使い慣れたPhotoshopに近いこともその一因だという。ヒストリーやエフェクトなどの機能が、Photoshopと同じ感覚で使えるのはフォトグラファーには非常に便利な点だ。またフィルター類を使う時でも、よほど複雑なエフェクトは別として、ほとんどの場合はレンダリングなしですぐに確認できるところもメリットだ。

映像を本格的に初めて約1年という山崎氏がどのように映像の分野に足を踏み入れたのか、どのように仕事を獲得していったのか。さながら、山崎氏の映像キャリアを初めから現在まで振り返るようになったセッションだった。それだけに「今、デジタル一眼レフで映像の仕事を始めて行くには」という現実的な内容を聞くことができ、これからを考えるクリエイターにとっては密度の高い時間であったのではないだろうか。

会場写真:竹澤宏


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