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操上和美&上田義彦選出のTAPA2015応募開始

操上和美さんと上田義彦さん。長年にわたって活躍してきた2人のフォトグラファーが、「写真をがんばっている人が喜べる純粋な広告写真の賞を作りたい」とTAPA(Tokyo Advertising Photographers Awards)を設立。このTAPAが2015度の選考をスタート。

応募形式:
データ応募可

締め切り:
3月10日(火)

選考会:
2015年3月下旬を予定。

問い合わせ先:
tapa@genkosha.co.jp


TAPA設立の経緯や想いは以下から。

写真をがんばっている人が喜べる純粋な広告写真の賞を作ります

上田義彦×操上和美

img_event_other_tapa150310.jpg撮影:浜村多恵 撮影協力:アーヴィング・プレイス(白金台)

広告写真、ポートレイト、作品、展覧会、CMなど、長年にわたって様々な分野で多くのクリエイターに影響を与え、活躍してきたフォトグラファーの操上和美さんと上田義彦さん。

2人はここ何年か前から、ずっと「何か広告写真と、そこに携わるすべてのフォトグラファーを元気にすることはできないか」と話していた。そして行き着いたアイデアが「新しい広告写真の賞」。現在、様々な広告賞があるが、そうした賞とは違い、あくまで2人のフォトグラファーの想いから生まれた「私的」な賞である。そこで、賞のことはもちろん、広告写真のおかれた現状など、ざっくばらんに話してもらった。

構想は7〜8年前からあった

──どのようなきっかけで賞を設立しようと考えられたのでしょう。

上田 広告にはいろいろな賞がありますけど、もっと純粋な広告写真の賞、写真の分野でがんばっている人が喜べる賞があってもいいんじゃないかと、以前から思っていたんですね。

もちろん、広告というのはクライアントを始め、プランナー、アートディレクター(以下AD)、コピーライターなどなど、いろいろな人が関わっているので、1人で撮っているわけじゃないですが、中には、「これは誰が見ても写真の力が大きく関わって、広告の力を強くしているな」と思えるものがあるので、それを見つけて褒める。そういうことを実は以前から考えていたんです。

操上 上田さんとは、7〜8年ぐらい前から広告写真をもっと面白くするために何かできないかと話していました。

そもそも広告写真には、曖昧な部分がある。広告写真はジャンルがはっきりと確立されているようでいないもの。どんな写真も広告に使えば広告写真になる。例えば戦争写真でも広告に使えば広告写真になってしまうと考えると、広告写真という明確な線引きってないんじゃないのかと昔から思っている人間なんだけども。一方で、広告写真って名前がつくと、どうしても写真の良し悪しとは関係なく、広告のための道具として良ければいいんだと、卑屈になっている感じもある。

広告写真というものが写真の良し悪しじゃなくて、作り込んでいくうちに流れていってしまう。そういうのが不満だった。「広告写真ってなんだろう?」、上田さんもつきつめればそういう想いがあったんだろうけど。だから会うたびに何かしたいと話していた経緯があるんですね。

それからまた時間が経って、今年になって、やっぱり何かやりませんかという話になって、じゃあ2人で賞を設立するのも、面白いかなと。

写真だけで選ぶとどうなるか

操上 僕はフォトグラファーで唯一のADC会員なんですね。ADCに参加して審査してみると広告の作り方がいろいろ見えてくる。広告は写真だけでは成り立たないものがあるじゃないですか。コピーあり、プランニングあり、デザイン処理まで関わっている。逆に言えばどんなにいい写真でもデザイン処理が悪ければ広告としてはだめになってしまう。そうなると、ある意味違う美意識も働くじゃないですか。広告として上手く成立させようと思ったら、どんなにつまらない写真でも、なんでもない石ころでも広告としてちゃんと見せることができる。広告ってそんな不思議な生き物じゃない?

それでもやっぱり「いい広告」は、写真もいいんですよね。ただ、いい広告だから何千点という作品の中で賞の最後まで残って来ている。

そういう選び方とは別に、純粋に写真だけで見たらどうなんだろうか。「広告写真」として新しいムーブメントがあるのかとか、「広告写真としていいよね」という視点ではなくて、純粋に写真だけで見たらどうなんだろうか。その基準で広告写真を見てみるのも面白いよね。1回やってみたい。やってみたら他の広告賞と同じ結果になるのか、写真だけ純粋に見ていったら埋もれていた広告写真が生きてくるのか。そういう興味もある。

広告っていう生き物そのものがクライアントも含めたすべての合作なので、本当は写真だけ純粋に見るものじゃないんですけども、1回そういう見方で見たらどうなるのか、やってみようかということですね。

選考は2人だけで行なう

──今回の選考はお二人で?

操上 この件で話し合っていく段階では我々以外にも何人かこの企画(審査)に参加してもらおうかとも考えたんだけど。でも、多くの人が集まって選ぶというのもちょっと違うだろうと。むしろ最初は、我々2人でもいいんじゃない?

上田 賞を渡す側にいわゆる権威を持たせたくないんです。持たないようにするためにはどうしたらいいのかということを考えていくと、あまり選者の人数を多くしない方がいいのかもしれませんね。

操上 もしこの賞に意味があると考えてくれる人がいれば、バトンタッチしたっていいんだし。そういうことで、とりあえずはやってみる。

上田 僕らがある意味、勝手に賞を作ってその広告写真を称えるわけですが、もらった人が純粋に喜べるものになったらいいですよね。広告賞は多いけれど、そんな賞はあまりない。ADC賞などは制作者の一員として嬉しいことではあるけれど、よりもっとフォトグラファーの支えになるものが必要かなと思うんです。

広告写真というものは、確かに広告というもののために撮影された写真ですが、だからこそ、写真として最も多くの人に見られるもの。それを純粋に写真の素晴らしさで評価するのは、広告に携わっているフォトグラファーにも「やって来たことは正しかったんだ」「もっと広告の根幹に参加していいんだ」と思ってもらえるのではないでしょうか。

──最初にこの話が持ち上がった7〜8年前というと、アートディレクションの時代というか、グラフィカルな広告表現が増えて来て、デザインのスピード感が謳われた頃ですね。新聞広告やポスターが減り始めた時でもあります。

上田 写真の不確実性というかな。本当にいいものが撮れるのかはやってみないとわからないじゃないですか。

天気などあらゆる要素で変化していくし、奇跡が起こってすごいものが撮れることもあるけど、その反対もある。そんな不確実なものを作るよりも、デザインの中だけで作った方が「いいものになるよ」っていう人たちがどんどん出て来た時代でした。

──今、広告は「いい写真」を求めていると思いますか。

操上 写真を求めているというか、広告ってメッセージだから、このメッセージのために写真を使うか、イラストレーションを使うか、文字だけなのか、それはCDなりADが決めればいいこと。写真が面白いなら写真を使えばいいし、求めているか求めていないのかという問題よりも…。

上田 それは自由ですよね。ただ心に残るもの、本当に強力な広告は、写真を使ったものが多いように思う。デザインだけで仕上げた広告はインパクトもあるし強い。でも、心の深いところに突き刺さる力はどうなんだろうか。写真というものは生が写っているから、すごい写真を見せられちゃうと、その残り方の強さというのは大変なものがある。写真にはそういう力があると思うんですね。

操上 写真って「リアル」と「リアリティ」の両方を持っているじゃないですか。リアルな現実と、その現実から生まれるリアリティみたいなもの。その辺りをどう使うかがアートディレクションとか広告メッセージの大事なところで、日常の中のリアリティが写っている写真は説得力があるし、ただ単に「うわー綺麗」っていう話ではない、強さとか深さ、惹きつける力がある。

広告写真は、そういう写真の底力をきちっと伝えられるフォトグラファーがいて、AD、コピーライターや多くの広告クリエイター、そしてクライアントと、全ての思いが重なって初めて成り立っているんだと思う。

フォトグラファーの目標になる賞

上田 広告の中でフォトグラファーがもっともっと信用されないといけない。いい広告を作るためにも写真家の力が大事なんです。写真の中で広告写真は世の中に一番見られるものなんだから、そこですごい写真を撮れば最高の喜びがあるんだということをもっと強く意識してほしい。

田舎のおばあちゃんがたまたま1枚のポスターを見て「いいね」って思うかもしれないわけでしょ。

広告はそういう媒体なわけだから、そこでがんばってみようというのは大事なことだと思いますよ。日本のためにも世界のためにも(笑)。素晴らしいものを美術館じゃなくても、駅で見られるんだと。

操上 そういうコンセプトというか想い、そういう目でもう1回、世に出た広告を見ていって、「これいいじゃない」という写真があるかないか。

上田 なかったら?(笑)。

操上 なかったら現状がそうなんだと。今、世の中に出ている広告がやっぱりいいねということになる。それとも「これいいじゃない、これでしょ」というものが見つかるかどうか。

──ところで、賞の名前ももう決まっていると伺いました。

上田 通称TAPA(TOKYO ADVERTI-SING PHOTOGRAPHERS AWARD)にしようかと考えています。もらったらもう飛び上がって喜んじゃうような賞になればいいんですが。

操上 結果的にどうなるか。こんな勝手に賞を選ぶなんて、いろいろ言われると思うけど、とりあえずやってみようと。

上田 非難ごうごうかもしれないですけど(笑)。それでも今の広告写真、フォトグラファーが元気になれるきっかけになればと思います。

※この記事はコマーシャル・フォト2014年1月号から転載しています。

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