一眼ムービーなんて怖くない!

第2回 ゼロから覚えるのなら、「Final Cut Pro X」だ!

解説:鹿野宏

動画撮影では必ずと言ってよいほど、撮影後の編集作業があります。不要な部分をそぎ落とし、必要な部分をつなげるというセレクト作業。その後、必要に応じて色彩を調整し、効果を付け、タイトルやテキストを入れ、場合によってはナレーションや音楽を挿入する作業です。

もちろんこの作業は、動画専門のプロダクションに任せるのもよいのですが、普通に音楽、ナレーション、つなぎ合わせの編集、テキストの組み込みであれば、私たちフォトグラファーでも、動画編集ソフトを使い作業ができます。「動画編集ソフト」というと敷居が高く思えるかもしれませんが、心配ありません。覚えなくてはいけないパレットや用語はPhotoshopよりも遙かに少ないのですから。

今、動画の編集で個人が仕事で使うとしたら、基本的にAdobe PremiereかApple Final Cutのどちらかになります。どちらもノンリニアライブ編集が可能なことを「売り」にしていますが、その使い勝手は全く異なります。

img_products_dslr_nofear02_01.jpg FInal Cut Studio
業界標準の動画編集ソフト。「ProRes422」というファイルフォーマットを採用して、非破壊編集が可能。欠点はその専用フフォーマットへの変換に時間がかかること。またフォーマットの構造上、かなりの容量になること。作業はメモリよりもCPUとハードディスクの容量に依存。64ビット未対応。

業界標準という位置を獲得しているのがFinal Cut Studioで、Premiereは後追いのような形になりますが、その分早く64ビットに対応しました。私も初めはもちろん Final Cut Studioを購入しました。驚くほど安くなっており、トランジションやフォントの美しさ、収録されている音源が豊富なことも魅力でした。「ProRes 422」というファイル形式を採用していますが、Final Cut Studioが業界標準となっているため、このフォーマットであれば、ほとんどのプロダクションに問題なくデータを渡すことができます。

この専用フォーマットは5種類ほどのサイズが異なるデータを内蔵し、表示用には小さな画像を使い、最終のエンコード時に実データを使用するため、非破壊編集とリアルタイム編集を可能としています。 

Final Cut Studioでの作業は、基本的にまず撮影したデータをこの専用ファイルにコンバートしてから、編集を行なうことになります。しかし難点はデジタルカメラで撮影した動画データを「ProRes422」専用ファイルにコンバートするのに、とても時間がかかること。3台のカメラで6時間撮影した動画をコンバートするのに、24時間マシンを占領されることもあります。

img_products_dslr_nofear02_02.jpg Premiere Pro CS5
データを全てメモリ上に展開して編集作業を行なうが、64ビット対応のため、メモリ容量を増やせば、ノートパソコンでもスムーズな作業が可能。撮影後、撮影現場や移動の際にも、確認、仮編集が行なえる。記憶の新しいうちに編集作業に入れることは、大きなメリット。

そこでPremiere Pro CS5を使ってみることにしました。Premiere Pro CS5は、動画データ全てをメモリー上に展開します。もちろん64ビットでなければその恩恵にあずかれませんが、当時の Intel Core2 Duoの MacBook Pro 17inchでも充分に動作しました。メモリーを32GB搭載した場合、ほとんどエンドレスで最後までムービーをドライブできます。そのため、撮影直後から、MacBookで編集作業に取りかかれることが最大のメリットです。

ただしPremiere Pro CS5は「ProRes422」にデータを書き出すことができません。

そこで私のとった方法は、作業を直ぐに実行できる Adobe Premiere Pro CS5で粗編集して必要な部分だけを集め、Final Cut Studio 用の XMLデータを書き出します。そのXMLデータをFinal Cut Studioで読み込み、必要部分だけを「ProRes 422」に変換。10分程度の長さであれば1時間以内に終わってしまいます。その後、改めてFinal Cut Studioで編集をするという手順です。

しかし時間の節約はできるものの、二種類の異なるアプリケーションを移動することは負担でした。そのためAdobe Premiere Pro CS5を覚えるにつれ「比較的完成度の高さを要求されない使用説明書やイベント記録」などはAdobe Premiere Pro CS5でフィニッシュまで持って行き、必要な形式(たいがいはH.264かFLV、あるいは.WMV)に書き出して納品というスタイルになりました。トランジションの美しさやフォントの綺麗さはFinal Cut Studioに及ばないものの、扱いやすさでPremiere Pro CS5の勝ちだったのです。

では「鹿野のお勧めはAdobe Premiere Pro CS5なのか?」というと、実は状況が変わってきました。Final Cutの新バージョン、Final Cut Pro Xが登場したからです。フル64ビットに対応、そのまま編集できるファイル形式も増えました。そのおかげでAdobe Premiere Pro CS5と同じように撮影直後から編集できるようになったのです。メモリーを8GBしか搭載していないノートブックでも普通に編集できてしまいます。

インターフェイスも大きく変わりました。私の印象としては「直感的になった」。難しい手順は踏まず、つなぎたいシーンを持ってきてつなげるという感じ。初めて動画を編集する人でも使いやすいと思います。

これまでFinal Cut Studioを使いこなしてきた編集のプロにとっては、「用語が異なる」「セレクトやin点、out点の設定方法、タイムラインの扱い方がこれまでと全く違う」などの理由で、受けがあまりよくないようですが、一から覚える人にとっては、「全て新しく覚えること」に変わりはなく、以前の知識が邪魔をすることもありません。

「作業開始までの早さは業界最速」「値段も最安値」「トランディションやフォントの美しさはFinal Cut Studio譲り」「ProRes422に書き出せるので、必要ならば後工程をプロダクションに任せることも可能」という大きなメリットと「覚えなければいけない行程」が非常に少ない Final Cut Pro Xはスチールカメラマンが新規に導入する編集ソフトとして、大きなアドバンテージがあると言ってよいでしょう。

img_products_dslr_nofear02_03.jpg img_products_dslr_nofear02_04.jpg Final Cut Xは理想的なソフトに生まれ変わった
64ビットフル対応になったため、Premiere Proと同じようにメモりをある程度搭載すれば、ノートパソコンでも作業可能。
エンコードはバックグラウンドで行なわれ、こちらが何か作業を始めるとストップし、作業を止めると直ぐにエンコードを開始する。そのためバックグラウンドでエンコードが動いていることを気にせず、作業ができる。
インターフェイスも、Final Cut Studioのような分離したパネルではなく、一体構造になった。
カラー調整をFinal Cut Pro X内部で処理できるのも魅力。フォトグラファーにとっては、使い慣れたヒストグラム表示を見ながらコントロールできるので、初めて使う人でも直ぐに作業に入れるはず。

鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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