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第13回 Xicato社の屋内照明用LEDを撮影に使いたい

解説:鹿野宏

連載第6回で、定常光撮影の照明光源について「現状は、バランスから言ってタングステン光が一番」「LED光源はまだまだ使えない」と書きましたが、最近、アメリカXicato社製のLED照明器に「アーティスト」と呼ばれるLEDライトモジュールがあることを知り、興味を持ちました。このライトモジュールは「撮影用の照明光源」ではなく、「美術館、生鮮、色再現を重視するファッションブランド等の照明用途で開発された屋内照明用光源」として販売されています。

Xicato社のLEDライトモジュール
img_products_dslr_nofear13_01.jpg 天井埋め込用のパーツとして作られているためこのような形状。黄色い部分が発光部フィルター。口径は22.2mm。この中にLEDが配置されている。周囲の羽は放熱版。本体と比較しかなり大きいが、これで色の安定性を実現している。

通常、LEDライトは青色発光ダイオードにイエローの蛍光体をかぶせて「白い光」とするのですが、蛍光体がダイオードに密着していることで熱を持ち、その特性がそれぞれ変化してしまいます。また、光源としてブルーとイエローのピークしか持たないため(分光カーブを参照)、肌色や肉の色がくすみシアンを再現できない、ホワイトバランスを取るだけでは色再現性を保証できないといった問題を引き起こします。

光の波形(分光カーブ)を比較してみる
img_products_dslr_nofear13_02.gif Xicato社LED「アーティスト」
img_products_dslr_nofear13_03.gif 通常のLED
img_products_dslr_nofear13_04.gif 太陽光(曇天)
通常のLEDはブルーとイエローのみにピークを持ち、赤やシアン系の情報がほとんどないため、赤やシアンがくすんでしまう。Xicato社LED「アーティスト」は、ブルーのピークは残るものの、全体にバランスの良い波形を描いている。実写でも赤やシアンのくすみはほとんど発生しない。

さらに青色発光体の個体差、ばらつきも直に影響し、マルチ・シャドーや色調の角度依存性と呼ばれる光の「ムラ」が発生します。さらにさらに「LEDは寿命が長い」と言われていますが、この構造ですと経年劣化が激しく、確かに長時間点灯できるものの、現実的には撮影用として色の均一性が取れないのが現状です。

これらが私が「動画、静止画の用途にLEDでは役に立たない」としている理由でした。

しかしXicato社のLEDモジュールは、青色発光体とイエローフィルターの間にわずかな空気の層を作ることで、青色蛍光体のばらつき、熱の問題、マルチ・シャドーや色調の角度依存性、そして経年劣化の問題も一気に解決しています。この技術は「改良型コールド・フォスファー・テクノロジー」と呼ばれ、同社の特許となっています。

img_products_dslr_nofear13_05.jpg 「改良型コールド・フォスファー・テクノロジー」の構造。LEDとフィルターの間に空間を作ることにより、経年変化を防ぎ、バランスのよいスペクトルを実現している。同時に光を適度に拡散照射するため、撮影にも理想的な「ムラ」のない光を作る。

特に同社の「アーティスト」シリーズは蛍光体にシアン、オレンジを持ち上げる工夫をして、やや光量が落ちますが、分光特性をさらに良くしています。LEDの利点の一つであるフリッカーフリーは、もちろんそのままです。

現時点では色温度が2700、3000、3500、4000ケルビンというラインナップを持っていますが、残念なことに一番必要な5200ケルビンが存在しません。今後の開発に期待したいところです(4000ケルビンタイプでも、タングステンランプとの併用、あるいは外光をシャットアウトできる環境であれば何の問題もなく、太陽光と同時に使用しても、やや色温度が低く感じられる程度です)。

またLEDとフィルターの間に空間を設けたことで、光質がタングステンランプでは不可能なほど均一で、周辺も柔らかいグラデーションを持っています。ストロボでもここまでは綺麗にはいかないでしょう。

通常、光源にある程度の「ムラ」や「ばらつき」があってもバウンスやディフューズをすることでその欠点を補うことが可能ですが、光源自体の配光特性が滑らかであれば、そのまま直光でも使用でき、ライティングの可能性も広がります。そういった意味で、私にとっては「やっとまともなLED光源に出合えた」というより「理想としている光源に出合えた」という感触を持っています。

と、ここまでは良いことだらけですが…LED光源は光を発する方向にはほとんど熱を出しませんが、背面にはかなりの熱を排出します。2000ルーメンを得ようと思うと100Wほどの電力を必要とし、このほとんどは熱となって後方に排出されます。この熱をそのまま放置すると10分ほどで発光体そのものを破壊してしまい、逃がし方が足りないと本体の劣化に繋がります。そのため、この熱を上手に逃がしてやる必要があり、Xicato社製のLEDはこの放熱板が大きく重いのです。放熱板にはいくつかの種類が用意されていますが、私は流体のオイルを使用した放熱フィンを選択しました。(2000ルーメン用で約250グラム)。
砲弾型と呼ばれる一般に流通しているLEDは、確かに発熱が低く、エネルギー効率が良いのだが、その多くが疑似白色、且つ10W以下のものであり最初に解説した諸問題を抱えている。

明るさに関しては、現在の技術では蛍光灯とやっと同等というレベルのようです。今回テストした光源は「アーティスト」シリーズの1300ルーメン(元々は2000ルーメンだが、分光特性を整えるために700ルーメンほどロスをしている)で、200Wのハロゲンランプと同等の明るさでした。2000ルーメン(元々が3000ルーメン)のモデルが来年には発売されるということで、個人的には大きな期待を寄せています。

そして先に書いたようにXicato社製のLEDモジュールは、現在のところ屋内照明用。日本の照明器具メーカーが、このLEDモジュールを組み込んだ「動画でも静止画でも使用できる素敵な撮影専用定常光照明器具」を開発してくれると良いのですが(取りあえず筆者としては「自作」で対応しようと思います)。

Xicato社サイト:www.xicato.com

img_products_dslr_nofear13_06.jpg

雲台につけて、撮影でも使えるようにしてみた

ストロボ用雲台にセットして60°のリフレクターをはめると、撮影でも「そこそこ使える」形になった。

下が照射状態。リフレクターなしでも、ある程度、指向性があり、見事なグラデーションを持った光源とわかる。小さな「ムラ」は背景紙の波打ち。

img_products_dslr_nofear13_07.jpg リフレクターなし
img_products_dslr_nofear13_08.jpg 60°レフレクター付き

鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾運営委員としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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