一眼ムービーなんて怖くない!

第18回 LUMIX GH3は、想像以上に「撮れる」カメラ

解説:鹿野宏

前回紹介したLUMIX FZ200のおかげで、パナソニックのカメラが気になりだし、さっそく最上位機種、レンズ交換式・ミラーレスデジタル一眼「LUMIX GH3」をメーカーから借りて使ってみました。

img_products_dslr_nofear18_01.jpg パナソニックのミラーレス一眼「LUMIX GH3」。マイクロフォーサーズ(4/3インチ)のセンサーを搭載、カメラ有効画素数1605万画素。
W132.9×H93.4×D82.0mm、550g(バッテリー、メモリーカード含む)。

GH3は「マイクロフォーサーズ」イメージセンサーを搭載。「マイクロフォーサーズ」という規格は「センサーがものすごく小さい」というイメージもあるのですが、実はAPS-Cより一回り小さいだけで、「極端に小さい」わけではないんですね。FZ200をはじめ普及型コンパクトデジカメの1/2.3インチイメージセンサーと比較すると、6倍近いサイズを持っています。ということは、センサーピッチにも余裕があり、FZ200最大の弱点だった「高感度特性」を克服してくれるカメラだと思ったからです。

テストをしてまず驚いたのは色の再現性。今回、GH3に期待していたのは「動画性能」だったため、色再現性に関してはあまり気にしていなかったのですが、素晴らしく「写真らしい色再現」をすることにびっくりしました。

パナソニックの製品はどうしても「色彩がビデオ的」と決めつけていたところもあって、これは私の認識不足でした。非常に扱いやすくバランスの良い発色で、色相も充分に分離しています。グラデーションも豊かで、感度200時のダイナミックレンジは最大で9EV近くあり、ニコンD3よりも広いダイナミックレンジを持っているようです。

GH3の小さなボディはロケに最適
img_products_dslr_nofear18_02.jpg ボディもレンズも通常の35mm一眼レフよりコンパクトで、「12-35mmF2.8」「35-100F2.8」という F2.8固定のズームレンズ2本、固定F値の超広角ズーム「7-14mmF4.0」、標準レンズ「25mmF1.4」、使いやすい10倍ズーム「14-140mmF3.5-5.6」、いつも使用しているカメラバッグにこれだけの交換レンズ群とボディを入れてなお、小型の三脚を入れるスペースが空いていた。

さらに感動したのは、システムとしてのトータルサイズの小ささです。ボディも結構小さいのですが、レンズが驚くほど小さい。これだけコンパクトなら「ロケ用のデジタルカメラはGH3にしてしまいたい」、そんな気になってきました(もちろんマシン直結での撮影はできないので、物撮りには不向きです…)。

液晶ビューファインダー(EVF)もそこそこきれいで、フォーザーズという規格を、ミラーレス一眼レフとして作り直したのは正解だったと言えるでしょう。筆者がいつも言っていることですが、「ミラーボックスとペンタプリズムが不要になるほどEVFが進化した時が、デジタルカメラの完成型」。GH3はこれを実用的なレベルで具現化しています。

期待していた高感度性能は、ISO800までは問題を探せませんでした。色相やエッジの分離がやや低めですがISO1600も問題ないと言えます。ISO3200になると撮影ターゲットによっては評価が変わりそうです。筆者の取材/ロケ用途では「充分に使える」と判断しました。

ISO6400は当然、色相分離や高周波成分の記録が難しくなりますが、「非常に暗いところでこれだけ写ればOK」と判断でき、高感度性能に関してはニコンD7000と同等かそれ以上の感触でした。 

さて、本題の動画機能ですが、これが凄い! 記録ビットレートが明記してあるのは、もともと業務用途のデジタルムービーカメラを作っている会社ならではでしょう。MOVを選択するとなんと最高で72Mbps。これは他のデジタルカメラと比較して、かなり高いビットレートです(通常は50Mbps程度。唯一キヤノンEOS 5D MarkIIIが90Mbpsというビットレートを持っています)。このデータはかなりの編集をしてもびくともしない「腰の強いデータ」でした。この1点だけでもGH3の評価は高くなります。

フォーマットもすぐにブルーレイなどに記録できるAVCHD、AVCHD Progressive(1080/60p時のみ28Mbps)、ビットレートは低いけれどお手軽なMPEG4(30pのみ1080/720/VGA)、編集向け、高画質なALL-Intraも選択できるMOVと至れり尽くせり。

残念なのは、50p/25pという関東圏ではフリッカーに強く、動きも滑らかで使いやすいモードがないこと。そしてHDでいいから120p、あるいは180pというスローモーションが搭載されていないことが惜しまれます。

「EXテレコン」は画質的にも有利
img_products_dslr_nofear18_03.jpg 撮影サイズに合わせて、有効画素数約1600万画素のセンサーの中央エリアだけを使う「EXテレコン」。
フルHDでも1600万画素の必要がない動画では、1600万画素から間引きして作られる通常の動画より(左)、「EXテレコン」の方(右)がジャギーの発生率を抑えられるようだ。

さらに「EXテレコン」というニコンのクロップモードと同様のモードが搭載され、イメージセンサーの使用範囲を狭めることで、画質を保ったまま望遠の倍率を上げた撮影が可能です。「EXテレコン」モードではフルHDの場合は2.4倍、HDであれば3.6倍という望遠になります。焦点距離が100mmのレンズであれば、35mm換算でなんと720mm相当、これはかなり使えそうです(ただし「EXテレコン」モード時にEVF表示が「にじむ」感じがして、ちょっと惜しい)。

専用レンズ群の中には電動ズームを搭載しているものもあり、しかもズームスピードを調整できます。これもかなりありがたい機能。これまで避けてきたズームイン、アウト撮影も上手くできそうです。電動ズーム付き12mm〜120mm程度の高倍率ズームレンズが欲しいですね!

その他、タイムコードが記録可能、利便性を上げています。小さなことですが、動画撮影時にすべてのモードをマニュアルでセットできること。動画撮影中も自動追尾オートフォーカスができ、撮影中にピントのターゲットも変更可能。40%のスローモーション、コマ落としのクイックモーション、インターバル撮影機能(残念ながら自動的にタイムラプス映像を生成できるわけではない)、AVCHDとMOVのモードでは長時間録画も可能(そのためにイメージセンサー、本体内部の放熱構造を見直しているようです)……などなど、形は一眼レフですが、中身はまさしく本格的な動画専用カメラと言ってもかまわない仕上がりです。

もちろんスチルカメラとしても、悪条件のスナップ(高感度かつF2.8固定のズームレンズの存在、防塵・防滴設計)、シャッター音が気になる会場での撮影(ISO1600までですが、電子シャッターで撮影できるため、ほとんど無音になる)、超望遠が必要なシーン、複数の場所を移動しながら撮影しなくてはならないロケなどでも使っていけそう。

ニコン、キヤノン系の一眼レフユーザーからすると、「新たなメーカーのボディを購入する際に、レンズ群も追加投資しなければならない」という問題はあるものの、筆者の予想よりも高いポテンシャルを持つカメラだと感じました。

AVCHD Progressive:本来インターレースだった AVCHD 規格のプログレッシブ版。

ALL-Intra:通常は前後のコマの差分を利用してデータを圧縮しているが、この場合は1コマずつ圧縮する。そのためデータ容量は増加するが、画像品質は高くなる。ただしGH3のそれは8Bit でプロ機の10Bit よりもかなり低い。

鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾塾長としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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