一眼ムービーなんて怖くない!

第19回 ミニマル動画のワークフロー「打ち合わせ、機材選択編」

解説:鹿野宏

筆者が請け負う動画関連の仕事の多くは、これまでテキストと写真で見せていた「インタビュー記事」を動画に置き換えたものや、カタログや取り扱い説明書の「新製品の特徴紹介」「製品のメンテナンス、あるいは使用説明」の動画化で、時間は1分から長くて5分。予算も少なく、撮影だけでなく、撮影後の編集や、撮影前のクライアントとの打ち合わせまで、ほぼ1人でこなさなくてはなりません。つまり「ミニマル動画」です。今回から数回に分けて、そのミニマル動画のワークフローを、筆者の具体的な仕事を例に追ってみたいと思います。

今回はクライアントとの打ち合わせ〜機材選択編です。

事前の打ち合わせでは、予想される限りの情報(リクエスト)を、クライアントから聞き出しておく必要があります。当然、クライアントは動画の専門家ではないので、「何が必要」で「何が不要」なのか、「何ができて」「何が不可能なのか」はわかりません。その話から判断して、こちらのアイデアを提案したり、用意する機材を決めていきます。

技術的な部分で筆者がポイントとしていることを挙げると、まず長時間録画かどうか。セミナー収録など「長時間録画」が必要な場合、一眼レフタイプのデジタルカメラではなく、いわゆる「ムービー」カメラが必要になります。一部のデジタルカメラを除いて長時間の連続撮影に対応できる機種はほとんどないし、バッテリーが持ちません。

また「ズーミングパンニングピント移動が要求される撮影」「クレーンレール移動が要求される撮影」かどうかも重要です。ズーミングやパンニングは、編集の際、オーバーラップである程度対応できるし、ピントをぼかしていくことも簡単ですが、逆にアウトフォーカスからピントを合わせるのは難しい(被写体が静止していれば逆再生で対応したりします)。また、前方から歩いてくる人に対してピントを合わせ続けるような撮影は、フォーカスマンの技術が必要になってきます。クレーン、レール移動になると、ミニマル動画ではもう手に負えません。そのためだけにスタッフも機材も借りてこなくてはなりません。

タイムラプス撮影を要求されることもあります。デジタル一眼レフの得意なジャンルですが、撮影拘束時間は考慮しなくてはなりません(1分間の動画で一日拘束される場合もあります)。

スローモーション」や「速い動体を滑らかに再現する」ことを要求された場合は、高いフレームレートで撮影する必要があります。データ量も大きくなり、編集、書き出しに時間がかかることが想定されます。単に技術的に「可能かどうか」だけではなく、撮影/作業にかかる時間を考慮した、それなりの「見積もり」が必要だと思います。

撮影場所は、屋外か室内か、光源は何を使用するのか。屋外は自然光なので、高い感度を持つ最近のカメラであれば大きな問題はないでしょう。屋内では蛍光灯や水銀灯などのフリッカーが発生しやすい光源の場合があり、事前のテストが必須になります。カメラも関東圏の場合は、25/50fpsで撮影可能な機種を用意するようにします。

暗い会場で照明をコントロールできない場合は、高感度特性がよいカメラと明るいレンズを選択しなくてはなりません。照明を入れる場合、持ち込むライトやカメラの台数などで、撮影に必要な人数も決まってきます。

BGMを使う場合、著作権料金なども事前に調査しておきます。

ミニマル動画は、基本的に「低予算」「少ないスタッフ」で「そこそこのものを」作り上げることが目的。定められた予算の中で「可能なこと、不可能なこと」を事前に見極め、クライアントに伝えるのが大事なのです。ただし、何でもかんでも「できない」「不可能です」「予算が足りません」では仕事になりません。対応できるネタを努力と工夫で探しておく必要があります。

前述のパン、ズーミングのように編集でカバーできる部分は編集でカバーしたり、便利な機材やカメラの最新機能は絶えずチェックしたりしておきます。

この3台でエクササイズの動きを追う
img_products_dslr_nofear19_01.jpg 「ピラティス・メソッド」というエクササイズの紹介動画。通常のシーンはニコンD7100(写真左)、ズーミングにはパナソニックLUMIX GH3+電動ズームレンズ(写真中央)、スローモーションシーンにはLUMIX FZ 200(写真右)の120fpsモードで対応する(予定)。

筆者が撮影を予定している動画の例を挙げてみましょう。「ピラティス・メソッド」(エクササイズの一種)を紹介するDVDの制作です。クライアントからの要望は、全編で1時間ほどのムービー(長時間録画ではない)。体の動きがわかりやすいように、ズームインとスローモーションは必要。全編公園でロケ。納品形態はDVDです。

そこでメインカメラとしてニコンD7100を選択。720p/30fpsというDVDに最適なモードを備えていることが選択の理由ですが、高いビットレートも選択可能、歴代のニコン機の中では最高の動画性能を持っています。

そして「120fpsというレートでスローモーションを撮影する」ためだけに、コンシューマー機ですがパナソニックのレンズ一体型LUMIX FZ200をチョイス。さらにズームインをスムーズに行なうために、パナソニックLUMIX GH3とレンズGX VARIO PZ 14-42mmの組み合わせを用意しました。GH3は前回のテストの後、すっかり気に入って購入。GX VARIO PZ 14-42mmは、ズームスピードを3段階に変更可能な電動ズームを備えています。

現場ではいくつかのパターンを撮影して1本のビデオに仕上げることになります。今回、光源は太陽光なので人工光源は用意せずに、レフ板で対応する予定です。

固定の三脚としてはBENROのカーボンプロビデオ3段三脚キットC2573FS4。その他にカメラを動かしながら撮影も想定されるため、フルードビデオ一脚を持っていくことにしました。

固定撮影用の三脚と、カメラを自由に動かせる一脚
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固定用三脚BENROのカーボンプロ ビデオ3段三脚キット「C2573FS4」(写真左)。水平レベラーを搭載。カメラ位置を微調整できるエレベーターも優れもの。静止画のフォトグラファー出身者には、コンパクトでありがたい三脚だ。筆者はヘッドをマンフロット製のものと交換して、動画の撮影だけではなく普段の写真撮影にも多用している。フルードビデオ一脚(写真右)は、小さな三脚が一脚の先に付いたものだが、三脚部分を足で踏んで固定し、かなり自由な動きをカメラにつけることが可能。移動することを考えなければ、個人的にはステディカムを使用するよりも気に入っている。

オーディオについては、BGMは入るのですが、ナレーションを現場で収録するのか、アフレコにするのか、打ち合わせ段階では未定。現場でナレーションを収録する場合、周辺の音がすべてノイズとなって記録されます。そのため集音タイプのマイク、ピンマイク、ICレコーダーを準備しておき、実際に現場で収録してみての判断となります。可能であれば編集後に解説をアフレコした方が、手間はかかりますが、綺麗な音声で仕上げることが可能でしょう。

その他、エクササイズにはどのような動きがあるのか、一回のシークエンスの長さはどれくらいになるのか、プログラム(チャプター)はいくつに分かれているのか、スタートと終了、メニュー画面はどんな感じにするのか、静止画のカットは必要か、背景と被写体との関係はどうするのか等々、機材のことだけではなく、打ち合わせておくべきことは数多くあります。

この原稿執筆時点では、まだ撮影は行なっていませんが、次回では撮影編を報告できると思います。

鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾運営委員としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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