一眼ムービーなんて怖くない!

第31回 「QBiC MS-1」と専用リグで360°パノラマ動画に挑戦

解説:鹿野宏

エルモ社は、1921年の創業。創業時から映像系のメーカーとして発展し、8ミリ/16ミリカメラ、映写機などを作っていました。そう言えば30年ほど前に、私も同社のカメラやスプライサーを使っていました。現在はCCDカメラ、AVコントロール、書画カメラなどを主力に生産しています。CCDカメラはコンシューマ向けというより監視カメラなどの業務用途が多かったのですが、ここに来てちょっと面白い超小型動画カメラを作りました。それが今回紹介する「QBiC MS-1」です。

手のひらに握り込めるサイズ、93gと軽量ながら動画(フルHDで60p)と静止画を撮影できます。撮影のコントロールはスマートフォン経由。記録はマイクロSDカード。この小ささでゆがみ補正や手ブレ補正機能を装備。ワイドダイナミックレンジのモードも持っています。しかも2cmから無限遠までのパンフォーカス仕様で、F2.0の明るいレンズは、なんと185°という超広角(対角)の設定です。

と、まぁここまでは通常の製品紹介なのですが、この小ささと広角レンズ性能が、360°パノラマ動画撮影に最適なのです。その可能性を発見し、特殊な形状のリグまで独自開発してしまったのが、筆者の友人であり、パノラマ写真/動画の草分けでもある谷口とものり氏です。
(谷口さんのサイトはこちら t-photoworks.com

この谷口さんのアイデアを元にした専用リグと「QBiC MS-1」カメラ4台がセットになった「QBiC Panorama」も、2014年7月末にエルモより発売されました。谷口さんの浅草ロケをレポートしつつ、「なぜQBiC MS-1がパノラマ撮影に最適か」を紹介しましょう。

185°という「QBiC MS-1」の広い画角を活かしたパノラマリグ
img_products_dslr_nofear31_01.png エルモ「QBiC MS-1」。約6cm四方、95gと小型ながら、フルHDで60fpsの撮影が可能。対角画角は185° / 165° / 135°切り替え。本体価格は26,784円 (税込み・エルモオンラインストア価格)。 www.elmoqbic.com/
img_products_dslr_nofear31_02.jpg 本来であれば天地を撮影するために上下にプラス2台、計6台のカメラが必要だが、対角185°を活かしてやや下向きとやや上向きのカメラを交互に配置し、カメラ4台で360°をカバー。リグとカメラ4台がセットになった「QBiC Panorama」は108,000円(税込み)。
img_products_dslr_nofear31_03.jpg ポールにつけたカメラを持って歩きながら撮影。ポール下端にはカウンターウエイトをつけてバランスをとっている。すり足気味にできるだけカメラを上下させずに歩くのがコツだとか(「QBiC Panorama」には、ポールは付属しません)。

360°パノラマ動画は通常6台のカメラを使用して撮影します。それを4台でやってしまうのが「QBiC MS-1」パノラマ用リグです。4台で360°をカバーできるのは対角185°という超広角のおかげ。この超広角レンズ、実は開発時から360°パノラマを狙った物ではなく、監視カメラに採用していたレンズの流用だったとか…。そう言われてみるとリモートコントロール機能とか、2cmから無限遠までのパンフォーカスとか、F2.0という明るさだとか……確かに監視カメラの仕様に思えます。

使用したリグは、今回のロケ時点では製品化手前のプロトタイプと言うことでしたが、かなり良くできています。各カメラのノーダルポイントをできるだけ近づけなくてはならないため、4台のカメラを密集させていますが、リグにつけたままでもカードの取り出しが可能。カメラの取り付け/取り外しもスムーズです。

パノラマ撮影でカメラの数を減らすメリットは、動画の「つなぎ目」の処理の精度が格段に高くなり、その作業も簡略化されることです。静止画でさえ360°パノラマのステッチング(複数の画像を1枚の絵につなげる作業)は大変なのに、動画パノラマの場合はどれだけ苦労することか…。1台のカメラでカバーできる範囲が広ければ、それだけ作業が楽になります。

もう一つの大きなメリットはその値段。通常6台のカメラが必要なところを4台で済むため、このパノラマ撮影用セット「QBiC Panorama」も専用リグとカメラ4台のセットで108,000円!という破格値です。

浅草の街をパノラマムービーで撮影する
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人力車、花やしきのローラーコースターに乗って撮影。ローラーコースターでは筆者も初めての360°パノラマ撮影を体験。
撮影協力:浅草やしきプロモーションチーム、人力車の「えびす屋」、浅草商店連合会。モデル:あや


img_products_dslr_nofear31_06.jpg 4台のカメラで撮影した動画をパノラマ作成ソフト「AutopanoVideo」、「AutopanoGiga」でステッチ。4枚の画像を「球面」に繋いで動画に仕上げる。作業途中の絵柄はこんな感じ。

さてさて、ここから実際に撮影の様子ですが、リグにセットした4台の「QBiC MS-1」をポール先端に付け、それをやや前傾にかまえます。カメラを出す角度、自分に向ける角度などによってステッチがうまくいかない場合もあるようです。

このロケでは、女の子が浅草を散策するという設定。街歩きのシーンではモデルさんがカメラ(ポール)を持ち、人力車のシーンでは浅草の名所を走り回ってもらいました。ただ、花やしきのローラーコースターのシーンだけは、「女性にカメラを持たせるのは危険」ということで、筆者がカメラを持ってモデルの隣に座ることになりました(カメラを前に出すため、花やしきには許可を取り、事前に安全テストをしての撮影です)。いずれのシーンでも今回、谷口さんはカメラの構え方などを指導、iPhoneで撮影画像をチェックして、OK、NGの判断をしていました。筆者も360°パノラマの撮影はこれが初めて! コツをいくつか聞いてみましたが、後の「編集スタイル」によって撮影方法も変わってくるのだそうです。

今回は浅草を紹介する360°パノラマとして「花やしきのローラーコースター、浅草寺仲見世、人力車で雷門前を走りぬける」等の撮影にトライしてみましたが、360°という技術はもとより、被写体探しの方にも興味がわいてきました。被写体が面白ければ色々な展開が考えられそうです。どんな被写体を360°パノラマにしたら面白いのか…最近はそんな目で見ながら街を歩いています。

img_products_dslr_nofear31_07.jpg 完成した360°パノラマムービー。マウス操作で映像を360°グルっと回せる。 サンプルは動画はwww.hellolab.com/movie/360/

鹿野宏 Hiroshi Shikano

デジタルカメラの黎明期からほとんどの一眼レフタイプのデジタルカメラを遍歴。電塾運営委員としてデジタルフォトに関する数多くのセミナーを開催。カラーマネージメントセミナーも多い。写真撮影では2億画素の巨大な画像を扱い、2009年から動画撮影をスタート。WEB上の動画、デジタルサイネージ、社内教育用などの「ミニマル動画」を中心に活動している。

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