ColorEdgeとは

カラーマネージメント液晶モニターColorEdgeとは?

フォトグラファーやレタッチャー、印刷現場など、写真や印刷のプロの間で支持を得ているEIZOの液晶モニター「ColorEdge」シリーズ。ここでは、ColorEdgeがなぜプロの間で支持されているのかを明らかにするとともに、製品のコンセプトやラインナップなど、ColorEdgeの全体像を俯瞰してみたい。 [初出:2007年10月10日、更新履歴:2009 年3月9日/11月6日]

ColorEdgeのコンセプトと歩み

img_products_eizo_cg243w.jpg
ColorEdgeシリーズの 新定番モデル CG243W

ColorEdgeシリーズのコンセプトは、一言でいうと「カラーマネージメント液晶モニター」である。世の中の液晶モニターの多くが、色の再現性や階調特性に関して厳密な管理を行なっていないのに対して、ColorEdgeはむしろ写真や印刷の業務で安心して使用できることを目標に開発されているのだ。

その技術的な裏付けが、ColorEdgeの全モデルにおける「ハードウェア・キャリブレーション」の採用である。キャリブレーションとは、モニターの個体差や経時変化を測定して表示を整えることを意味するが、ハードウェア・キャリブレーションを採用したモニターでは、ハードウェア自体(モニター内部)に補正のための仕組みを備えている。

ColorEdgeはこのほかにもカラーマネジメント液晶モニターとして様々な特徴を持っているが、詳しくは後述するとして、まずはシリーズの歩みと全体の構成を見ていこう。

最初にColorEdgeブランドの製品が登場したのは2003年のこと。21インチの「CG21」、18インチの「CG18」の2モデルでのスタートだった。続いて2004年には「CG19」が、そして初のAdobe RGB対応液晶モニター「CG220」が追加され、グラフィック業界の話題をさらった。翌2005年にはCG21の後継モデル「CG210」が発売されている。

ColorEdgeがスタートして丸3年が経過した2006年は、ラインナップがほぼ一新される年となった。まずエントリーモデルという位置づけでCEシリーズのラインが新しく作られ、低価格のVAパネルを採用した「CE240W」「CE210W」の2機種が投入された。続いてAdobe RGB対応モニターの後継機「CG221」、sRGB対応モニターとして最高の性能を誇る「CG211」もリリース。CG221、CG211には画面全体の輝度・色度のムラを補正する「デジタルユニフォミティ補正回路」が新たに搭載されている。

2007年以降は広色域タイプを次々と市場に投入。まず2007年6月には、Adobe RGB カバー率96%のワイド液晶モニター「CG241W」の販売を開始。VAパネルの採用で価格を抑えながらも、機能的には上位機種に準じており、非常にコストパフォーマンスの高い製品として注目された。9月には29.8インチの「CG301W」が発表されたが(発売は2008年1月)、画面サイズ以外はCG241Wとほぼ同じ仕様なので、こちらも高いコストパフォーマンスが注目を集めた。

2008年3月にはColorEdgeの新エントリーモデルとして「CG222W」がデビュー。既存製品と比べて低価格化を実現しながら、Adobe RGBカバー率92%、デジタルユニフォミティ補正回路など、ColorEdgeシリーズならではの特徴もしっかりと受け継いでいる。また2009年1月には、映像入力端子にColorEdgeシリーズ初のDisplayPortを採用した「CG242W」も発売された。

現在のラインナップは最上位機種のCG221、主力機種のCG243Wを中心に6機種で構成され、大きく分類すると「広色域ライン」のCG221/CG243W/CG301W/CG222Wと、「ノーマルライン」のCG211/CG19にわかれる。


カラーマネージメント液晶モニターとしての特徴

ColorEdgeの最大の特徴がハードウェア・キャリブレーションであることは既に述べた通りであるが、この他にどのような特徴を持つのかを詳しく見ていこう。

工場にて1 台1 台ガンマ値を測定・調整
まず一般的な液晶モニターのガンマ値は、理論値に基づき一括調整してある場合が多く、液晶パネルの個体差を吸収できずに多少のばらつきを含んでいる場合がある。これに対しColorEdgeシリーズは、すべて工場で1台ごとにガンマ値の測定を行ない、正確なガンマ値に調整し出荷しているという。個体差が少ないということは、どのモニターで見ても同じように表示されるということであり、複数のモニターを導入する必要があるユーザーにとっては理想的な環境を実現できる。1台ごとに個別調整を行なったことを示す調整データシートが製品に同梱されているのも、ColorEdgeらしいこだわりである。

調整データシート
モニター内部の16bit処理で滑らかな階調表現
さらにEIZOでは、画像表示の要となる制御ICチップ(ASIC)を自社で独自に開発。モニター内部での16bit処理と12bitのルックアップテーブル(LUT)を用いることで、正確な色演算処理が可能となっている。16bit処理・12bit LUTを採用しているのはCG221以降の機種だが(世代の古いCG19は14bit処理・10bit LUT)、高度な色演算処理によってもたらされる滑らかな階調表現はもちろん、特に低階調部(シャドウ部)において、高い視認性を獲得。より細やかな階調表現で、画像を質感豊かにリアルに再現する。

独自開発のASICで滑らかな階調表現を実現
画面の輝度ムラ・色ムラを補正
内部処理の16bit化と同時に、CG221に初めて搭載された「デジタルユニフォミティ補正回路」は、画面上の輝度の不均一なエリアを周囲にあわせて調整し、また色度が不均一なエリアを画面センターに合うように調整する。これを画面全域で、すべての階調で行なうことにより、輝度ムラ・色ムラを極限まで抑えているのだ。液晶パネルのワイド化、大画面化が進めば、輝度や色のムラが目立ちやすくなるのは当然だが、その意味でもColorEdgeにおいて必須の要素となりつつある。ちなみにこの回路を搭載するのはCG221、CG211、CG241W、CG301W、CG222W、CG242W、CG243Wの6機種である。

広視野角のパネルを採用
CRTと比較した場合の液晶モニターの弱点として、視野角と色度変位の問題がよく指摘される。正面からモニターを見た場合と、斜めや上から見た場合では輝度や色度が違って見えるという問題である。カラーマネージメント液晶モニターとして開発されたColorEdgeにとって、この弱点の克服は大きな課題であり、2003年の最初のモデルから広視野角で色度変位の小さいIPSパネルを採用するという取り組みが行なわれてきた。一般的なVAパネルに比べてIPSパネルは高価なデバイスであり、それがColorEdgeの販売価格にはねかえっていたのは事実だが、品質面でのインパクトはそれを補ってあまりあるものがあった。

その後、2006年に発売されたCE240W、CE210W、そして2007年に発表されたCG241W以降のモデルではVAパネルが採用されるようになった。その背景としては、一つには価格を抑えて他社製品に対する競争力を維持する狙いもあるが、同時にVAパネル自体の品質が向して色度変位や輝度変位が小さくなった影響が大きい。また、黒のしまりの良さなどVAパネルの優れた点も多い。色度変位の問題は依然として残っているのだが、その問題もユーザーの使い方次第でカバーできる範囲に収まってきたと言えるだろう。一人で作業する場合ならVA系の機種で十分だといえる。

しかし、フォトグラファーを中心としてIPSパネルに対するニーズが高いのも事実で、2009年の最新モデルCG243Wでは、CG241W/CG242Wの価格帯を維持したまま、IPSパネルの採用を実現し、好評を博している。


ハードウェア・キャリブレーション

ここであらためてモニター・キャリブレーションについて詳しく解説しよう。一般的なモニターの場合は、i1(アイワン)やSpyderなどのキャリブレーションセンサーをモニターに取り付けて、センサーに付属するソフトを起動し、キャリブレーションを実行する。センサーとソフトがモニターの特性を測定し、その結果を基にパソコン内部で変換を行ない、ビデオカードからの出力を調整することで、モニターに表示される色を調整する。この方法を、ソフトウェア・キャリブレーションと呼んでいる。

これに対してColorEdgeでは、市販のセンサーを使用するのは同じだが、ソフトの方は専用キャリブレーションソフト「ColorNavigator」を使用する。色調整の仕組みとしては、ビデオカードからの出力ではなく、モニター内部の設定を変更して表示を調整する。この方法は、ハードウェア・キャリブレーションと呼ばれている。

ビデオカードの調整と、モニター内部の調整とでは何が違うのか。たとえばキャリブレーション前のモニターの出力がR・G・Bそれぞれ255で、キャリブレーション後がR240、G230、B255だとする。このときビデオカードそのものの出力を下げると、RとGの出力レベルはもともとの255段階よりも減ってしまうので、キャリブレーション後の画像に階調とびや色つきが発生してしまう。ハードウェア・キャリブレーションの場合は、ビデオカードの出力には手を加えないので、RGBの階調を減少させずに調整することが可能で、色つきや階調とびのほとんどない画像が実現する。

ソフトウェア・キャリブレーションの仕組み

ハードウェア・キャリブレーションの仕組み

ハードウェア・キャリブレーションのもう一つの特徴として、作業自体が非常に簡単で、短時間で終了する点も見逃せない。キャリブレーションを実行する前段階として各種の設定は必要だが、いったんキャリブレーションが始まると全自動で進行するので、作業する人のスキルなどに左右されない、精度の高い安定したキャリブレーションが可能となっている。これに対してソフトウェア・キャリブレーションの場合は、モニターの輝度やコントラストを手で調整する必要があるので、手間がかかり、精度にばらつきが出る可能性もある。一般的にキャリブレーションは月に1回程度行なうことが推奨されているが、ハードウェア・キャリブレーションならそれもあまり苦にならないだろう。

なおColorEdgeの専用キャリブレーションソフトソフトは、すべての機種で「ColorNavigator」が同梱されている。かつては一部のモニターには、機能に若干の制限がある「ColorNavigator CE」が同梱されていたが、2007年12月にバージョンアップされた「ColorNavigator 5」からは、ColorEdge全機種をサポートするようになった。その後も、機能の追加や修正等のアップデートが頻繁に行なわれており、最新バージョンはナナオのサイトからダウンロード可能となっている。


広色域タイプのラインナップ

最後にもう一度ラインナップをおさらいし、個々の機種の位置づけを明確にしておこう。まず現在主流の広色域タイプの4機種から。

img_products_eizo_wide_gamut.jpg
左からColorEdge CG221、CG243W、CG301W。CG222W。

CG221
Adobe RGBの広い色域をサポートするフラッグシップモデルで、斜めや上から見ても色の変化がほとんどないIPSパネルを採用している。16bit処理のASICとデジタルユニフォミティ回路を搭載し、Adobe RGBで作業するフォトグラファーやレタッチャーにとっては、最高のパフォーマンスを保証する。画面サイズは22.2型ワイド(1920×1200)。

CG243W
広視野角のIPSパネルを採用し、Adobe RGB カバー率98%、16bit処理のASICとデジタルユニフォミティ回路を搭載する定番モデル。そのほかにも、次世代インターフェースDisplayPort搭載、10bit入力対応、代表的なテレビ放送規格に対応したカラーモードの搭載、3D-ルックアップテーブル対応など、先進の機能を満載している。画面サイズは24.1型ワイド(1920×1200)で、A4見開きでさらにカラーパレットなどの作業ツールも表示できる。縦表示にも対応しており、ポートレート撮影やWebデザインにも便利に使える。CG221に比べて三分の一のコストで導入できるので、個人のフォトグラファー、グラフィックデザイナー、Webデザイナーから、大規模なフォトプロダクション、印刷会社まで幅広いユーザー層にマッチする。

CG301W
ColorEdge最大の29.8型ワイド(2560×1600)を実現し、Adobe RGB カバー率97%の広い色域をカバーする。縦表示にするとブランケット判(一般的な新聞のサイズ)の原稿を原寸大で表示できるので、新聞社の印刷現場や、新聞広告を手がける制作会社、大画面で作業する必要のあるレタッチャーなどに向いている。

CG222W
ColorEdgeのエントリーモデルで、Adobe RGBのカバー率は92%。最大の特長は低価格化で、アマチュアでも求めやすい価格を実現している。デジタルユニフォミティ補正回路の搭載、16bit内部演算処理による滑らかな階調表現、工場にて1台1台ガンマ値を測定・調整、ハードウェアキャリブレーション対応などの特長はこれまでと同様で、さらに遮光フードを同梱し、縦表示もサポートしている。画面サイズは22.0型ワイド(1680×1050)。


ノーマルタイプのラインナップ

続いてsRGB対応のノーマルタイプを見ていこう。


ノーマルラインの2機種。左からColorEdge CG211、CG19

CG211
sRGBモニターとしては最高の性能をほこる21.3型(1600×1200)。IPSパネルを採用し、16bit処理のASIC、デジタルユニフォミティ回路を搭載し、縦表示にも対応している。sRGBとAdobe RGBを比較すると、青や緑の彩度が高い領域で特に差が明瞭となるが、実はこの色域は自然界にはあまり存在しないのも事実。そのような観点に立てば、写真・印刷用モニターとしてはsRGBでも十分という考え方が成り立つ。事実、コストパフォーマンスを考えて、CG221よりもこちらを選択するユーザーも多い。

CG19
2004年から現在まで販売され続けている、sRGBモニターのロングセラーモデル。やや世代が古いので、画面サイズは19型(1280×1024)、ASICは14bit処理と、最新モデルと比べるとスペック的に見劣りするのは事実だが、低色度変位のIPSパネルを採用していることから根強い人気をほこる。IPSパネル採用のColorEdgeとしては最廉価モデルである。

このように一口にColorEdgeと言っても、そのラインナップは実に個性的なモデルが揃っている。それぞれの特徴を見きわめて、自分の仕事に最も適したモニターを選ぶようにしよう。