そうだったのか!デジタルフォトの色

第1回 デジタル一眼レフの背面液晶モニターは信頼できるか

解説:BOCO塚本

今回から、この連載を担当させていただくことになりましたフォトグラファーのBOCOツカモトです。デジタルフォトと色、そしてモニターにまつわるお話を、フォトグラファーの視点でご紹介させていただこうと思います。

私は主にコマーシャルフォトの撮影をしているのですが、その場で撮影画像を確認できるデジタルカメラは、現場にいるスタッフやクライアントとイメージを共有できてとても便利なものです。画像のチェック時は、数人のスタッフがモニターをのぞき込むことになるので、コンピュータとカメラをFireWireやUSBで直接接続して、大型のモニターを使います。スタジオでの撮影にはこのスタイルが良いのですが、屋外での撮影や、頻繁に移動をしなければならない撮影の時は、カメラの背面液晶モニターでチェックすることになります。撮影内容やスタイルによっては、「実は、一番良く使うモニターがカメラの背面液晶」という方も多いでしょう。

ところで、最近のデジタルカメラの背面液晶モニターは、ずいぶん良くなったと思います。3インチサイズで約92万ドットの高精細液晶を搭載している機種もあります。さらに視野角の広さは、デスクトップで使用するモニターと遜色がないように思えます。コントラストや発色も良くなり昼間の屋外でも見えないようなことはありません。


最新機種のD3(左)と2001年発売のD1X(右)では、背面液晶モニターの性能が大きく違っている

そこで、そろそろ「箪笥の肥やし」になりかけているニコンD1Xを引っ張り出して、同社の最新機種であるD3の背面液晶と比較してみました。当時はこれで十分使えると思っていたD1Xの液晶が、今となってはなんと小さく、見づらいと感じることでしょう。上の写真のように、暗いだけでなく発色も何となくおかしく感じてしまいます。少し角度を変えた時の見え方などは、とても撮影画像をちゃんと確認できるものではありません。このカメラは2001年の発売でしたから、たった6年の間にずいぶんと進歩したものです。

ところで、ここまできれいに表示できるようになったカメラの背面液晶モニターの表示は、どこまで信用できるのでしょうか? カメラの調整メニューには、モニターの明るさ調整があります。白からグレーそして黒まで数段階のステップチャートを見ながら、その場に合った明るさに調整できるものです。でもこの方法では、経験と勘に頼ることになり曖昧な基準で設定することになってしまいます。

右の写真は実際の撮影現場で、背面液晶に画像を表示させたところです。肉眼ではここまでの差になりませんが、周りの明るさと液晶の明るさに大きく差があることには変わりありません。この状態では表示画像から適性露出を判断できません。この問題を解決するために、カメラの再生メニューにはヒストグラム表示があり、厳密な露出判断はこのグラフで行うようになっているのです。また色味に関しては調整項目がなく、現場の状況に影響されないように表示するのは難しくなっています。

最新機種D3の背面液晶は視野角が広いが…


液晶の明るさ調整は経験と勘に頼らざるを得ない


背面液晶の表示では適正露出を判断できない

これらのことから、カメラの液晶モニターの表示がいくらきれいになっても、正確な表示ではないということがわかるでしょう。とはいえ、頭ではわかっていても、カメラのモニターを見てしまうと、どうしてもモニターで見た明るさや色が気になってしまいます。ヒストグラムでは適性でも、モニター表示がどうしても適性に見えない場合などは、どちらを信じるべきかとまどってしまうでしょう。そんな時はヒストグラムを表示させて確認画面を小さくして、モニター表示に振り回されないようにしましょう。


確認画面を小さくしてヒストグラムを表示した状態

撮影現場ではヒストグラムを見て適正露出を判定しよう

このように現場でカメラの背面液晶モニターを見て判断できるのは、ヒストグラムを利用した適性露出の判定、構図、そして拡大表示によるフォーカスチェックということになります。誤解のないように付け加えておきますが、決してカメラの背面液晶の性能が良くないということではなく、現場の状況が厳密な画像チェックに向いていないのです。カメラのモニターでは最小限のことしか確認できないことを念頭において、撮影時のホワイトバランスがわかるようにチャート画像を必ず入れておくことも大事です。厳密な画像チェックは、事務所なり自宅なりへ戻ってから、しっかりした環境(場所)で信頼できるモニターを使用しないと難しいのです。


信頼の置けるモニターとカメラの液晶を比較したところ。現場ではカメラの液晶で厳密な画像チェックは難しい

写真:BOCO塚本

BOCO塚本 BOCO Tsukamoto

1961年生まれ。1994年フリーランス、2004年ニューヨークSOHOにてART GALA出展、2007年個展「融和」、ほかグループ展、執筆多数。公益社団法人日本広告写真家協会(APA)理事、京都光華女子大学非常勤講師。

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