印刷の品質を支えるプリプレスの現場から

第1回 モニターの色が合わないのは当然だった

解説:小島勉

みなさんこんにちは。(株)トッパングラフィックコミュニケーションズの小島 勉です。今回ColorEdgeスペシャルサイトで、写真家・茂手木秀行さんとともに連載させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

私は製版に従事してかれこれ20年になります。その間、画像処理オペレーターの経験が一番長いのですが、私が画像処理に携わった最初の頃は今のようなパソコン(Macintosh)で処理できるような時代ではありませんでした。サイテックス(Scitex)というイスラエルのメーカーが作った「Imager Ⅲ(レスポンスシステム)」という機種を使ったのが初めてです。

サイテックス社はNASA(アメリカ航空宇宙局)で行っていたアポロ計画が解散になり、その技術者がイスラエルで立ち上げた会社です。当社では1982年か83年頃にレスポンスR360が導入されたと聞いています。システム全体で数億円という非常に高価な装置でしたが、グーテンベルク以来の革命と称され、デジタル印刷時代の幕開けとなった装置です。従来アナログで製版していた一連の作業をコンピューター上で処理できるということで、レイアウトスキャナー(またはトータルスキャナー)と言われていました。現在のDTPの原型ですね。

製版・印刷に関連した読者の方は、この「レスポンス」という名前を一度は聞いたことがあるかと思います。レイアウト機能よりも画像の色調補正や合成機能が注目されていましたので「レスポンス=画像処理」という認識が多かったようです。私が担当していた頃の機種も、今のパソコンに比べればほんとに非力で、ハードディスクも300MBがやっとという時代です。データ保存も大きな磁気テープに保存していました。しかも保存できる容量はわずかでしたので、大量のデータを保存するだけでも一苦労していた記憶があります。今では考えられませんね。

このサイテックスシステムに使われていたモニターはBARCO(バルコ)製。バルコと聞けば、キャリブレーションモニターの代名詞的なところがありますが、当時はCMS(カラーマネジメントシステム)なんていう概念はありませんでしたので表示もそれなりで当てにならないものでした。モニターに映しだされた画像のCMYK値(%)を表示するパネルがあって、その数値とカラーチャートを参考に、色を想像して調整していました。

CMYKの%から色を想像するということが当たり前でした(というかそれしかなかった)ので、いつもデスクの脇にはカラーチャートを置いて「にらめっこ」していたものです。モニター表示、カラーチャート、平台校正機はそれぞれ条件が違いますので「合ってない」のが当たり前だったんですね。微妙な%をモニター上で調整しても、印刷(校正)で正確に再現するのはかなり難しかったのです。印刷されたもので見なければわからないので、モニター表示は当てにならない(当てにしない)のが自然でした。デジタル印刷を進めていくうえで、モニターが当てにならないというのは今考えると何ともおかしな状態だったということですね。

その後のことは言うに及ばずですが、AppleのColorSync 、AdobeのPostScriptという、これまた革命的な技術が登場することによって、WYSIWYG(ウィジウィグ)を手に入れられることができるようになったわけです。

印刷にもデジタル化の波が押し寄せてから長い時間が経ちましたが、一番重要であるモニター表示に安心感があるのはとても大切なことだと思います。ColorEdgeシリーズは最終印刷をシミュレーションできる点や、メンテナンス(キャリブレーション)性が良いこともポイントです。専用キャリブレーションソフトは操作が簡便で、わずか数分で高精度のキャリブレーションが行えます。メンテナンスが良いのはプロの現場では必須です。またモニターの安定も早いので結果的にCRTよりもコストパフォーマンスはいいと思います。

私がメインで使用しているのはCG21とCG241Wですが、CG21は使い始めてかれこれ3年ほど経ちます。使用時間はご覧のとおり7347時間(執筆時)です。トータルでは1年にも満たない使用時間です。私は比較的つけっぱなし状態ですが、ColorEdgeは立ち上がりの安定が早いので、使わない時はスイッチをこまめにオフにするといいと思います。これもCRTの時代には考えられなかったことですね。なお、他のモニターとの性能比較は茂手木さんのコラムに詳しく書かれていますのでぜひそちらも見てください。


筆者が使用しているColorEdge CG21

CG21の使用時間は3年間で7347時間

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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