印刷の品質を支えるプリプレスの現場から

第2回 印刷におけるカラーマネジメントは校正の安定度が大事

解説:小島勉

なんとも不思議なタイトルをつけてしまいました。今回はモニターからDDCP(デジタル色校正)の後の「印刷」について少しお話したいと思います。

皆さんが書店で見る大半の雑誌・書籍はオフセットという方式で印刷されています。オフセット印刷は大別すると輪転と枚葉という種類に分かれます。それぞれの簡単な長所・短所は下の表を参照してください。


輪転は「巻取り輪転機」で、長く巻かれているロール紙に連続して高速で印刷することができます。枚葉は「枚葉印刷機、オフ平台印刷機」で、一枚ごとに断裁されているカット用紙に1枚ずつ印刷する印刷機です。印刷機はミクロン単位の非常に複雑な精密機械です。たとえば枚葉印刷機の4色機では部品の数も2〜3万個あると言われています。

オフセット印刷は水と油の反発を利用して印刷されるものですが、この発明により大量印刷が可能になったことはご存じのとおりだと思います。版胴につけられたインクがゴム製のブランケットに「オフ」され、紙に印刷「セット」されるということから「オフセット」と呼ばれています(下図参照)。

現在、CMSが確立され、モニターからインクジェット・DDCPまでは定量的かつ安定的な表示(印刷物=校正刷り)を手にすることができるようになりました。ではその後工程である印刷はどうなのでしょうか?

第二回の茂手木さんのコラムに印刷機のコントロールが難しいという言葉があります。CMSの基本的な考えで言えば、デバイスごとのプロファイルがあれば、同じ結果が得られるはずなんですが、実は印刷機のコントロールは非常にデリケートで難しいのです。

オフセット印刷機を制御するのが難しい理由はインキと水にあると言われますが、もうひとつ、作業場の温湿度の管理が重要です。特に今頃のような冬の季節は紙の含水率が異なり、印刷結果にとてもシビアに影響してしまいます。また印刷機のメーカー、インキ、印刷スピード、印圧など、様々な印刷条件による微妙な表現の違いはプロファイルだけではなかなか解決しない部分でもあります。

印刷機の制御を素早く確実に行い、校正刷りに色を合わせ込むのが印刷マンの腕の見せ所であり、いまでも職人技として継承されているというわけです。印刷会社は見本に合わせるということを昔からやっているので、印刷機の制御はとても得意なのですが、肝心の校正刷りが安定的にできていないと印刷側の苦労は大変なものになってしまいます。

現在はCIP3やCIP4といった標準印刷への取り組みが盛んです。印刷機(枚葉、輪転)の高性能化と相まって、Japan Colorをはじめとした基準カラー規格による数値管理で、印刷品質の向上を実現することができるようになってきています。

そのような意味では印刷会社も職人の勘と技に頼りすぎていた部分を考え直さなければ将来厳しいことになってしまうかもしれません。数値管理としてシステマチックに構築する部分と、職人的なものづくりのバランスを取っていくが大切なのではないかと思います。そこで色管理の大もととなるモニター表示がとても重要な意味をもつのです。次回はその内容についてお話させていただきたいと思います。

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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