印刷の品質を支えるプリプレスの現場から

第3回 CMSのおかげでモニターと印刷結果が一致するようになった

解説:小島勉

画像データの色と印刷結果が一致するためには、入力から出力までの各工程のデバイスが安定していなければなりません。昔はそれ自体がなかなか実現できませんでしたが、最近は様々な機器が安定して運用できるようになっています。

中でもハードウェアキャリブレーション対応モニターとDDCPは、非常に安定しているデバイスです。モニターを見ながら画像データを作り込み、その色をDDCPで確認するというワークフローが、今後のプリプレスの工程では主流になっていくと思います。といっても、モニターを確実に使いこなすには、基準にあわせた設定をしなければなりません。印刷産業用カラーモニタスペック検討委員会が推奨する基準に沿って、モニターから観察条件までしっかりと調整することがポイントです。(印刷産業用カラーモニタスペック検討委員会の報告書はこちら

さて、前回話したように「印刷機のコントロールは難しい」のは事実ですが、いつまでもそれを理由にして、モニターと印刷の色が合わないというわけにはいかないですね。印刷会社はそれに真剣に取り組み成果を出しています。それを簡単にご紹介しましょう。次の6カットの画像を見てください。この画像は凸版印刷において、平台枚葉印刷、DDCP、モニター表示を説明するのに用いているサンプル画像です。素人ながら、私がこのコラムのために撮影してみました。

kojima3_0.jpg


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お断りをしなければなりませんが、印刷物を評価する場合の照明は、ISO(国際標準化機構)によって500ルクス(±125ルクス)が妥当とされています。印刷では作業性も重視しなければならないので、ある程度の明るさを確保するためにこのような設定になっていますが、一方でモニターを見る環境光は、観察者の目と画面を結んだ線の中間が64ルクスと規定されています。環境光の基準の詳しい内容は次回のコラムでご紹介しますが、今回は印刷物とモニターを一度に見せたかったので、印刷物を見る照明環境としてはかなり暗めになっていることをご理解ください。

下側の斜めに置いてあるものが実際の印刷物で、左が平台枚葉印刷機で印刷されたもの、右がDDCP、そして上の方にあるのがColorEdgeの画面です。ColorEdgeは現在主流となりつつある広色域(Adobe RGB相応)モデルとして、CG221(右)とCG241W(左)をデュアル接続してみました。いかがでしょうか? それぞれのモニターはもとより、印刷物とも良く合っていますね。

細かく見ていけばそれぞれの画像で若干の違いはあります。経験値でいうと色差E(デルタイー)3以上はあるのではないでしょうか? ちなみにE3.3〜6.5は同じ色として扱えます。数値的にとらえた場合、これで色が合っていると言えるのかと疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、E3以下はノイズのないきれいな色パッチなどを隣接比較してみなければ、まず判別できないレベルです。

我々が扱う画像は基本的にノイズの固まりです。経験上、ここまで合っていれば実用レベルで問題ないと思います。ゆえにカラーマネジメントがしっかり出来ているとも言えます。値段もパネル自体も違う2つの機種がこれだけきっちり合っているのはColorEdgeの精度の高さを証明しています。工場出荷時に1台1台丹念に調整しているのが良く分かります。

ただしモニターを見る位置はいつも決めておいた方がいいかもしれません。私はグレーをデスクトップにしていますが、単なるグレーではなく縦横のラインを加えています。水平のラインはモニターの上端から約1/3付近、垂直のラインは左右の真ん中です。水平ラインの位置について数値的な根拠は特にないのですが、私の経験上、このくらいの位置に目線を持って行くと見やすいのでそうしています。割といい加減ですね、ごめんなさい! でも、一度試してみてください。


筆者のデスクトップ画像

写真:小島勉

小島勉 Tsutomu Kojima

株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ所属。インクジェットによるアートプリント制作(プリマグラフィ)のチーフディレクター。1987年、旧・株式会社トッパンプロセスGA部入社。サイテックス社の画像処理システムを使った商業印刷物をメインとしたレタッチに従事。1998年よりインクジェットによるアート製作(プリマグラフィ)を担当し現在に至る。イラスト、写真、CGなど、様々なジャンルのアート表現に携わっている。

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