フォトグラファーのColorEdge実践術

最終回 撮影から色校正までのワークフロー〈撮影・画像加工篇〉

解説:茂手木秀行

この連載も今回で最終回。これまで、この連載と「ColorNavigator 5徹底研究」「同 PART2」で、ColorEdgeとDDCP、そしてインクジェットプリントのカラーマッチングを紹介してきました。もう一度見直してくださいね。すると、あなたのColorEdgeは印刷に対して適切な状態になっているはずです。そこで、いよいよ撮影から画像加工まで通して、カラーマッチングのワークフローをご紹介しましょう。

まずは、第9回でご紹介した通り、すべての環境を5000Kで統一することからスタートですよ。今回はストロボ3灯のライティングで時計の撮影をしてみました。最初は色温度の測定です。ライティングと光量が決まった段階で1灯ずつ測定します。このとき厳密には5000Kにするべきですが、いたずらにこの数値にこだわる必要はありません。こだわらなければいけないのは、使用するすべての光源が同じ色温度になっていることです。具体的には±100K以内、厳密性を求める場合は±50K以内を目標にフィルター等で調整してくださいね。今回は3灯がそれぞれ5280K、5320K、5370Kでしたので、補正は行ないませんでした。


デジタル撮影こそカラーメーターは必需品。セコニック「プロデジカラー C-500」はデジタルに合わせた特性で、i1とのマッチングが良い。

Aperture 2では、取り込んだ画像を「オンスクリーンプルーフ」で表示することができる。Photoshopの「色の校正」と同じ効果だ。

そして、いよいよ撮影ですが、とりたてて特別なことはありません。ただ、クライアント立ち会いの時などは、撮影時点からColorEdgeで色を確認したいですよね。そんな時はアップルのAperture 2が便利です。このソフトは23,800円という低価格ながら、デジタルカメラとMacをケーブルで接続してMacに画像を取り込むことができるうえ、表示画像にソフトプルーフをかけて表示することができるのです。撮影して即座にCMYKでの色を確認。安心感抜群です。

撮影後はすぐに、i1のソフトウエアEye-One Shareで被写体を測色します。i1 Proは分光測色計なのでとっても正確ですが、半透明のものや金属などの反射体では正確な測定ができません。

また、物体のテクスチャーや使われている顔料/染料によっては、メタメリズムと呼ばれる現象から、測定値と実際の色が一致しないことがあります。そこで、必ず目視確認です。このときも必ず、5000K・演色指数90以上の光源で確認してくださいね。

測色だけでなく、必ず目視で確認。測色機能が使えるのは i1 Design LT以上のパッケージだ。

そして、撮影の合間にすぐに現像してしまいましょう。Aperture 2でもPhotoshopでも、ホワイトバランスを合わせて現像するだけでOKです。そして、Photoshopで画像を開き、Eye-One Shareの画面と並べます。Eye-One Shareに表示されているカラーパッチをPhotoshop上にドラッグ&ドロップすると、カラーパッチがレイヤーとして取り込まれます。画像に対してパッチが小さければ変形で拡大してくださいね。適正な露光をされた画像であれば、画像の色とパッチの色、そして被写体そのものの色がほぼ合っているはずです。


Eye-One Shareで測色したパッチを、
Photoshopで表示した画像にドラッグ&ドロップ。

あとは、じっくりさらに色を追い込めばよいのです。色の追い込みにも、さまざまなノウハウがあってここでお伝えしきれませんが、まあ、まずはやってみてください。パッチと比較してやればよいので、慣れるのも早いと思いますよ。

さあ、後は印刷予測です。まずはRGBで色を作り込むわけですが、その色が印刷で出てくれなければ話になりません。ですから、必ず「色の校正」で確認です。このときCMYKの色域に入らない部分は、色が変化して見えます。

撮影時点でソフトプルーフをかけてColorEdgeで見ていれば、ここで見えている色は必ず印刷の範囲内に収まっているということになります。撮影に立ち会っているクライアントと確認し、了承を得ておけば、色の追い込みはここで終了となります。

Photoshopの「カラー設定」は「色の校正」にも反映される。CMYKは目的のカラースペースを、「変換オプション」のマッチング方法は「相対的」を選んでおこう。

このように、ColorEdgeやi1を活用すれば、撮影現場でここまで色を追い込むことができてしまいます。便利ですよね。とはいえ、フォトグラファーたるもの、それでは飽き足りませんよね。さらに追い込む場合は、元画像を複製して表示し、オリジナルには「色の校正」をかけて、複製はRGBのままで並べます。RGBの画像を参照しながら、調整レイヤーで、オリジナルの画像をさらに調整するのですが、ここでのポイントは、無理に合わせようとしないで近似色に置き換えることです。ヒトの目は、他の色との関連でも色を認識していますから、背景の色や隣り合う色などでも色の認識が変わります。測色して正しい数値にしたからといって、必ずしも正しく色が合う訳ではない、ということもアタマの隅に置いておいてくださいね。


「色の校正」をしてCMYKで観察している画像(左)
とRGBで観察する複製(右)を並べると作業効率がよい。

さあ、これで現物/モニターでの表示/インクジェットプリントのカラーマッチングは完了です! あとはDDCPで色校正です。ここから先は、一緒に連載している相方の小島勉さんにお任せしたいと思います。作成データとColorEdgeのモニタープロファイルを、小島さんにデータ送稿して、僕は筆を置きますね。この続きは小島さんの連載第10回をお読みください。それでは皆さん、ごきげんよう。

撮影協力:フォッシルジャパン

写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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