フォートンがHP Workstationを選んだ理由

Vol.2 福井修

HP Workstation Zシリーズは、世界最高峰の速度と性能を誇るデスクトップマシン。レタッチカンパニーの「フォートン」ではすでに広告の制作業務に活用している。同社の福井修さんにHPのワークステーションの使用感を聞いた。

絵作りとディテールにこだわる福井修さんは、多くの一流クリエイターに支持されているレタッチャーだ。HP Workstationは福井さんの仕事にどのように変化をもたらしたのか、詳しい話を聞いた。

16bitの画像データでもストレスなく作業ができる

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福井修 Osamu Fukui
東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、同大学院修了後、フォートン入社。ハイレベルな感性で作品のクオリティを極めていくビジュアルづくりに定評がある。

—— HP Z400 Workstationに乗り換えて、どのくらいになりますか。

福井 まだ2〜3ヵ月です。先に乗り換えたほかのレタッチャーがみんな、すごく速くなったという話をしていたのですが、なかなかタイミングが掴めなくて、出遅れてしまいました。

—— 最初に使ってみたときの印象は?

福井 たしかに速いとは思ったのですが、さんざん周りからいろいろな話を聞かされて期待し過ぎていたせいかもしれませんが、それほど大きな驚きはなかったですね。でも、メモリを12GBから24GBに増設したら、全く違う世界でした。みんなが言っていたのは、これかと(笑)。

—— どんなところで実感しますか。

福井 まずPhotoshopでファイルを開いたり保存する時のスピードですね。HPはあまりにも速いので、ちゃんと保存されているのかなと心配になるくらいです。軽いデータは本当に一瞬で保存が終わりますから。

その他には、重たい作業がストレスなくできるようになりましたね。Photoshopでちょっとひと手間をかければ品質が違ってくるのに、時間がかかってしまうのでつい敬遠してしまう作業ってあるじゃないですか。たとえば16bitモードがいい例だと思うのですが、一度16bitに変換してからトーンカーブで調整して、その後8bitに戻すと、グラデーションが細密に表現されますよね。

レイヤーが少なければ16bitモードでも問題ないのでしょうが、私の場合はレイヤーの数が多いので、どうしても効率を優先せざるを得ない。今までは、トーンジャンプが出るかもしれないという場合だけ16bitに変換していましたが、Z400ではそういうことを気にせず、品質を優先させられるようになりました。16bitに変換して作業し、レイヤーを統合して、また8bitに戻してという、ひと手間を惜しまずに済むというのは大きいですね。

img_products_hp_fukui_02.jpg福井さんの仕事場。右側の2つのHP製モニターにはHP Z400 Workstationがつながっている。その左にはこれまで使っていたMacが見える。

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テーブルの下に置かれているZ400。搭載メモリは24GB。

—— そのほかには?

福井 はっきりとした理由はわからないんですが、ネットワークの速度が速くなりましたね。フォートンでは社内全体で使えるファイルサーバをおいていないので、私のマシンの中に共有フォルダを作って、アシスタントとファイルを共有しながら作業をしているのですが、アシスタントのマシンからファイルにアクセスするときの速度がものすごく速くなったんです。

—— みなさんHPのマシンに乗り換えているんですか。

福井 いいえ、私のチームでは私だけがHPで、アシスタントはみんなMac Proのままです。Mac同士でファイルを共有していた時よりも、明らかに速くなっています。

—— 逆の場合はどうですか。

福井 HPからMacにアクセスしても、以前と変わりません。特に速くないですね。

—— HPもMacもインターフェースはギガビット・イーサネットだと思うので、その速度が原因ではなさそうですね。もしかしたらHPのネットワークコントローラの性能かもしれません。

福井 本当はあまりやってはいけないことですが、アシスタントが自分のマシンにファイルをコピーしないで、そのままネットワーク越しにファイルを開いてしまうことがあるんです。それでも、割とすぐにファイルが開きますね。Mac同士の時は時間がかかるので、そういうことは誰もしなかったのですが、ネットワークが速くなったおかげで、そういうことも起こっています。

—— Macばかりの環境の中にWindowsマシンを1台入れて、ネットワークの接続に問題はありませんでしたか。

福井 その辺はみんな心配していたことだったのですが、ネットワークの設定をした者に聞いたら、全然問題はなかったみたいですね。最初はちょっとした設定の手間はあるみたいですが、そこさえクリアすれば、すごくいい環境だと思います。

—— これからHP Workstationを導入しようとする人にとっては、その情報は重要ですね。

慣れてしまえば、MacかWindowsかという問題は意味がない

—— モニターやプリンタの環境はどうされていますか。

福井 30インチのHP ZR30wをメインモニターに、24インチのHP ZR24wをサブモニターに使っています。モニターキャリブレーションを行なって、プリンタとのマッチングも取って、色の環境を整えています。アップルのCinema HD Displayを使っていた時は、2つのモニターで色が違うことがあったのですが、今はあまり感じないですね。HPのモニターはハードウェアキャリブレーション対応ではないので、厳密に言うと色は違うのでしょうが、普段使っている分にはまったく問題はありません。

プリントした紙メディアとのマッチングという意味では、30インチの方はもう少し輝度が抑えられる方がいいなと思います。24インチの方はモニターの設定が豊富なのですが、30インチの方は設定できる項目が少ないですね。

プリンタに関しては、まだ自分のチームにHPが1台しかないこともあって、アシスタントのMacからプリントしています。今後は出力についてもWindowsに切り替えていきたいとは思っています。

—— カラーマネジメントで何か問題はありませんか。

福井 WindowsのOSとグラフィックボードのドライバの問題だと思うのですが、マシンを起動する度にモニタープロファイルが外れてしまう現象が起きます。

—— それは初耳です。

福井 でも、自動的にモニタープロファイルを読み込んでくれるフリーのユーティリティソフトがあるので、大きな問題にはなっていません。マシンを起動するとそのソフトが自動的に立ち上がり、「OK」を押すとモニタープロファイルがたくさん表示されるのですが、メインモニターに合ったプロファイルが自動的に選ばれているんですよ。サブモニターについても、ソフトのウインドウをサブモニターまでドラッグすると、それに合ったプロファイルを選んでくれます。とても簡単です。

—— でも、このソフトがないとけっこう手間がかかりますよね。こういう情報は社内で共有されているんですか。

福井 先にHPに乗り換えた人に教えてもらったり、それからフォートンのイントラネットの中にはトラブルシューティングの資料が置いてある場所があります。その中にはカラーマネジメントだけでなく、Windows 7についての情報や、ネットワークの設定方法など、HPに移行するためのノウハウがほとんどアップされているんです。

—— それは便利ですね。

福井 Macの場合はそういう情報は共有していなくて、人によっていろんな使い方をしていたのですが、HPを導入した当初はみんなわからないことばかりだったので、逆にオープンな雰囲気になって、情報共有がスムーズにできるようになった気がします。

—— キーボードはどうされていますか。前回の村山輝代さんは、使い慣れたアップル製のキーボードを使っているというお話でしたが、福井さんも同じですか。

福井 私もアップルのキーボードを用意してもらっていたのですが、実は使っていないんです(笑)。最初は不安だらけなので、以前の環境を少しでも確保できればと思っていたのですが、実際に「よし、今日からWindowsにするぞ」と思った時に、うまく動かなかったんです。アップルのキーボードはあったけど、ユーティリティソフトをダウンロードしていなかったのかな。

img_products_hp_fukui_04.jpg福井さんはHP純正のキーボードのまま使用している。手前側はワコムのペンタブレット。

福井 でも、やると決めた以上は立ち止まってはいられないので、とにかく起動して触っているうちに「そうか、このキーが違うだけなんだ」というのが分ってきて、半日か1日ぐらいで「なんとかなりそうだな」と思ったんですね。その後すぐアップルのキーボードが使えるようになったんですが、「せっかくここまで慣れたのだから、もうちょっと我慢して頑張ろう」と。

—— 先に身体が順応してしまったんですね。

福井 そうこうしているうちにWindowsのキーボードにすっかり慣れてしまって、逆に、アシスタントのMacを触ろうとした時に「なんだこりゃ」みたいな感じになっていたんですよ(笑)。

—— 慣れというのは面白いですね。

福井 慣れてしまえば、結局、MacかWindowsかという問題は意味がないと思いますね。今までは何となく「Macの方がクリエイティブだよね」という暗黙の了解の下で、デザイナーもフォトグラファーもみんなMacを使ってきたと思うのですが、作業環境としてどちらが生産的なのか。実際には、きちんと環境を整えてあげれば、Windowsの方がよりPhotoshopのパフォーマンスを引き出せるわけです。HP Z400に乗り換えたことにはすごく満足しているので、今からまたMacに戻れって言われたら困ってしまいます。

—— 周りの人から、どうしてWindowsに乗り換えたのか質問されませんか。

福井 よくお客さんからは「福井さん、モニターもマシンもHPになって、Windowsに乗り換えたみたいだけど、どうしちゃったんですか?」と聞かれますね。でも、そんなふうに聞かれるのも今年のうちで、来年になったら「まだMacを使っているの?」と言われるようになるんじゃないでしょうか(笑)。

レイヤー構造を活かしたままディテールの作業に入ることができる

—— 実際の仕事の中でどういう時にHP Z400のメリットを感じますか。

福井 私の場合はブツ撮り系のレタッチが多いのですが、最近のブツ撮りは、細かく撮り分けた素材を組み合わせて仕上げるという手法が多いんです。昔から、たとえばクルマの撮影などでは、ベースとなる写真の他にヘッドライトやフロントガラスなどを別撮りしていましたが、今はどれがベースの写真なのか分からないくらい、たくさんの写真を組み合わせていますね。

—— そうするとレイヤーの数もすごく増えるわけですね。

福井 そうですね。フォトグラファーから明確な指示がなくても、この素材はここがシズルだろうなというのを自分で読み取って作業をしています。こっちの部分もいいけど、そっちとあっちを掛け合わせてみたらどうだろうとあれこれ探っていると、素材のレイヤーがものすごい枚数になるんです。部分的にレタッチや色調整をしながら重ねていくと、それだけで3GBとか5GBくらいの容量になってしまう。

これまでは、本番に入る前に1回レイヤーを統合してから、マスクを切る作業に入っていましたので、そこで一度絵柄をフィックスしなければいけない。要するに、もう後戻りは出来ないという覚悟を決めなきゃいけないんです。でもHP Z400にしてからは、重たい作業でも速いし、動作が安定しているので、レイヤーを統合しなくてすむ。レイヤー構造を活かしたままディテールの作業に入っていって、後からまた再調整できるようになったので、この違いはものすごく大きな意味がありますね。

—— それは心理的にも楽になりますね。

img_products_hp_fukui_05.jpgGatorade G2 Butterfly
Agency=TBWA\CHIAT\DAY CD=Lee Clow AD=Jayanta Jenkins AP=Dogan Dattilo
Text Artist=TOMATO inc Photographer(Bottle)=Kenji Aoki Liquid Stylist=Noriko Saotome Retoucher(Bottle)=Osamu Fukui

福井 たとえばこのゲータレードの海外向けの広告ですが、右のボトルはTBWA\CHIAT\DAYという米国の広告会社がフォトグラファーの青木健二さんに依頼した写真です。向こうのクリエイティブチームがわざわざ日本にやってきて日本で撮影したのですが、私もそのとき同席させてもらいました。

このGシリーズという商品はフレーバーが8種類くらいあって、ボトルの色も違うのですが、撮影の時はまだ完成した商品がなくて、Photoshopでカラーバリエーションを作る必要がありました。ボトルやキャップの色違い、ラベルのデザイン違い、水滴の有り無しなど、とにかくバリエーションがたくさんありました。

—— 苦労したのはどのへんですか。

福井 そうですね、まだラベルのデザインがはっきり決まっていなかったので、ラベルは苦労しましたね。Illustratorのデータを変形させて貼り付ける案もあったのですが、本当のラベルは印刷物なので網点が入っている方が自然に見えるじゃないですか。そういったことまで考慮して、いろいろなシミュレーションを行ないました。最終的には写真的な見え方を優先して、Illustratorデータは部分的にしか使わなかったんですけどね。

—— 水滴の作業も大変そうですね。

福井 リキッドスタイリストという、いわゆるシズル職人の方がいて、撮影時にかなりいい状態まで作ってくれていたのですが、どうしても、水滴がかかってはいけない文字の部分にもかかってしまうんです。後からその部分を調整するために、水滴がある状態と水滴がない状態を両方撮影してPhotoshopで作り込んでいくので、レイヤーがどんどん増えていきました。

こういったバリエーションを作る作業の他に、大きな屋外広告になるという話もありました。天地が30,000ピクセルくらい必要なので、ボトルは分割撮影しています。これだけ大きなものは作ったことがなかったのですが、Z400のおかげでスムーズに作業ができました。途中でレイヤーを統合しなくてもよかったので、作業の効率も良かったですね。

本番と同じ重たい作業を立ち会いで行なっても安心

—— これだけ重たいデータで作業をしていると、フリーズしたりはしませんか。

福井 いいえ、オペレーション自体はものすごく安定しています。われわれの仕事には立ち会いと言って、アートディレクターと相談しながらレタッチの方向性を決める工程があるのですが、そこでも全く心配はありません。

今まではフリーズしないように、立ち会いで重たい処理のリクエストが入った時には、「後で時間を取ってやります」と言って、その場ではやらないようにしていました。また変形のリクエストがあった場合などは、「このタイミングで、メモリが一杯いっぱいの状態で変形の作業に入ると危ないな」と考えて、スタンプツールなどでザクザクっと形を変えてシミュレーションだけを簡単に見せるようにしていました。でもZ400では、どんなに重たい作業をやってもフリーズの心配がありません。

—— それは安心感がありますね。

福井 立ち会いにはパフォーマンス的な側面があって、リクエストがあったらテンポよくそれに応じていかないとリズムが崩れてしまうんです。細部のクオリティは二の次にして、その場で見栄えがいいものを素早く作って見せなくてはいけない。でもZ400は立ち会いから本番と同じ作業ができるので、処理にかかる時間をちょっとだけ我慢してもらえれば、その場でクオリティの高い状態で見せることができます。今まで、あくまでもシミュレーションに過ぎなかったものが、本番のクオリティを維持しながら作業できるというのは大きな違いだと思います。

—— 後からやり直す必要がなくなるので、生産効率が上がりますね。

福井 立ち会いでやったことを後から再現しようとすると、どんなことをやったのかを全部憶えてないといけないんです。それもけっこう大変で、集中力が削がれてしまいます。

—— でもZ400だったら、その必要もない。

福井 立ち会いの時だけでなく本番の作業中でも、そろそろメモリが一杯になって重たくなってきたなとか、一回保存をしておかないと危ないなとか、あれこれ心配事は多いんです。でもマシンに安定感があると余計な心配をしなくていいので、クリエイティブの作業だけに100%集中できます。自分の脳味噌をすべてクリエイティブに集中できるので、それが一番のメリットだと思います。


撮影:坂上俊彦


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日本HP ワークステーション 製品ページ

HP Workstations

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HP Z400 Workstation
HP Workstationシリーズの中では比較的低価格なモデル。4コアのインテルXeonプロセッサーを1基搭載し、カスタマイズで6コアのプロセッサーを選ぶこともできる。福井さんが使用しているZ400は、CPUが4コアの2.66GHz、メモリが24GB、OSはWindows 7 Professional 64bit版という構成だ。詳細
HP Z210 SFF/CT Workstation
2011年4月に発表された省スペース型ワークステーション。Sandy Bridgeアーキテクチャを採用したインテルXeonプロセッサー E3ファミリーを搭載し、2コアと4コアが選べる。フォートンで短期間使用してもらったが、「レタッチャーのセカンドマシンとして使用するのに十分なスピード」という評価を得た。詳細

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