Intuos4 テストレポート

レタッチャー西山慧の Intuos4 試用レポート

解説:西山慧

ついに登場した新世代のプロ用ペンタブレットIntuos4。従来モデルと比べてどこが変わったのか、フォートンのレタッチャー西山慧さんがプロフェッショナルの視点からIntuos4の操作感と性能をレポートする。

驚くほどタッチが軽くなり、繊細な線を自由に描くことができる

「軽い」——驚きのストローク

ワコムからおよそ4年半ぶりにIntuosの進化形、Intuos4が発売された。期待に満ちて最初のワンストローク。「軽い」。 ―― 第一印象。

ペンがタブレットに触れて描画機能がオンになる最小荷重が軽くなり、ペンの重さだけで描けるようになったという説明を受けてはいたが、正直言うとここまで違うとは思っていなかった。軽くペンを手に持ってタブレットに置くだけで線がひける。力が要らない。なんだか、自由になった気分。どこまでも線を描き続けたくなる。

フォートンではIntuos4試用機を使い始めたレタッチャーたちがいつまで経っても席を立たず、とりあい状態。それもそのはず、これまでは描画機能オンに10gの荷重が必要だったが、今回はその10分の1、最小1gあればいいという。軽さだけではない。筆圧レベルが従来の1024から2048へと2倍にアップしているからだろう、繊細な線の強弱を描き表すのに何のストレスもない。思いのままだ。

試しに髪の毛を描いてみた。まつげや眉毛を描くときなど、特にブラシ設定でシェイプにチェックを入れていると、これまでは線の終わりのところで急激に太さが変化してしまうことがあり、継続して安定した線を描くのが難しかった。結果は一目瞭然、ストロークの最後の「抜け」のところのふらつきがみごとに解消されている。

Intuos4とIntuos3の書き味の違い
左がIntuos4、右がIntuos3で描いた髪の毛。Intuos3の赤い線で囲った部分は、線が微妙にふらついているが、Intuos4ではそれが解消されている。
最小1gのON荷重を実現
描画機能がオンになる荷重が、第2世代チップセンサーの開発により従来の約10グラムから最小1グラムへと大幅に軽減。無駄な力を必要とせず指先の繊細なタッチをそのまま表現することが可能になった。
2048レベルの筆圧機能
新開発のペン用ICがデュアルスロープ方式による筆圧カウントを可能にしたため従来の約2倍の情報処理量を実現。またペンIC消費電力の大幅な低減等により高精度で安定した2048レベルの筆圧認識ができるようになった。


ズーム比率やブラシサイズがワンタッチで変えられるタッチホイールが画期的


今回新たに加わった新機能にタッチホイールがあるが、これは活用度大の優れものだった。私は、①オートスクロール/ズーム ②ブラシサイズ ③ブラシのボケ足 ④カンバスの回転 に設定して使用した(ポインタの速度を遅めに設定して使用)。

これにファンクションキーの割り当てで option + command + Z (Undo)と、X(描画色・背景色入替)を設定して使用すると、キーボードショートカットのうち、ブラシ関係の機能がほとんどタブレット側で代用できる。スタンプツールのソースポイント切替も修飾キーのoptionを活用すればOK。

タッチホイールの設定
タッチホイールにはソフトウェアの機能を4つまで登録することができる。真ん中の切り換えボタンを押すと、機能が順番に切り替わり、同時にランプの点灯する位置も切り替わる。ホイールに沿って指を動かすと、ブラシのサイズやカンバスの回転角度が変わっていく。
ファンクションキーの設定
ファンクションキーは8つあり、ShiftキーやCommandキーなどの修飾キーや、ソフトウェアのキーボードショートカットなどを割り当てることができる。登録した内容はファンクションディスプレイに表示されるので、どのボタンが何の機能なのかがすぐ分かるようになっている。なおemサイズのみディスプレイ非搭載で、ファンクションキーの数は6つとなっている。

特にブラシのサイズやボケ足を無段階でワンタッチ調整できるタッチホイールは、作業の効率化に威力を発揮した。スタジオ内に常時カチャカチャと響き渡っていたブラシサイズ・ボケ足変更のための苛立たしいキー音がなくなって精神的にもとてもいい感じ。

カンバスの回転も、Photoshop CS4とタッチホイールの組み合わせで、回転という意識を持つことすらなく、最も線を描きやすい角度に調整して使うことができ、画期的だった。
フォートンではIntuos3のファンクションキーやトラックパッドを全て無効にして使っているが、長時間の作業になりがちなブラシ関係の機能をIntuos4のキーやホイール設定でカバーすることでかなりの効率化が期待できると思う。

カスタマイズ設定した内容を他で使用するときにコピーして持っていけるようになれば、複数台のコンピュータを使用するときにもさらに便利になるのではないだろうか。ラジアルメニューの設定も合わせると設定の内容はかなり多くなってしまうからだ

ラジアルメニューの設定
ファンクションキーに「ラジアルメニュー」を設定しておくと、そのボタンを押した時、画面上に円形のポップアップメニュー(ラジアルメニュー)を表示、ショートカットと同様の使い方ができ。このメニューは階層を4つまで持っている。


長時間ペンを握っていても手首と腕への負担が少なくなった


より便利になった標準付属品

グリップペンとペンスタンド。このほかに太径ラバーグリップ(サイドスイッチ用穴無し)とカラーペンリング(白/赤/グレー)が付属している。

ペンスタンドに内蔵された替芯と交換用芯抜き。求めるタッチに応じた描き味をいつでも気軽に手に入れることができる。

太径ラバーグリップを装着した状態。太いペン軸を好む人には最適だ。

ペンの付属品も充実している。替え芯がペンスタンドの中にセットされているので、気が向けばいつでも交換できる気軽さがいい。個人的にはエラストマー芯の柔らかい描き味が気に入っているが、繊細な細い線を描くときにはやはり標準芯の方が描きやすいから、今後は仕事の種類に応じて使い分けていくことになるかもしれない。

また、秀逸なのが付属のラバーグリップ。最初は見た目のゴツさにちょっと戸惑ったが、使ってみると、これがかなりいい。手首の負担が軽減されるよう計算され尽くしたデザインだということがよくわかる。

今回の試用で1日びっちりとIntuos4を使い続けてみて、はたと気づく。――疲労感が違う。
20年前の一台一億円の画像処理専用機に装備されていたヒモつきペンタブレット(感圧式ですらなかった)で何年もの間作業せざるを得なかった私は腕と手首に問題を抱えている。だからこそ、この進化はうれしい。毎日毎日長時間ペンを握りつづける我々レタッチャーにとって、この違いは大きいと思う。

Intuos4の登場まで長い間待たされたが、4年半の開発の成果があらゆる面にわたって遺憾なく発揮された画期的な新製品だといえる。

Intuos4 ラインアップ

※Windowsの場合、2048レベル筆圧機能は対応ソフトでのみ有効。Mac OS Xの場合、ソフトは自動的に2048レベル筆圧機能に対応する。

西山慧 Kei Nishiyama

フォートンの創業当初からデジタルイメージングの歴史をきり拓いてきた日本のレタッチャーの草分け的存在。北海道大学法学部卒。http://www.foton.jp/

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