ペンタブレット 入門講座

北岡弘至「ペンタブレット入門講座」第2回

デジタルレタッチャー北岡弘至さんが語る「ペンタブレット入門講座」第2回は、北岡さん自身の作品づくりを例に、ペンタブレットを使うメリットについて具体的に紹介していく。

ペンタブレットを使ってきれいなマスクを仕上げよう


Photo:坂上俊彦

ペンタブレットはグラデーションのあるマスクを作る時に便利

こんにちは北岡弘至です。連載第1回から2ヵ月も空いてしまいました(汗)。今回と次回の2回に分けて、実際の画像合成の過程をお見せしながら、実践的なペンタブレットの話をしたいと思います。最近では一般の写真愛好家の方でも、Photoshopを使って画像処理を行なう方が増えてきましたが、そのときにペンタブレットを使うとこんなに便利だというお話です。

最初に素材となる2つの写真をお見せします。今回はフォトグラファーの福島典昭さんが撮影した京都の平安神宮を背景として、そこにキジの写真を合成して、純和風でありながらちょっと不思議なヴィジュアルを作っていきたいと思います。

キジは日本の国鳥であるとともに、古事記の中では天照大神の遣いとして登場するなど古くから高貴な鳥として知られており、神社の荘厳なイメージにぴったりではないかと思います。完成予想図は私の頭の中にあるのですが、ディテールを作り込んでいる最中ですので、どんなイメージが出来上がるのかはもう少しお待ちください(汗)。

それでは順を追って、解説していきたいと思います。


① 全体の背景となる神社の廊下です。一見すると普通の写真のように見えるでしょうが、実はこの段階ですでに合成を行なっています。神社の廊下というのはあまり陽の光があたらないような構造になっているため、普通に撮るだけでは奥のほうが暗く落ちてしまいます。そこで長い廊下の奥から順にライトを当てて何枚も写真を撮り、それを合成して自然に見えるように整えているわけです。

画面右のレイヤーの枚数を数えてみてください。私たちデジタルレタッチャーは、背景一つとっても、このように入念な下準備を行なっているのです。


② 何枚も合成したうちの1枚を詳しく見てみましょう。1枚ごとにこのようなレイヤーマスクを作成して、ライトがきちんと当たって明るく出ているところを選んでいきます。画像を重ねた時に、境界部分の明るさに段差があると不自然になってしまいますので、そうならないように、レイヤーマスクの境界(黒と白の境い目)は少しずつ濃度が変化するグラデーションになっています。

このようなレイヤーマスク等を作成する場合、ペンタブレットの筆圧機能が効果を発揮します。Photoshopの「ブラシツール」で筆圧機能が使えますので、筆圧の強弱によって、濃淡を微妙に加減しながらのブラシワークが可能です。

神社の赤い色を大胆に変更して、非日常的な空気感を演出する

③ 神社というと誰でも朱塗りの柱を思い浮かべると思いますが、神社の非日常的な空間を強調するために、あえてそれ以外の色を基調にしたいと考えました。今回撮影していただいた福島さんと打ち合わせをした時に、「日本の古来からある色として藍や紺など青系統の色はどうか」という提案がありましたので、赤い柱を青系統に色変換しました。

上の画面は青に変換するためのマスクです。Photoshopの「選択範囲>色域指定」で柱の赤い部分を選択し、ブラシで細部を塗ってマスクを仕上げています。


④ 作成したマスクを利用し、「イメージ>色調補正>特定色域の選択」、「イメージ>色調補正>色相・彩度」で青系に変換し、全体をトーンカーブ、チャンネルミキサーを使って調整をします。柱の色を赤から青系統にすることで、ちょっと不思議な感じの空間に生まれ変わったと思いませんか。


⑤ 床面の塗装が奥側と手前側で違っていたので、奥側の、反射のある塗装を手前に伸ばすことにしました。手前の壁を上下反転して、床に映り込むようにして合成し、トーンカーブでハイライトを調整して奥の塗装に合わせます。


⑥「自由変形」を利用して、柱がすべて垂直になるよう、全体のパースを調整します。

ペンタブレットを使うことで切り抜き用のパスを素早く正確に仕上げる


⑦ 完成した背景に、このキジを合成しようと思います。まず「ペンツール」でキジの輪郭に沿ってパスを作成して、切り抜き用のマスクのベースを作成します。こんな細かいパスの作成もペンタブレットを使用すると、素早く正確に仕上げることができます。

マウスでパスを作成する場合、ポイントを打つ位置を決めてカチッとクリックし、少し動かしてまたクリックして…を繰り返すわけですが、ペンタブレットの場合は紙に線を描いている感覚ですらすらとパスを作成できるので、精度も時間も格段に向上します。少しくらいはみ出したり、食い込んだりしても、アンカーポイントを後から修正することができるので、あまり神経質になりすぎず、滑らかにペンを動かすのがコツです。


⑧ パスパレットから「選択範囲を作成」し、「クイックマスク」モードにします。この状態で指先ツール、ブラシ等を使い分けてマスクを仕上げます。この時も、ペンタブレットを使っていると筆圧感知機能で実際のペンや指でなぞる感覚で操作できるので、とても便利です。上の画像はこうして出来上がったマスクです。

なお元画像の輪郭と切り抜き用パスの位置関係についてですが、一般的なDTPの解説書には「画像の輪郭より少し内側にパスを作成する」と書かれていますが、それはPhotoshopの画像をクリッピングパスでIllustrator等に貼りこむ場合のやり方です。Photoshopでレイヤーを重ねていく場合の切り抜き用のマスクでは、輪郭ギリギリでパスを作ります。画像を重ねた時のエッジの処理は、画像の解像度によってマスクのボケ足を変えたり、余計な部分を後からブラシで削ったりすることで調整します。


⑨ 切り抜きの完成です。次の工程では背景にこの画像を重ねるわけですが、この時、さらに周囲との境界に注意してレイヤーマスクで調整します。

これ以降の作業については、次回詳しく解説していきます。このキジが背景の神社とどのように合成されるのかは、乞うご期待。それではまたお会いしましょう。

北岡弘至 Hiroshi Kiataoka

デザイン事務所で印刷、製版を学んだ後、デジタルワークの個人事務所ガラバートを立ち上げ、有限会社GARABATOを設立。http://www.garabato.jp/

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