めざせ!3DCGフォトグラファー

第12回 印刷会社が3DCG写真を作る現場を取材! サンメッセ株式会社の事例

インタビュー:長尾健作

こんにちは、パーチの長尾です。

広告写真が3DCGで制作されている現状をお伝えする現場リポートも、6回目になりました。

3DCGで作る写真は「3DCG写真」と呼ばれていますが、その制作は、撮影スタジオや3DCG制作会社などで多く行われています。そして、印刷会社さんの取り組みも盛んです。

パーチでは3DCGの導入支援をさせていただいているんですが、印刷会社さんからは「撮影サービスに加えて、3DCGも提供したい」とか、「スタジオは持てないが、PCの中で撮影(3DCG写真)ができるなら取り組みたい」などのご相談をよくいただいていて、撮影サービスと印刷業が深く関わっていることを実感しています。

img_soft_3dcgmezase_12_01.jpg
井戸義智 3DCGフォトグラファー

そこで今回は現場取材として、3DCG制作サービスをされている大手印刷会社サンメッセさん(本社:岐阜県大垣市)にお話を伺ってきました。撮影サービスと並行して、3DCGの静止画や動画、更にはARまで制作されている同社で、印刷会社が3DCGに取り組むメリットから、導入して変わったことやお客様の反応まで、詳しくお話しいただきました。

3DCGに取り組む印刷会社の仕事とは?

img_soft_3dcgmezase_12_02.jpg 自社 TVCM内 ビジュアル。CMは、ナレーション以外、全て同社で制作。CGと一眼動画撮影を井戸氏が担当。
http://www.youtube.com/watch?v=ssFUSTLQuxE

パーチ サンメッセさんは東京や大阪にも支店がある中部でも有数の印刷会社さんで、井戸さんはそこで3DCGフォトグラファーとして活躍されていますが、御社が扱っているのは印刷だけではないんですね?

井戸 当社は印刷会社のような、そうでないような会社で、メーカー様や公共団体などのカタログ、ポスターなどの印刷はもちろん、特殊印刷、印刷物に必要なデザイン、撮影など、印刷に関わることは何でもやらせていただいています。それから、HPや電子ブックのコンテンツ、動画制作やイベント業務などもさせていただいています。

パーチ 作りたいものがあったら、一貫して頼めるという体制なんですね。印刷の部署以外に、制作に関する体制を整えているんですか?

井戸 はい。企画からデザインまでご提供できるよう、制作に関わる部署があり、ディレクターからデザイナー、フォトグラファー、レタッチャー、動画編集スタッフ、それから私たち3DCGチームまで、制作に必要な人材が揃っています。

パーチ なんだか印刷会社さんというより、制作会社みたいですね。なぜ、そこまでクリエイティブ部門を強化されているんですか。

井戸 もちろん本業は印刷ですが、お客様は印刷物に使う各種コンテンツも必要とされていますので、それも合わせてご提供できるよう、取り組んでいるんです。それから制作サービスをきっかけに、印刷を受注できることも大きなメリットです。

パーチ 印刷業を軸にビジネスを拡大されて、さらに本業の印刷を受注されるという、理想的な流れができているんですね。

井戸 当社に撮影部門があるのも、そして3DCGに取り組んだ理由の一つは、大量印刷ができるカタログ制作の受注を増やして、印刷業を拡大したいからです。3DCGを導入することで撮影対応力を強化して、継続的にお仕事をいただきたいと考えています。

パーチ 3DCG制作ではCAD(製品設計データ)を扱いますので、一度制作をお願いしたら次回以降も同じところに頼みたいというのが、発注側の自然な考え方だと思います。撮影や3DCGの段階で御社に発注されれば、大量印刷もそのまま受注できるので、印刷会社さんが制作業を重視されるのも分かりますね。

フォトグラファーが3DCG制作を始めた理由。

img_soft_3dcgmezase_12_03.jpg 丸栄コンクリート工業株式会社、立命館大学理工学部が共同開発した製品(コンクリート製の椅子)のイメージビジュアルを3DCGで制作。

パーチ 井戸さんは、3DCG制作をされる前は、どんな仕事をされていたんですか。

井戸 私はフォトグラファーで、主に人物や建築などのロケものと、自動車のアフターパーツなどを撮影していました。この「アフターパーツ」というのは、自動車にカスタマイズで付ける部品のことなんですが、新商品が出るサイクルが年々速くなって、撮影時に商品が届かなくなっていました。

パーチ 撮影に商品が間に合わないというのは、多くの企業さんが抱えている悩みですよね。それで、商品の代わりにモックアップ(模型)を撮影されていたんでしょうか。

井戸 初めのうちはそうでしたが、そのうちモックアップも来なくなったんです。それでメーカー様からお預かりした図面を参考に、Photoshopで描くようになりました。

パーチ 撮影というより、イラストレーターの仕事ですね。自動車関連のビジュアル制作は特にシビアですから、大変だったんじゃないですか?

井戸 そうですね。いろいろ工夫して制作しましたが、写真ソフトで自動車の質感、たとえばメタリックなどを作るのには限界を感じました。それに、決めのアングルで作り込んだあとに「向きを変えて」という指示をいただくと、初めからやり直さなくてはいけなくて……これ、3DCGなら速いんじゃないか? と漠然と思っていました。

パーチ 3DCGなら質感も作りやすいですし、アングルも自由に動かせますからね。

井戸 そんな頃、偶然コマフォト主催の「デジタルフォト&デザインセミナー」(2008年)でパーチさんの3DCGセミナーを受講して、商品写真を3DCGにしている事例、3DCG写真が増えているという実情を聞いたんです。

パーチ あのセミナーでは、事例紹介のほか、製造メーカーが3DCGを活用する理由などもお話ししたと思います。

井戸 はい。これだ! と思いましたね。それからちょうど上司も3DCG関連の記事を読んで必要性を感じていたので、導入が決まりました。そのままパーチさんの「3DCG写真制作クリエイター育成スクール」の受講を決めて、毎週スクールに合わせて予習、復習を行い、講義では疑問点を残さないように質問をして、習得しました。

パーチ スクール、ご活用いただけたようで何よりです。スクールを卒業された後は、どのようにスキルアップされていったんですか。

井戸 お客様にCADや図面を見せていただいて、実務に近いトレーニングをしました。以前4 × 5で撮影した製品のCADをお借りして、写真と全く同じ3DCG写真を作ったり、CADがない場合はモデリングをして、営業用の3DCG写真を作っていきました。

3DCGを制作できることで、仕事の幅が広がった。
3DCGが選ばれる理由、3DCGを提案する理由とは?

img_soft_3dcgmezase_12_04.jpg 工業製品作例(ステイプラ)

パーチ 3DCG写真をご覧になったお客様の反応はいかがでしたか。

井戸 お客様に初めて3DCG写真をお見せすると、たいてい「写真持ってきて、どうしたの?」と言われます。それから「実はこれ、3DCGなんです」と言うと、驚かれます。でも「写真にしか見えない」という声もお聞きしますので、わざと現実ではありえないようなアングル、たとえば商品を宙に浮かせたような構図も作ってお見せすることで、「ほんとに3DCGなんだね!」と納得いただけるようにしています。

パーチ 3DCGで写真が作れるということや、実写では撮影が難しいものも自在に作れるということを、一発で理解いただけるんですね。

井戸 それから、最近は工業カタログのプレゼンなどでも「撮影ができない場合も、3DCGでカバーします」とご提案できるので、撮影商品が間に合わないときも安心してご利用いただけます。

パーチ カタログというと、ものすごい量の制作になりますよね?

井戸 工業カタログには、新商品だけでなく撮影済みの既存商品も入っていますので、すべてを新たに撮影するというわけではないんです。3DCG写真で制作する場合も同じで、カタログ一冊分をまとめて3DCGにするのではなく、徐々に置き換わっていくというケースが多いですね。

パーチ 新商品から3DCGにされていくんですね。

井戸 はい。工業カタログに限らず、公共団体や企業様の冊子などでも、3DCGの表現を取り入れられることが増えています。たとえばある土木建築関係の企業様では、これまで「現場の写真」や「2Dイラスト」を使われていたところに、最近では3DCGを活用されるようになっています。

パーチ お客様が3DCGを選ばれる理由は、どのようなところにあると思いますか。

井戸 総合的に見てご満足いただいていると思いますが、まず、2Dより更に商品特性を分かりやすく伝えられて、見た目も良いという点があると思います。

パーチ では逆に、御社から見て、3DCGを制作するメリットなどがあったら教えていただけますか。

井戸 そうですね。たとえば、あるコンペで当社のデザイナーがデザインした作品が採用された際に、その原画を運送会社様のトラックのボディに使っていただくということがありました。そのとき、オリジナルカレンダーやクリアファイルなどのノベルティー商品に使っていただけるよう、トラックの3DCG写真を制作し、ご提案させていただきました。

img_soft_3dcgmezase_12_05.jpg 『岐阜市観光ラッピングトラック』
財団法人岐阜観光コンベンション協会が施工した、濃飛倉庫運輸株式会社のトラックのイメージ写真を制作(トラック:3DCG、空や地面など:Photoshop)。原画デザインは、コンペで採用されたサンメッセのデザイナー吉村和博氏による。

パーチ 3DCG制作ができることで、印刷の受注に繋がる提案の幅が広がったんですね。

井戸 その案件では、本物の車体にプリントしたイラストを貼り込んで撮影するのではなく、3DCGでトラックを制作し、車体にイラストを合成、雰囲気のある写真に仕上げました。撮影商品がない状態でも写真を制作できるので、お客様には便利に感じていただけたようです。それと、機能があるものは動かすほうが分かりやすくなるので、案件によっては動画のご提案もしています。

パーチ 静止画だけでなく、動画も制作されているんですね。

井戸 最近はワンソース・マルチユースされたいということが多いので、制作に垣根はありません。ただ、動画でも「ここだけ3DCGにしたい」などの部分制作の受注だと割高になってしまいますから、私たちの3DCGチームだけでなく当社の動画スタッフやデザイナーと相談しながら、総合的に制作させていただくことで、品質を維持したまま納期を短縮し、価格を抑えられるようにしています。

img_soft_3dcgmezase_12_06.jpg ホクセイ株式会社 展示会用新製品紹介動画。CG制作から動画編集まで全て制作。
http://www.youtube.com/watch?v=rI26z7ADVvU

パーチ 3DCGで動画を制作したとき、お客様の反応はいかがでしたか。

井戸 ある案件では、動画をご提案したら「これや、これや! これを作りたかったんや!」と言っていただきました。機能が伝わる動きを付けたり、広い空間に商品をたくさん並べたイメージを作ったんですが、撮影ではできない表現だったので、とても喜んでいただけました。商品発表後はテレビの取材もあったということで、大成功だったようです。

パーチ お客様に喜んでいただけるというのは、クリエイター冥利に尽きますよね。

井戸 そうですね。私自身、「仕事は楽しくないと嫌」という気持ちがありますので、3DCGを始めたことでご提案できることが増えたり、できあがりを見て喜んだり驚いたりしていただけると、嬉しいですね。

3DCGから発展してARも制作。
お客様が欲しい物を、より使いやすい形で提供したい。

img_soft_3dcgmezase_12_07.jpg 3ds Maxで作業中の井戸氏。社内のデザイナーと相談しながら、あらゆるビジュアルを制作していく。

パーチ 「3DCGを始めたことで、新しい提案ができる」ということですが、今一番お客様が喜ばれる提案は、何ですか。

井戸 ARです。3DCGチームでもAR担当者を立てたくらい、最近はARの案件がずっと続いています。

パーチ ARで、御社ではどんなものを制作されているんですか。

井戸 ちょっと3DCG写真からは離れるんですが、 全国的に「ゆるキャラ」が流行っていることもあり、 企業様や公共団体のキャラクターのAR化の依頼を多くいただいています。普通こういう着ぐるみは、一体しか存在しないので、記念撮影のために会場まで行ったり、並んだりする必要があるんですが、スマートデバイス用のARアプリを使っていただくと、そこに着ぐるみがいなくても、お子さんとキャラクターを一緒に撮れるんです。どこでも撮れて便利ですし、ARの体験自体が楽しいようで、喜ばれています!

パーチ なるほど、そういうニーズがあるんですね。

井戸 お客様は「自分たちのキャラクターをもっと流行らせたい」「もっと身近に感じてほしい」と思われているので、ARを使って写真を撮って、シェアしていただけるのは魅力的なんだと思います。

パーチ 最新のツールも導入されながら、お客様に必要とされるサービスを提供されているんですね。では最後になりますが、今後の目標などをお話しいただけますか。

井戸 お客様に役立つ様々なサービスをご提供しながら、本業の印刷の受注を更に増やしていきたいです。特に最近は、3DCGやARを始めたことで、お客様との結びつきが更に強くなったのを実感していますので、今後も「お客様が欲しい物を一貫してご提供できる印刷会社」として発展できるよう、努めていきたいですね。

パーチ 今後のご活躍も楽しみにしています! ありがとうございました!

インタビューを終えて
〜3DCGの導入により、印刷ビジネスをより強固に〜

印刷ビジネスを強化するために、HP制作や撮影も手がけてきた印刷会社さんが3DCG制作を開始。それまでは写真や2Dイラストを使われていたお客様が、3DCGという新たなツールも選択肢に入れられながら、同社のサービスを受けていくという事例は、興味深いお話でした。印刷会社さんでは、制作が受注できれば印刷もそのまま受注、というのが自然な流れでしょうから、クリエイティブを強化されるというのは当然なのかもしれません。

また、井戸氏は「お客様が必要とされるものを一貫してご提供していきたい」ということを繰り返しおっしゃっていて、「撮影ができない場合も、3DCGでカバーできる」のが強みだともお話しされていました。3DCGを導入されたことで同社のサービスがいっそう強靱になり、印刷に結びつく仕事の受注が、より確実になっていくんですね。

img_soft_3dcgmezase_12_08.jpg 同社の「環境報告書」の表紙。従来は写真や2Dイラストで制作されていたが、最近は3DCGを使った表現が活用されている。

関連情報

「実際に3DCG写真制作を体験してみたい」という方は、パーチ(info@perch-up.jp)までご連絡ください。次回、「フォトグラファー&レタッチャーのための3DCG体験セミナー(無料)」を実施する際に、優先してご案内致します。


サンメッセ株式会社

img_soft_3dcgmezase_12_09.jpg 1935年創業。カタログ、DMなどの印刷から、特殊印刷、記念誌や出版物などのあらゆる印刷物に対応。また、印刷サービスのノウハウを活かして、HPや電子カタログなどのWebコンテンツ制作、デザイン、撮影、2D画像制作、3DCG制作まで、印刷に必要なあらゆるサービスを一貫して提供している。


http://www.sunmesse.co.jp


写真:長尾健作

長尾健作 Kensaku Nagao

広告ビジュアル制作のデジタル化/3DCG 化 (ビジュアライゼーション) を業界最大手の株式会社アマナで実現。それに必要な戦略立案、市場開発、表現技術開発、人材開発、などを手がけ現在はこのビジュアライゼーションの新しい利用シーンを拡大させる活動等を行っている。 http://www.perch-up.jp

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