Photoshop CC の新機能

Photoshop CC 2015:第2回 Adobe Mercury Graphics Engine機能のベンチマークテスト

解説:竹澤宏

Photoshop CC 2015で強化されたのは、新機能の追加だけではない。従来からの機能にも、処理速度の向上が図られているのだ。そこで、修復系ツールやコンテンツに応じた塗りつぶしといった機能で、バージョン別に処理速度の計測を行なった。

Adobe Photoshop CC(2015)では従来機能も処理速度の向上が図られたという。同じマシン環境でも最新版(2015)にアップデートするだけで速くなる!? なんてうまい話があるのだろうか? そこで、ベンチマークを取って比較してみることにした。

Mercury Graphics Engineによるパフォーマンスの向上

Adobe Mercury Graphics EngineはビデオカードプロセッサまたはGPUのアクセラレーションを使用する画像処理エンジンで、Photoshop CS6から搭載された。Photoshop CS4からGPU機能はあったが、Mercury Graphics Engineとして搭載されたのはCS6からということになる。

GPU機能を最大限に生かすためのソフトウェアも含めた画像処理エンジンなので、ソフトウェア部分の見直しだけでも効率が上がる、ということだろう。

実は、毎回のアップデートごとにパフォーマンスの向上が謳われていて、2015版に先立つ2014.2バージョンでも強化されている。

ここ最近の強化の流れを振り返ってみる。

CC2015
(最新版)
修復ブラシ、スポット修復ブラシ、パッチツールの高速化
CC2014.2 焦点領域、コンテンツに応じた機能の高速化
CC2014 アップサンプリング(拡大リサイズのこと)の高速化と、ぼかしギャラリーのモーション効果、焦点領域でのサポート
CC アップサンプリング、ぼかしギャラリー、スマートシャープ、ゆがみツール、パペットワープなど主要編集ツールのレスポンス向上

アップデートごとに何かしらの強化があるのだが、実感として分かりにくいところもあるので、いくつかの項目でベンチマークをとり、過去バージョンと比較してみてはどうだろう、と思い立った。

修復関連ツールの速度向上

まず最初に試してみたいのは、今回の最新版で速くなったと言われている修復関連ツール。実際、どのくらい速くなっているのだろうか?

本来、同じ処理をするためにはアクション機能を使いたいところだが、修復ブラシ、スポット修復ブラシなどは手書きになるのでアクション機能は使えない。とはいえ、ほぼ同じ作業をするうえでの違いは分かるのではないだろうか?

使用機は今回も HP(ヒューレット・パッカード) ZBook 14 Mobile Workstationである。

Before
img_soft_cc_features_201502_01.jpg After
img_soft_cc_features_201502_02.jpg

スポット修復ブラシツールでゾウを消してみる。ある程度大きな面積を消す作業のほうが、処理時間の差が出ると思ったので、この絵柄を選んだ。4572×3048ピクセル、展開時のファイルサイズは39.9MBである。

img_soft_cc_features_201502_03.jpg

ゾウのシェイプをなるべく忠実にトレースしたいので、ブラシのサイズを150ピクセルに設定した。ブラシサイズを大きくすれば一筆で簡単に選択できるものの、誤差や仕上がり結果の違いも大きくなると思ったので、このようにした。

img_soft_cc_features_201502_04.jpg

スポット修復ブラシで完全に塗りつぶして、ドラッグしている指を離した瞬間から計測を開始。

img_soft_cc_features_201502_05.jpg

処理結果が描画された瞬間までの時間を計測した。3回実行し、その平均値を出した。

その結果!

CC2015年最新版(2015.0.0) 2秒34
CC2014アップデート版(2014.2.2) 14秒23
CC2014年初期版(2014.0.0) 14秒86
CC(Ver.14.0) 20秒51
CS6(Ver.13.1.2) 23秒38

圧倒的に最新版のほうが速い。全く同じマシン環境なのに、使うソフトのバージョンが違うだけでここまで変わるのだろうかと驚いた。

ちなみに最新版以外は、処理途中で進行状況を示すメーターが現われる。

img_soft_cc_features_201502_06.jpg

2015年版では、メーターが現れることなく処理が終わってしまう。また、手書きのブラシなので、処理結果の内容に微妙な違いは出てくるものの、優劣の差はないようだ。

今回のメジャーアップデートに先立つマイナーアップデートのCC2014.2の時点でも、Mercury Graphics Engineによるパフォーマンスの向上は言われていたのだが、こと「修復ツール」に関しては、最新版が圧倒的な違いを見せつける結果となった。

また、仕上がり結果やスピードとは全く関係ない所だが、オプション項目の位置関係が変わっていることに気がついた。

img_soft_cc_features_201502_07.jpg CC 2014

img_soft_cc_features_201502_08.jpg CC 2015

これまでは「種類」→近似色に合わせる、テクスチャを作成、コンテンツに応じる、の順番だったが、2015版ではコンテンツに応じる、テクスチャを作成、近似色に合わせる、の順になった。ほとんどの場合、「コンテンツに応じる」が使われるので一番先頭に持ってきたということだろう。

結論を書くまでもないことだが…全く同じマシン環境化でも最新版(2015)にアップデートするだけで速くなる!?なんていう、うまい話は本当だった!

コンテンツに応じた機能で比較する

コンテンツに応じた機能は、アップデートごとに何らかの強化、改善が見られる機能である。今回も「コンテンツに応じた移動」にオプションの追加があったが、これは後日紹介することとして、今やりたいのはスピードにどの程度の違いがあるか、正確に比較してみたいということ。

先ほどのスポット修復ツールは、手書きだったのでアクション機能が使えなかったが、選択してからの「コンテンツに応じた塗りつぶし」を使えば、全く同じ処理をアクション機能を使って正確に比較できる。

絵柄は先ほどと同じ画像を使った。

Before
img_soft_cc_features_201502_01.jpg After
img_soft_cc_features_201502_09.jpg
img_soft_cc_features_201502_10.jpg

投げなわツールを使ってゾウを選択。この選択範囲はアクションに記録されるので、別のバージョンにも同じアクションを読み込んで実行できる。

選択範囲を決める→コンテンツに応じた塗りつぶしを実行→選択範囲の解除、という流れのアクションを作成した。あとは再生ボタンを押すたびに、全く同じ処理をしてくれる。

その結果…

CC2015年最新版(2015.0.0) 2秒44
CC2014アップデート版(2014.2.2) 2秒96
CC2014年初期版(2014.0.0) 3秒15
CC(Ver.14.0) 8秒70
CS6(Ver.13.1.2) 11秒64

最新版がもっとも速いのは予想通りだし、バージョンが新しいほど速くなるのも予想通りだったが、「修復ツール」ほどバージョンによる差がなかったのが意外だった。見方を変えれば、こちらのほうが通常の進化で、「修復ツール」の劇的な進化がすごすぎる、ということも言えるのではないだろうか。

従来だと、消す面積の大きい場合は「選択」→「コンテンツに応じた塗りつぶし」、面積の小さいゴミ取りなどは「スポット修復ツール」というすみ分けが自然とあったが、実は処理スピードという背景があったということもベンチマーク結果から読み取れる。しかし、最新版ならどちらのツールを使っても処理時間にさほど違いがなく、スピーディーにこなせるということがわかった。

同じ絵柄で同じ結果を求める作業を、異なる2つのツールで試したので、バージョンの違いによる処理速度の向上をグラフ化してみた。

スポット修復ツール/コンテンツに応じた塗りつぶし バージョン別処理速度

img_soft_cc_features_201502_11.png

このように可視化してみるとわかりやすいし、なるほどね、と面白かった。アップデートごとにスピードは向上しているが、特に最新版では修復関連ツールに力を入れたことがよくわかる。

焦点領域による選択

もう一つ試してみたかった処理が、「焦点領域」による選択である。ピントの合っているところだけ(もしくはそれ以外)を選択するという、フォトグラファーにとって便利な機能なのだが、処理時間のかかる作業でもある。2014.2のマイナーアップデート時点で高速化がアナウンスされていたのだが、この機会に実証してみたい。

Before
img_soft_cc_features_201502_12.jpg After
img_soft_cc_features_201502_13.jpg3861×2574ピクセル、28.4MBのデータを使用

焦点領域(パラメータ3.0自動、出力レイヤーマスク、エッジをぼかし)→境界線を調整(半形5.1pixel、ぼかし2.2pixel)というアクションを作成。再生ボタンを押してから描画完了までの時間を計測した。

CC2015年版(2015.0.0) 5秒87
CC2014アップデート版(2014.2.2) 5秒91
CC2014年初期版(2014.0.0) 13秒03

わざわざ2014.2をアンインストールして2014初期バージョンをインストールし直したり、手間がかかったが収穫はあった。 「焦点領域」はCC2014から搭載された新機能だが、CC2014.2のマイナーアップデート時点で、すでに大幅に処理速度の向上があったということが分かった。2014.2と2015.0の差はほとんどなかった。

CCのアップデートは新機能じゃない部分にも注目!

Photoshop CCになってからの特徴として、細かいマイナーアップデートでも機能強化があるということだったが、こうしてベンチマークを取ってみると、新機能以外にも注目すべき速度向上があるということがわかる。

特に今回の最新版(CC2015)では、「修復関連ツール」の速度向上には目を見張るものがあった。今回はこのツール、次回はあのツール、といった感じでピンポイントで攻めてくるのだろうか? 恐るべしAdobe Mercury Graphics Engineの開発者よ。

検証に使用したマシン

HP ZBook 14 Mobile Workstation


img_soft_cc_features_201502_14.png

主なスペック
Windows7 Professional(64bit)
インテル(R) Core i7-4600U  2.1GHz - 2.7GHz
メモリ 8GB
ストレージ 500GB HDD
グラフィック AMD FirePro M4100 OpenGL4.2
VRAM 1GB
ディスプレイ 14インチワイド(1920×1080)

竹澤宏 Hiroshi Takezawa

1983年、フリーのフォトグラファーとして独立。以来30数年、いまだに業界の片隅に生息中。インテリアや物撮りを中心とした広告写真が主だが、雑誌の取材や執筆もこなせるオールラウンダータイプのフォトグラファー。
http://takezawa-lab.com/
https://www.facebook.com/TakezawaHiroshi

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