風景&ネイチャー レタッチの教科書

思いどおりの露出に仕上げる

解説・写真:桐生彩希

高速シャッターでとらえた光り輝く水飛沫。補正前は露出が明る過ぎるせいか、水飛沫の存在感が失せている。色調補正の基本ともいえる露出の補正によって、光と陰のはっきりした風景に仕上げていく。

写真の色調補正で基本ともいえる作業が露出の補正だ。露出が気持ちよく仕上がれば作品のクオリティーもアップするし、レタッチに対するモチベーションも高まる。

そこで今回は、レタッチにおける露出の補正について考えてみよう。一見すると簡単そうにも思える作業だが、明暗だけでなく黒や白の状態にコントラストも考慮しなければならないので、考えることは意外と多い。

写真の明暗がきれいに整えられないと悩んでいるなら、いちど作業手順を確認しておくとよいだろう。

露出とダイナミックレンジを整える

補正前 img_soft_nature05_01.jpg
補正後 img_soft_nature05_02.jpg
撮影データ
キヤノンEOS 6D EF28-135mm f/3.5-5.6 IS USM 絞り優先AE(f5.6 1/2000秒) 補正なし ISO1600 評価測光 WB:オート

光りを浴びで輝く水飛沫を高速シャッターで写し止める。補正前の写真は露出が明る過ぎるせいか、目で見たときの光と陰のはっきりした印象は薄れ、水飛沫の存在感が失せている。

レタッチの設計
img_soft_nature05_03.png

「補正前・後」と「レタッチの設計」拡大図はこちらをクリック ※別ウィンドウで表示


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黒と白を適切な明暗に整える

露出を補正する前に確認しておきたいのが、黒と白の状態。基本的には、黒が完全な黒、白が完全な白になるように調整すると、明暗の整った仕上がりに感じられる。

これらの補正には「レベル補正」や「トーンカーブ」が使われるが、それぞれの役目や特徴を把握しておくと微妙な調整がしやすくなるし、あとで補正を再調整する際にも的確に行なえるようになる。

基本的な流れとしては、「レベル補正」で黒と白のレベルを整えてから全体の露出をおおまかに決め、「トーンカーブ」で微妙なコントラストと露出を仕上げていくと効果的だ。

はじめに

img_soft_nature05_05.jpg 露出補正のためのレイヤーの構成

黒と白のレベルを含めて露出を補正する場合、基本的には「レベル補正」と「トーンカーブ」を組み合わせていく。

レイヤーの構成としては、①が黒/白と全体の露出を整える「レベル補正」で、②がコントラストと露出の仕上げに使った「トーンカーブ」になっている。

ちなみに、「トーンカーブ」だけでも仕上げることはできるが、黒と白のレベルを調整するとカーブが急角度になるため、コントラストや露出の微調整がしづらくなるなどのデメリットが生じることもある。

①黒/白のレベルを整える

img_soft_nature05_06.png 「ヒストグラム」パネルで明暗の状態を確認。ヒストグラムから、作例は黒にしまりがなく、ローコントラストということが分かる
■STEP1 ヒストグラムを確認

はじめに、「ヒストグラム」パネル(「ウィンドウ」メニューの「ヒストグラム」)で補正する写真のヒストグラムを確認。「レベル補正」機能でもヒストグラムが確認できるので、そちらを使ってもOK。ヒストグラムからは様々な情報が得られるが、まずは山の両端が枠の左右端に接しているかどうかを確認する。作例の写真は、ヒストグラムから下記のような状態にあることが分かる。

左端に空きがあるときは黒が黒くない状態(右端の空きは白が白くない)

山の右端がなだらかに下がっているときは白さが際立っていない状態(左端の場合は黒が際立っていない)

山の幅が狭いときはローコントラスト

■STEP2 「レベル補正」を選択

作例写真は、STEP1で確認したヒストグラムによると、黒と白が際立っていない状態にある。そこで、「レベル補正」で黒/白レベルを整えることからはじめよう。補正作業は調整レイヤーの「レベル補正」で行なうので、「レイヤー」パネル下部の img_soft_nature01_05.jpg ボタンから「レベル補正」を選択するか、「レイヤー」メニューの「新規調整レイヤー」→「レベル補正」で機能を表示。

img_soft_nature05_07.png img_soft_nature01_05.jpg ボタンをクリックして「レベル補正」を選択
img_soft_nature01_06a.png
img_soft_nature05_08.jpg 「属性」パネルに「レベル補正」画面が表示される
■STEP3 黒のレベルを調整

まずは黒のレベルから調整する。ヒストグラムの下にある①黒い▲スライダーを右に移動して、ヒストグラムの左端に合わせる。これで、写真のもっとも暗い色が黒になり、シャドウにしまりが出てくる。このとき、黒つぶれが心配なら「Alt」(Macは「Option」)キーを押しながら▲スライダーを動かすと階調のつぶれた部分が確認できるようになる。

img_soft_nature05_09.jpg 補正前の状態 img_soft_nature01_08a.png
img_soft_nature05_10.png 黒い▲スライダーを右に移動してヒストグラムの左端に合わせる
img_soft_nature05_11.png
img_soft_nature05_12.jpg
「Alt」(Macは「Option」)キーを押しながら移動すると、階調のつぶれた色が表示される(画面は分かりやすく黒つぶれを表示した状態)
■STEP4 白のレベルを調整

白のレベルを調整するには、ヒストグラムの下にある①白い△スライダーを調整する。黒のレベルと同様に、ヒストグラムの右端に重ねると白が白く調整されるが、作例の場合にはヒストグラムがなだらかに続いているため右端が決めにくい状態。この場合、多少の白とびを出しても、ヒストグラムの山の終わり付近に合わせると自然なメリハリにすることができる。

img_soft_nature05_13.jpg 補正前の状態 img_soft_nature01_08a.png
img_soft_nature05_14.png
img_soft_nature05_15.png
白い△スライダーを左に移動してヒストグラムの終わり付近に合わせる
img_soft_nature05_16.jpg
補正後の白とび部分。ヒストグラムがなだらかに収束しているときは、多少の白とび(黒つぶれ)を許容すると、ダイナミックレンジ(コントラスト)が整えやすい
■STEP5 露出を仮調整

「レベル補正」を使い、おおまかな露出を決めておく。このときのポイントが「頑張り過ぎない」点で、「レベル補正」で仕上げようとはせず、次に行なう「トーンカーブ」補正の土台となるようにイメージする露出に近づける程度でOK。「レベル補正」で明暗を調整するには、ヒストグラムの下にあるグレーのスライダーを左右に移動すればよい(左で明るく/右で暗くなる)。

img_soft_nature05_17.jpg 補正前の状態 img_soft_nature01_08a.png
img_soft_nature05_18.png 「トーンカーブ」での仕上げ(コントラスト調整)を意識して、
この辺りの質感が失わないように明暗を補正している
img_soft_nature05_19.png
グレーのスライダーを右に移動して露出をマイナス補正

②コントラストと露出を仕上げる

■STEP1 「トーンカーブ」を選択

黒/白レベルとおおまかな露出を整えたら、次は「トーンカーブ」でイメージする露出に仕上げていく。「レベル補正」のときと同様に、「レイヤー」パネル下部のimg_soft_nature01_05.jpg ボタンから「トーンカーブ」を選択するか、「レイヤー」メニューの「新規調整レイヤー」→「トーンカーブ」で機能を表示する。「トーンカーブ」が表示されたら、線グラフの左下と右上に2つのポイントを作成しておく。

img_soft_nature05_20.png img_soft_nature01_05.jpg ボタンをクリックして「トーンカーブ」を選択
img_soft_nature01_06a.png
img_soft_nature05_21.jpg 「属性」パネルに「トーンカーブ」画面が表示される
■STEP2 シャドウを引き締める

白い水飛沫の存在感を出すには、シャドウを暗くすればよい。これにより、相対的に白い部分が浮き立つようになる。そこで、シャドウの明暗が補正できる「左下のポイント」を下げてシャドウを暗めに補正。これで、暗くコントラストの強まった仕上がりにできる。このとき、イメージする露出から大きく外れないように調整すること。

img_soft_nature05_22.jpg 補正前の状態 img_soft_nature01_08a.png
img_soft_nature05_23.png 「暗い部分が暗くなり、白い水飛沫が目立つようになる
img_soft_nature05_24.png 左下のポイントを下げてシャドウをより暗く補正
■STEP3 ハイライトのまぶしさを決める

次は、STEP2の「トーンカーブ」を使ってハイライトのまぶしさを整えていく。右上のポイントを上下に移動して、イメージするハイライトの白さ(コントラスト)に仕上げればOK。作例は、白さが際立つようにポイントを少し上げて、コントラストを強めてみた。

img_soft_nature05_25.jpg 補正前の状態 img_soft_nature01_08a.png img_soft_nature05_26.jpg

右上のポイントを上げて明るい部分をより明るく補正し、白さを際立てる
img_soft_nature05_27.jpg
■STEP4 露出を仕上げる

最後の作業は露出の微調整。これも「トーンカーブ」で行なえるが、補正量が多くなるようなら「レベル補正」に戻り、露出を整え直しておくこと(ヒストグラム下のグレーのスライダーを再調整)。「トーンカーブ」で露出を微調整するには、①線グラフの中央にポイントを作り、②上下に移動すればよい。線グラフが水平に近づく(補正量が多い)ほどコントラストが低下して不自然な画質になるので注意すること。

img_soft_nature05_28.png
img_soft_nature05_29.png 補正前の状態。線グラフの中央にポイントを作っておく
img_soft_nature01_08a.png
img_soft_nature05_30.png
img_soft_nature05_31.png 中央のポイントで露出を微調整。作例では、イメージに合わせてポイントをわずかに下げて、暗めに仕上げている

おわりに

作業的には、「レベル補正」で黒/白のレベルを整え、「トーンカーブ」でコントラストを仕上げるだけなので分かりやすいのだが、問題は「露出」をどちらで整えるかだ。

基本的には、「レベル補正」である程度イメージに近づけておき(「トーンカーブ」で補正する余裕を残しておく)、「トーンカーブ」で仕上げると補正しやすい。

個人的な感覚としては、「レベル補正」でイメージする6割程度の露出に仕上げ、残りを「トーンカーブ」で仕上げることが多いように思える。もちろん、この辺りの割合は写真により異なるので、各自研究してもらいたい。

露出に関しては「明るさ・コントラスト」機能を仕上げに使う方法もあるので、機会があれば露出補正テクニックの第2弾として紹介したいと思う。

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桐生彩希 Saiki Kiryu

レタッチャー/ライター。レタッチ系の記事や書籍を多数執筆。なかでもAdobe Photoshopに関しては、Adobe Photoshop 3.0の頃から20冊以上の書籍やムックを制作。個人的な活動としては、「売れる」「飾れる」デジタルプリントを目指し、自作の用紙で作品を制作している。

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