Adobe Photoshopには従来からバッチをはじめ様々な自動処理、自動編集機能がある。新しいバージョンが出るたびにこうした機能が追加、あるいは強化されていく。知らなくても生きてはいけるが、知ってしまうと後には戻れないといった機能もある。古いユーザーほど新しい機能に無頓着だったりもするので、私自身への自戒も込めて検証しながら紹介していきたい。
Photoshop CS4で精度が向上したPhotomerge
Photomerge(フォトマージ)はPhotoshop CSから追加された機能。複数の写真をつなぎ合わせてパノラマ写真を自動的に合成してくれる。ただ、CS、CS2の頃はまだまだ精度が低く、エラーも多かった。Web用途など高解像度を必要としないものや、ごまかしやすい絵柄の写真を2〜3枚つなぎ合わせる程度なら使えなくもなかった。それがCS3を経てCS4では格段の進化を遂げたのだ。
そもそも、Photomergeという機能は何のために使うのか?というと、主に二つの目的がある。一つは、そのままの意味で、パノラマ写真を作るため。もう一つは、写真をスティッチ(つなぎ合わせ)して、超高解像度写真を作るため、である。例えば1200万画素の写真を3枚つなぎ合わせることで約3000万画素相当の写真を作ることも可能だ。
今回は主にパノラマ写真について検証していこう。
パノラマ写真というと超横長のワイド写真を作るということだが、最も簡単なパノラマ写真を作る方法は超広角レンズを使い、上下をトリミングすることで超横長の写真にしてしまうことだ。しかし、360°となるとPhotomergeのようなパノラマ作成機能を使って、写真をつなぎ合わせていく方法になる。作例写真は横浜の夜景を撮影したものである。


360°を45°ずつ8枚の写真に分割して撮影した。使用レンズは10mm(35mm換算で約15mm)。分割撮影中に露出を変えたり、ズームしたりするのは厳禁だ。雲台はほぼ水平にし、目盛の付いたパノラマ雲台とL字のアングルを使い雲台の回転センターとカメラの光軸がずれないように縦位置で撮影した。
パノラマ撮影を縦位置で撮影するのは、なるべく天地を広く採りたいから。レンズもできるだけワイドのほうが分割枚数が少なくてすむ。

上図のように、Bridge CS4からそのままPhotoshop CS4のPhotomergeウィンドウへ持っていくことができる。

Photomerge ウィンドウで「自動設定」を選ぶ。「遠近法」は通常3〜4枚の写真をパース重視でスティッチしたい時に選択する。360°パノラマの場合には「円筒法」で処理されることが多いが、「自動設定」にしておけば自動的に判断してくれるので大丈夫。
きれいにつながらない箇所があっても、後から簡単に修正できる

こうしてできあがったのが上の画像だ。ほぼ完璧につながっているのが分かるだろう。建物のパースや観覧車の丸い状態に若干違和感があるが、これも簡単に修正することができる。Photomergeの素晴らしいところは、きれいにつながるように各画像を変形させるだけでなく、レイヤーマスクを自動生成してくれるところだ(CS3以降)。この画像も8枚のレイヤーとそれぞれのレイヤーマスクが付いた状態で生成されているので、エラーが出た箇所などを後で修正するのに便利だ。
実際、ここでも1ヵ所エラーがあったが、下のようにレイヤーマスクの一部を消し、うまく修正することができた。

ちなみに、このとき10分割で撮影した画像もあって、こちらの素材からもパノラマを作ってみたが、精度の差はあまり見られなかった。隣り合った画像の重複部分が多い方がよいということではなさそうだ。実際、10分割でも1ヵ所はエラーが出た。使うレンズの画角と最適な分割枚数は、何度か試す必要はありそうだが、この場合は8分割で充分ということだろう。計算上は7分割でもいけそうだが、そうすると分割角度が51.4°ずつとなり、ややこしい。
上下左右の余白をカットし、トーンカーブなどで明るさも調整し、360°のパノラマ写真に仕上げた。

今回の撮影はRAW+JPGモードで行ない、作業はJPGデータを使った。これは単に作業上軽くて速くすむ方法を選んだだけで、RAWから現像した16bitTIFを使って超巨大解像度データを作ることも可能だ。
パノラマ作成ソフトは、デジカメなどのバンドルソフトとして付いてくるものもあったが、アマチュア向けなので、扱える画像のファイル形式が限られていたり、長辺ピクセル数に制限があったりして、使いづらかった。Photomergeはこうした制限から解放され、プロフェッショナルな領域でパノラマ作成ができるようになったツールであるといえる。
さらに一歩進んだパノラマを作るためのTips
さて、これで一応パノラマ写真ができ上がったわけだが、もう一歩先へ進んでみよう。「ファイル」メニューの「書き出し」という項目に「Zoomify...」という項目があることをご存知だっただろうか? これはPhotoshop CS3から追加された機能だが、写真をWeb上で閲覧する時にズームインしたりスクロールしながら、高解像度の写真を見られるようにするツールである。
実際に、完成したパノラマ写真をZoomifyを使って書き出してみよう。

完成したパノラマ写真をZoomifyを使って書き出した例
さらに、ここまでくればもう一つ気になるところ、どうやったらQuickTime VR(QTVR)のように360°グリグリ回して見られるようにできるのか? ということも話しておこう。
残念ながらPhotoshop単体だけで直接QTVRに書き出すことはできない。ただし、CS4 Extended版では「3D」のメニューから「レイヤーから新規シェイプを作成」→「球パノラマ」を選択すると、球体の内側に写真をマッピングし、球体の内側から写真を見るように3D化してくれる。
これを検証するため簡単なスナップ写真を撮ってみた。35mm換算で15mmのワイドレンズを使い下方向に360°7分割、と上方向に360°7分割、計14枚の写真。3脚も使わず手持ちでかなりラフな撮影だったが、Photomergeは見事につなぎ合わせてくれた。

このときのPhotomergeの設定は「球面法」を選択する。独特の変なパースの写真になるが、ここでは真上と真下は写っていないので白余白になるが、左右は0°から360°の範囲でトリミングする。

この写真を3Dの球体の内側にマッピングすることになる。下図のように「3D」メニューで「レイヤーから新規シェイプを作成」>「球パノラマ」を選ぶだけという簡単さである。


パノラマ3D 化された画像は、上図のように、そのままPhotoshop CS4 Extended でリアルタイムでレンダリングしながら見ることができる。もし、修正箇所などがあればそのままPhotoshop のツールを使って修正する事もでき、例えば真上と真下の写真は後から合成すればよい。
従来は完全球面VRは180°の全周魚眼レンズと特殊なソフトがないと作れないというイメージがあったが、普通の超広角レンズでもPhotomergeは上手くつなぎ合わせて球面パノラマへの橋渡しをしてくれるということ。こうして作られたデータは3Dレイヤーを書き出すことで他の3Dソフトとも連携出来る、正にプロ向けの機能になっている。
ただし、グラフィックカードのGPU(=Graphics Processing Unit)が対応していないと快適には動かないし、誰もが手軽に閲覧できる状態ではない。一般の人でも手軽に閲覧できるようにするには、やはり他のソフトを使い、QTVRやFlashムービーとして書き出す必要がある。
最後にそうしたツールを紹介しておこう。AppleのWebサイトで、デベロッパー向けツールとしてしてMake Cubicというソフトが配布されている。
このサイトはApple Developer Connection(ADC)といって開発者向けのプログラムなどを配布しているので、開発者として登録しなくてはいけないが、我々フォトグラファーだって情報を発信する側の開発者なので普通にID登録すれば問題ない。そうするとQuick Time Tools一式を無料でダウンロードでき、その中にMake Cubicも入っている(Macユーザーは「Legacy Macintosh QuickTime Tools」を、Windowsユーザーは「Legacy Windows QuickTime Tools」をそれぞれダウンロードする)。
Make Cubicは天地も含めた完全球体のVRを作成できるソフトだが、今回は天地はカットして円柱状のVRを作ってみる。使い方はいくつかのパラメータを設定して書き出すだけなので、難しいものではない。使ってみればすぐに慣れるだろう。それでは、完成したQTVRを見ていただこう。
いかがだろう、一口にパノラマと言ってもなかなか奥が深いことが分かってもらえただろうか。さて次回は、Photomergeのもう一つの用途である、超高解像度写真の作り方について説明してきたいと思う。
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竹澤宏 Hiroshi Takezawa
1983年、フリーのフォトグラファーとして独立。1995年〜96年、東京グラフィック・アーツ 映像事業部長 兼 マルチメディアスクール主任講師。1997〜99年、青山CGスクール・メロン非常勤講師(写真担当)。2008年より、毎日コミュニケーションズ「Mac Fan」で「デジタル一眼 Step By Step」を連載中。http://www.takezawa-lab.com/blog/



















