Photoshop オート機能完全攻略

第2回 Photomergeで超高解像度の写真を作る

写真・解説:竹澤宏

Photomergeは複数に分割して撮影された写真を、自動的につなぎ合わせてくれる機能だ。前回はPhotomergeで360°パノラマ写真を作ってみたが、今回は複数の写真をスティッチ(つなぎ合わせ)して超高解像度の写真を作ることに主眼をおいて検証してみよう。

現在では2000万画素超のデジタルカメラも珍しくなくなっているので、よほどの拡大印刷でない限りわざわざ分割撮影してスティッチする必要などないかもしれない。しかし、プロのフォトグラファーとなると仕事によっては3000〜4000万画素級の解像度を求められる場合もあるだろうし、フォトグラファーがみんな2000万画素超のデジタルカメラを持っているとは限らない。

Photomergeを使えば、1200万画素クラスのデジタルカメラでも3〜4枚の写真をスティッチすることで3000万画素クラスのデータを作ることができる。

3枚の写真をつなぎ合わせる

縦位置3枚に分割して撮影した画像をつなぎ合わせてみる。パノラマ雲台を使ったが、わざと水平線の基準を斜めにし、傾いた写真にした。高解像度の写真を作る事が目的なので、まず、素材のRAWデータを16bitTIFFで現像する(現像にはPhotoshop CS4のCamera Rawを使った)。

img_soft_pscs4_02_01.jpgimg_soft_pscs4_02_02.jpgimg_soft_pscs4_02_03.jpg

1枚あたり2848×4256ピクセル、1200万画素相当の写真データは69.4MB(8bit換算だと34.7MB)になる。これを「自動設定」で「画像合成」のみチェックを入れて処理した。

img_soft_pscs4_02_04.jpg

でき上がったデータを見ると、遠近法で処理したようだ。

img_soft_pscs4_02_05.jpg


遠近法では真ん中の写真のパースを基準に両側の写真をつなぎ合わせて行くので両端は引っ張られ元の解像度以上に拡大リサイズされる格好になる。 それぞれの写真がどのようにつなぎ合わされているか確認してみよう。

img_soft_pscs4_02_06.jpgimg_soft_pscs4_02_07.jpgimg_soft_pscs4_02_08.jpg

img_soft_pscs4_02_09.jpg

レイヤーマスクを表示して等倍まで拡大し、つなぎ目の状態を見てみたが、実に上手くつなぎ合わせていることがわかる。下は余白部分をトリミングして切り取りでき上がった写真である。

img_soft_pscs4_02_10.jpg

解像度は8028×4172ピクセルになった。画素数として表現すると3300万画素相当ということになる。16bitTIFFでレイヤー保持の状態だと687MBものデータ量になる。これだけ大きなデータ量になると、パワーのあるマシンでないとハンドリングが大変だ。8bitに変換して、レイヤーも統合して完成した状態では98.9MBとなる。

同じ素材でもPhotomergeの設定が変わるとつなぎ方が変わってくる。今度は同じ「自動設定」でも「画像を合成」「周辺光量補正」「幾何学ゆがみの補正」全てにチェックを入れて処理してみた。

img_soft_pscs4_02_011.jpg

すると、今度は「円筒法」で処理されたようだ。

img_soft_pscs4_02_12.jpg

余白部分を切り取り完成。

img_soft_pscs4_02_13.jpg

完成したデータは7021×3899ピクセルになり、遠近法を使って処理するよりも小さくなった。これは遠近法の場合、両側を引っ張って拡大リサイズする傾向があるため、大きめのデータになるのだろう。また、円筒法で処理された場合には水平線に樽型の歪みが出てしまったが、超広角レンズ風の歪みだと思えば不自然には感じない。縦横のアスペクト比は若干、遠近法の方が横長ワイドで、円筒法のほうが自然なアスペクト比であるともいえる。
 
どちらの処理方法を選ぶかは、絵柄にもよるし、お好み次第といったところだろう。

4枚の写真をレイアウトする

横位置で撮影した写真を4枚、横2列、縦2行に配列し高解像度写真を作った。素材に使った写真はこの4枚。

img_soft_pscs4_02_16.jpgimg_soft_pscs4_02_17.jpg
img_soft_pscs4_02_14.jpgimg_soft_pscs4_02_15.jpg

Photomergeの「位置の変更」を選択する。

img_soft_pscs4_02_18.jpg

左右だけでなく上下にも写真をレイアウトする場合でも、自動的に位置関係を判断してつなぎ合わせてくれるのは凄いことだ。こうした場合「コラージュ」か「位置の変更」を選択するのだが、この場合は「位置の変更」のほうが仕上がり結果がよかった。「コラージュ」は写真の回転や拡大•縮小も含めて合成する場合に有効だ。

仕上がりはこのようになった。

img_soft_pscs4_02_19.jpg

概ね良好と言いたいところだが、残念ながら一カ所エラーになっている。

img_soft_pscs4_02_20.jpg考えられる原因は、上下の重ね合わせ部分が少なかった事と、時間経過で雲が動き、それに引っ張られてしまった可能性もある。

よく見ると、単純な重ね合わせのズレではなく、重ね部分を誤摩化すためのボケが入っているようなので、写真のトーン自体が変化しているようだ。

ということは、単純にレイヤーマスクの調整だけでは上手くいかないと思い、元の画像の同じ部分を移植することで対応した。風景写真なので誤摩化しやすいことも幸いだった。

img_soft_pscs4_02_21.jpg

こうしてでき上がった画像は7288×4911ピクセル、約3500万画素相当のデータである。350dpi換算では52.8×35.6cm、ほぼB3相当の印刷解像度である。

失敗できない状況で複雑な絵柄の写真をつなぐ

これまで紹介した写真はいずれも風景写真、いわば多少のラフさがあっても誤摩化しの効くような絵柄である。しかし、広告写真、特に商品撮影ともなると、シビアな正確さを求められ、商品の歪みなど一切許されない状況だ。

次に紹介するのはスタジオでのインテリア撮影。見開きページでの使用ということで、1200万画素相当の解像度では足りないため3枚スティッチによる高解像度写真を作ることにした。とはいえ後になって「上手く合成できませんでした」では済まされない仕事なので、Photomergeを使う場合は充分注意して判断すべきだろう。

こうしたスタジオ撮影では現場にパソコンを持ち込み、その場で合成し確認することは必須だろう。本番の処理は後でするとしても、軽いJPEGデータで合成して本番への目処はつけておくべきだ。

まず最初にする事は、仕上がり状態を想定できるように、また、正しいパースを知るための指標にするためにも一枚ものの写真を撮影しておくことだ。

img_soft_pscs4_02_22.jpgレンズ画角は24mm(35mm換算で36mm )で撮影。この写真を使って紙面上でのレイアウトをデザイナーに確認してもらう。O.Kならば、どのくらいのレンズ焦点距離で何分割して、どのくらいの重なり部分で、などの予想をたてていく。

注意するべき事は、合成後に余白部分を切り取ると実際に写っている範囲より一回り小さくなってしまうので上下左右は充分に余裕をみておくことだ。また、今回の場合レンズが下向きになるのでパノラマ雲台は使わずに、下向きのまま雲台を回転することにした。

何度か焦点距離を変えながらシミュレーションし、34mm(35mm換算で約51mm)のレンズ焦点距離で3分割することにした。

こうして3枚の写真が撮られた。

img_soft_pscs4_02_23.jpgimg_soft_pscs4_02_24.jpgimg_soft_pscs4_02_25.jpg

はたしてPhotomergeは上手くつないでくれるのか? 絨毯の柄は上手くつながるのか? 

今回は「自動設定」ではなく最初から「遠近法」を選択した。その結果全く違和感のないパースで見事につなぎ合わせてくれた。

img_soft_pscs4_02_26.jpg

絨毯の柄もアップで見ても全く違和感無くつなぎ合わせてくれている。

img_soft_pscs4_02_27.jpgimg_soft_pscs4_02_28.jpg

風景写真のような曖昧な絵柄よりも、こうした複雑な紋様の絵柄の方がはっきりしているのでつなぎやすいのかもしれない。

余白をトリミングし仕上がった写真である。

img_soft_pscs4_02_29.jpg

解像度は6262×4176ピクセル、8bit換算で74.8MBのデータである。いかがだろうか? これなら自信を持って仕事でも使えるツールと言えるだろう。

実は、もし上手くいかなかったら1枚ものの写真を拡大リサイズして…などと考えていた。確かにPhotomergeを過信しすぎるのも危険だ。やはり絵柄によっては上手くいかない時もある。しかし、この時ばかりは立ち会ったデザイナーも「CS4は凄い!」と驚いていた。もちろん僕も「これは、もう後には戻れないな…」と思ってしまったのは言うまでもない。

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竹澤宏 Hiroshi Takezawa

1983年、フリーのフォトグラファーとして独立。1995年〜96年、東京グラフィック・アーツ 映像事業部長 兼 マルチメディアスクール主任講師。1997〜99年、青山CGスクール・メロン非常勤講師(写真担当)。2008年より、毎日コミュニケーションズ「Mac Fan」で「デジタル一眼 Step By Step」を連載中。http://www.takezawa-lab.com/blog/

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