Photoshop CS4では異なるピント面の複数の写真を合成して被写界深度の深い写真を作ることができる。また、レイヤーの自動整列を使用し、手持ち撮影した写真を重ねる応用編も紹介しよう。
Photoshop CS4では異なるピント面の複数の写真を合成して被写界深度の深い写真を作ることができる。従来の4×5での物撮りならばアオリを使ったピント送りとf64まで絞り込んだ被写界深度の深さで、ほとんどのものに対応できたものだった。
しかしデジタル一眼レフが主流になってからは35mm用のレンズを使うためマクロレンズでもf32、一般のレンズならf22までが精々で、パンフォーカスの写真を得るのは難しかった。幸い時代的な流行としてはパンフォーカスよりもピントの浅い写真が好まれる傾向にあるので、その意味では(パンフォーカス写真を要求される機会が少なく)助かっていたという側面はある。
それでも、商品にだけは全面ピントが欲しいという場合も多く、その時は撮影する時の工夫が必要だった。例えば、少し引き気味に撮影して被写界深度をかせぐ、複数のものをレイアウトする場合はなるべく前後の距離差をつけない、といったことだった。
この、「レイヤーを自動合成...」を使う事で、こうした問題が一気に解決され、パンフォーカスの写真が容易に作れるようになったことは喜ばしい。
では、手順を追って解説していこう。
カメラ位置はそのままでピントを送りながら何枚か撮影する
撮影は三脚を使い、同ポジションでピント面だけを変えた写真を複数撮影する。今回の作例は小さな陶器製の小物を4つ、前後にレイアウトして撮影した。
FinePix S5 Pro SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG HSM 絞り f11半 ストロボ使用 ISO100
写真は一番手前にピントを送ったもの。
マクロレンズを使用しアップで撮影しているため、絞りf11半とはいえ一番後ろの小物はかなりボケてしまう。ここから少しずつピントを後ろに送り、7枚の写真に分割した。
もし、この記事をドラマチックに仕上げたいと思えば、開放F値に近い状態で撮影した写真を合成してみせたほうがインパクトは出るのだが、それはしない。なぜならパンフォーカス写真を作成しようとする時にあえて開放F値を使う人などいないからだ。
実はf4の絞りで撮影した素材もあるのだが、ピント面とピント面の隙間を埋めるためにかなりの枚数を撮らなくてはいけないことが分かったし、エラーも出やすくなるので現実的ではない。
ちなみに、この状態では小物同士の前後の距離感が分かりにくいだろうから、説明的に上から撮影した写真も見ていただきたい。

一番手前の象の小物が全長4.5cmくらい、前後の距離差は15cmくらいだろうか
こうして撮影された7枚の写真をレイヤーとして読み込まなくてはならないのだが、従来なら7枚の写真を開いて、コピー&ペーストして と手作業になりがちだった。Bridge CS4を使えば必要な写真を選択し、「ツール」から「Photoshop」→「ファイルをレイヤーとして読み込み..」を実行すれば自動的に一つのファイルに複数のレイヤーを重ねた状態で開いてくれる。

「レイヤーを自動整列」で写真の位置と大きさを揃える
さて、ピント面の違う写真が7枚レイヤーに重なって開いた状態になったが、実はピントを前後に送ると写る大きさも違ってくるということに留意しなくてはならない。そのため、事前に「レイヤーを自動整列...」させて、ピッタリ大きさも位置も同じになるように調整しておこう。


必要なレイヤーを全て選択してから、「編集」→「レイヤーを自動整列...」を選択。

投影法を選択するウィンドウが出てくる。おや? これ、どこかで見た事あるような
そう、Photomergeのレイアウト設定と同じだ。多分、同じプログラムを流用しているのだろう。
どこが違うかというと「レイヤーを自動整列...」では、レイヤーマスクを作らないという点だ。実は「Photomerge...」でもデフォルトで入っている「画像を合成」のチェックマークを外して実行するとレイヤーマスクは作成されないのだ。
今回は「コラージュ」を選択した。「自動設定」のままでも構わないのだが、パノラマ写真を作るわけではないし、選択肢は限られてくるので予め「コラージュ」を選んでおいたほうがエラーが少なくて済むと思う。
なぜ「コラージュ」かというと写っている被写体の大きさが微妙に違うので、コンテンツの拡大•縮小は必須だからだ(「位置の変更」の場合は拡大•縮小や回転は行わない)。絵柄や撮影状況によっては結果が思わしくない場合もあるので、その時は別の設定を選択しよう。
こうして自動整列を実行することで、自動合成のための下準備となるわけだが、実はこの機能、違う場面でも応用が利く。
例えば、合成素材用に同ポジションで撮ったつもりが、三脚や雲台の精度が甘く微妙にピクセルがずれてしまった時などに有効だ。極端な事を言えば手持ちで撮影した素材でも上手く重ねてくれることもある。類似した絵柄を含むレイヤーを極力一致させようとしてくれる機能なのだ。
実は「HDRに統合...」を実行する時も「ソース画像を自動的に配置する」という項目にチェックが入っているはずだが、これも「レイヤーを自動整列...」と同義である。とはいえ、どんな場合でも100%ピッタリ一致させてくれるとは言えないので、撮影の時点での精度を高めておくことも必要だ。
「レイヤーを自動合成」を実行すると、被写界深度の深い写真ができる
ここまでくればあとは「レイヤーを自動合成」を実行するだけだ。


自動合成の設定画面では「画像をスタック」にチェックを入れ、「シームレスなトーンとカラー」にもチェックマークを入れて実行しよう。
レイヤーマスクのエッジがシャープなのに違和感がないのは「シームレスなトーンとカラー」にチェックを入れることで微妙に違う各写真の露出や色などもコントロールして違和感なく繋ぎ合わせてくれるからだ。
こうして出来上がった写真が次の写真である。

ほぼ、満足のいく状態の仕上がりになった。細部も見ていただこう。

さらに、Photoshopがどう判断して自動処理をしたのか、各レイヤーごとの写真もみていただこう。

手前から奥に向かって、順番通りにレイヤーが採用されていて、Photoshopは的確に自動処理してくれたことがわかる。これなら仕事の現場でもかなり頼りになるツールだと思う。
「レイヤーを自動整列」の応用編
最後に、自動整列の機能を使った応用編をご紹介しよう。自動整列の機能は時として手持ち撮影した写真も上手く重ねてくれる時がある。(もちろん三脚使用が推奨なので、手持ちはお勧めではないが )
以下の3枚は手持ち撮影でスナップしたものである。



並列に並べても分かりにくいが、3枚のレイヤーとして重ねてみると、微妙にズレていることがわかる。この3枚をレイヤーを自動整列を使い重ねて見る。
投影法のウィンドウを開き「自動設定」で実行してみる。あっけなく上手く重なってしまった。前後のレイヤーを有り無しして重なり具合をチェックしてみると、建物部分がほぼ完璧に繋がったことがわかる。

その中の一枚がこれだが、大きさだけではなく歪みや変形も使いながら調整していることがわかる。
で、最終的に3枚の写真を同ポジションのレイヤーで重ねて何がしたいのかというと
仕上がりはこうである。

人の流れが絶えないので、複数の写真をレイヤーで重ね、上のレイヤーの人物部分を消すと下のレイヤーの壁が現れる。こうして床や壁など生かせるところだけを生かし、人物を消してしまったのだ。
今回のテーマは比較的簡単に出来てしまう自動処理だった。もっとも、簡単に出来てこそ本来の自動処理であって、設定が難しかったり手間のかかる自動処理だったら、それは自動処理とは呼べなくなってしまう。
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竹澤宏 Hiroshi Takezawa
1983年、フリーのフォトグラファーとして独立。1995年〜96年、東京グラフィック・アーツ 映像事業部長 兼 マルチメディアスクール主任講師。1997〜99年、青山CGスクール・メロン非常勤講師(写真担当)。2008年より、毎日コミュニケーションズ「Mac Fan」で「デジタル一眼 Step By Step」を連載中。http://www.takezawa-lab.com/blog/



















