Photoshop オート機能完全攻略
第7回 形を矯正するための自動処理のあれこれ
2010年01月27日
かつては特別な撮影機材やスキルがなければ物の形を正確に再現することができなかったが、Photoshopの様々なオート機能により、同じことができるようになった。「レンズ補正」をはじめ、形を矯正するための自動処理について見てみよう。
建築やインテリア、商品撮影の分野では形を正確に再現することが重要になる。そのためフイルム撮影では4×5など大判カメラでアオリを自在に使いこなす技術が必須で、また、それがプロたる所以でもあった。35mmタイプのデジタルカメラの弱点はこのアオリが使えないこと。シフトレンズを使うという手もあるが通常のレンズよりも遥かに高価だし、ラインナップが豊富ではない点も問題だった。
この問題を一気に解決したのがPhotoshop CS2以降の「レンズ補正」機能である。今回はこうした形を矯正するための自動処理機能について解説していこう。そしてさらに便利になった色調補正のための自動処理についても紹介しよう。
レンズの歪みやパースを修整できる「レンズ補正」
「レンズ補正」はレンズ特有の歪みなどを矯正することができる機能だ。例えば建物を下から見上げるとハの字型に上部がすぼまって写る。こうしたパースの付きかたはある意味当たり前で自然なことだが、ワイドレンズを使ったときなどには極端に垂直が傾いて見えてしまうことがある。こうしたパースを変形して補正してくれるのが「レンズ補正」だ。
「レンズ補正」が登場する前は「編集」メニューから「変形」ツールの「遠近法」や「拡大・縮小」などを使って補正していた。基本的には「遠近法」でパースは変形できるのだが、それだけでは見た目と違うなぁと感じていた。筆者自身は4×5カメラでのアオリ撮影の経験は豊富なほうなので、頭の中には理想型の形のイメージはあった。そういう背景があったので、いろいろと試行錯誤していくうちできるようになっていたが、経験がないと難しい作業だと思う。
「レンズ補正」の登場で一番驚いたのは、自分が手動で最適なポイントを割り出していたのと同じことを自動化している点だった。考え方の基本は一緒のようだった。
さらに便利になったのは、写真の傾き、樽型、糸巻き型といった歪みの補正、ワイドレンズを使った時の周辺光量低下の補正、周辺の色収差の補正などが一つのウィンドウの中でできてしまうことだった。
では、実際の写真を作例に機能を紹介していこう。

最も主要な機能を分かりやすく説明できる、建築外観の写真を選んでみた。メニューから「フィルタ」→「変形」→「レンズ補正」を選択する。

レンズ補正ウィンドウ全体。画面上に格子が表示され、垂直、水平などの傾きがよくわかる。右側のパラメータ一覧で調整していく。この絵柄では垂直をきちんと真っ直ぐにするために一番下の「変形」を使う。
まず、垂直方向の遠近法を使い大まかに追い込んでいく。次に格子線をよく見ながら、傾きはあるのか? 水平方向の遠近法はどうなのか? など細かな部分にも注意を払いながら追い込んでいこう。変形をさせると必ず余白部分ができるので、そこをどう処理するかという設定が一番下にある。

左上にはオプションとして拡大ツールや手のひらツールがあり、格子線を移動させるツールもある。細かく追い込んでいきたい時はこうしたツールを利用しよう。ただ、注意する点はやりすぎないこと。やりすぎると逆アオリになり非常に違和感のある見た目になるので、ドンピシャよりも若干手前の数値で止めておくのが私流のやり方だ。

こうしてできたのが上の写真。余計な余白部分を切り抜いて完成となる。元々あった周辺部分が変形と切り抜きによって失われるので、ひと回りトリミングされたようになる。撮影時点からそのことを想定して広めに引いて撮影しておくことを忘れずに。
次に選んだ絵柄は、室内のインテリア。

ワイドレンズ特有の樽型の歪みがあり周辺の柱などが丸く歪んでいる。レンズも若干下に向けているのでパースも付いている。
この歪みを補正する数値は右図のようになった。ゆがみ補正はプラス方向へ、また、今回は周辺光量の補正もおこなった。
補正値は少しずつではあるが、微妙に気になっていた歪みをきちんと補正してやると、見違えるようにシャキッとした写真になる。
こうした一連のパラメータは名前をつけて保存することができる。また、同じような絵柄を処理する時などは「前回と同じ」を選ぶことで素早く設定ができる。
この「レンズ補正」の機能のおかげで4×5の撮影がかなり減ったことはいうまでもない。
画像を曲線的に変形できる「ワープ」
実は筆者自身最近気がついたのだが、「変形」ツールの中に「ワープ」という項目がある。この画像のワープ機能はPhotoshop CS2で追加されたらしいが、いまでは「レンズ補正」だけでは対応しきれない時に非常に役立つツールになっている。
下の写真は180°近い画角で眺望をパノラマ撮影したものである。

Photomergeの機能を使い円筒法でつなぎ合わせているので、近くを通る線路がカーブしているように写ってしまった。写真の下側だけを変形させたい、といった時にこの「ワープ」機能を使うと便利だ。

格子の線を動かすことで、そのカーブに添って写真がワープする。ここでは一番下のラインの中央を持ち上げている。画像の中心部も一緒に持ち上がってきたので、上から2番目のラインを少し下向きにした。

多少でも見た目が改善されることを目的に、あまりやりすぎないようにした。自由変形とワープモードを切り替えながら使っていくことができるので、従来からあった変形ツールも使いやすくなっている。
部分的な変形が得意な「ゆがみ」フィルタ
フィルタの項目に「ゆがみ」が追加されたのもかなり前のこと。Photoshop 7.0ですでにあったお馴染みの機能だ。こちらは全体的な変形というよりも部分的な変形が得意だ。
レースのカーテンが風になびくイメージを撮りたいということでセッティングした。

スタジオの白ホリを背景に、カーテンの端をテグスで引っぱりスタンドに保持した。当然、エッジのラインは直線的にしかならないのだが、これを「ゆがみ」を使って変形させる。

「ゆがみ」ツールで変形をするときはフリーハンドが主体になるので偶然性が左右する場合が多い。この時はすぐに気に入った形になったので時間はかからなかったが、二度と同じことはできないかというと、そうではない。歪んだメッシュの状態を設定ファイルとして保存しておいたので、こうして今再現できたのだ。

明るさやトーンを調整し仕上げた写真である。風を感じていただけるだろうか?
Photoshop CS4の「色調補正パネル」
これまで紹介した自動処理は、Photoshop CS4以前からあったものばかりになってしまったが、最後にCS4から使えるようになった最新の自動処理を紹介しよう。それは色調補正パネルである。
「レベル補正」「トーンカーブ」「明るさとコントラスト」「色相・彩度」などおよそ色に関わるコントロールはこの色調補正パネルに盛り込まれている。それらがレイヤーマスク付きの調整レイヤーとして適用されるという点が新しい。
例えば「レベル補正」も「トーンカーブ」もそれ自体は昔からのお馴染みの色調補正だが、昔ながらの手順でいけば、元の画像に変更を加えながら順番に適用していくというやり方だった。
次に「調整レイヤー」や「レイヤーマスク」の登場で元の画像には変更を加えないで調整するというやり方ができるようになった。これもPhotoshop 4.0の頃からあったのだが、当時はマシンパワーやメモリパワーが追いつかず、無闇にレイヤーを作るとかえって面倒なことになる(重くなる)という側面もあった。
だが、時代とともにレイヤーを沢山重ねることにも抵抗はなくなり、こうした非破壊編集的なやり方も一般的になってきた。ここで言う非破壊編集とは、元の画像データの上書きをせずに画像を変更できる、いつでも元の画像の状態に復元できるといった意味である。この非破壊編集の集大成として登場したのが「色調補正パネル」だと言えるだろう。
では実際の作例を元に、もう少し詳細を見ていこう。

住宅のモデルルームを撮影。未調整のままでは色かぶりも多く明るい印象ではない。
元の背景に3枚の調整レイヤーを重ねる。
▼自然な彩度
一番下は赤かぶりの補正と明るさの調整のため「トーンカーブ」を、次にハイライト、シャドウの調整をするため「レベル補正」を、一番上の「自然な彩度」では、蛍光灯や壁の色を調整する意味で彩度を下げている。
同時にレイヤーマスクを使いブラシで適用したい部分だけにマスクをかけるようにしている。調整レイヤーを選択すると、上段の色調補正パネルに設定が表示される。もし変更したい時は、色調補正パネルのそれぞれの設定を変更すればよい。
つまり、順を追って設定し、その都度決定しながら次の設定へ移っていくといったこれまでの概念は覆され、いつでも変更可能な色調補正パネルがそこにある、ということだ。デフォルトでプリセットされている設定もあるし、自分で設定したパラメータをプリセットすることも可能だ。

こうしてでき上がったのが上の写真である。いつでも変更可能とは言ったものの、JPEGとして保存する場合は全てのレイヤーを統合しなくてはならないので、その時点で後戻りできなくなる。あくまでもPhotoshop形式で保存する限りはいつでも変更可能ということだ。
色調補正パネルは単なる便利な機能ということだけではなく、その根底には時間軸を飛び越える哲学が存在している。
スーパーレタッチャーが教える プロのためのフォトレタッチテクニック
広告や雑誌で活躍するレタッチャーの仕事を例にとりながら、より早く、より確実に、より完成度の高い画像処理を行なうための実践的なテクニックを解説します。
定価2,730円(税込)
竹澤宏 Hiroshi Takezawa
1983年、フリーのフォトグラファーとして独立。1995年〜96年、東京グラフィック・アーツ 映像事業部長 兼 マルチメディアスクール主任講師。1997〜99年、青山CGスクール・メロン非常勤講師(写真担当)。2008年より、毎日コミュニケーションズ「Mac Fan」で「デジタル一眼 Step By Step」を連載中。http://www.takezawa-lab.com/blog/
















