Photoshop ユーザーに聞く

「Photoshopはまるでモノリスのような存在。 写真表現はこれから本当の意味で進化する」 甲斐 彰

Adobe Photoshop 1.0がリリースされたのは1990年2月。Photoshop CS5が発表された今年(2010年)はちょうど20周年を迎える節目の年となる。そこでPhotoshopと縁の深いクリエイター3人に、それぞれの仕事とPhotoshopとの関係について話を聞いていく。1人目は、フォトレタッチカンパニー「フォートン」代表でフォトグラファーの甲斐彰氏。

img_soft_ps20th_01_01.jpg写真は絵画や3DCGを取り込み、やがては動くようになるだろう、というフォートンの基本コンセプトに基づいて制作した作品。撮影素材と3DCGとをPhotoshop上で融合させ、2Dレタッチで仕上げる。

Photoshopのコストパフォーマンスの高さに驚かされる

1988年に、日本で初めてのデジタルイメージング専門会社としてフォートンを立ち上げましたが、そのときはまだPhotoshopはこの世には存在していませんでした。その後しばらく画像処理専用機を使っていたのですが、90年代の後半にPhotoshopを導入してみて、そのコストパフォーマンスの高さに目を見張りました。

ちょうどその頃、とある雑誌のインタビューで「専用機もPhotoshopも品質的には変わらない」という話をしたところ、記事を読んだ専用機メーカーの人から「ウチの製品とPhotoshopを一緒にされちゃ困る」とクレームがつきましてね。そこで、それぞれの処理結果をフィルムに出力して「違いがわかりますか?」と見せたところ、なんのことはない、彼ら自身も見分けがつかなかったんです。

そのとき、これからはPhotoshopがメジャーになると確信しました。実際にウチで主力となったのは2003年頃ですが、すこしタイムラグがあるのは、Photoshopの問題ではなく、単にMacのマシンパワーの問題ですね。

Photoshopの時代が来ると思った最大の理由は、機能や品質よりも、その値段です。1台数千万円もするような専用機は何台も導入できませんが、Photoshopはそれに比べて圧倒的にローコストですから、何人ものスタッフが同時に作業できる。すると、新たな才能がどんどん育つ。これが重要なポイントです。Photoshopによって多くの人がクリエイティビティを発揮できるようになり、写真に革命が起きると本気で思ったものです。

170年の歴史を経て、写真表現の制約から解き放たれた

でもこの20年を振り返ると、アナログの時代からやってきた作業が、暗室からパソコンに置き換わっただけのような気がします。制作現場の合理化は進んだものの、写真の表現はまったく変わっていません。写真が170年の歴史を経て、ようやくレンズの光学的制約やフィルムの化学的制約から解き放たれて、自由に表現できるようになったのに、結局、誰もこれまでの経験の枠からはみ出すことはしなかった。フォトグラファーは、いつまで「写真らしさ」という固定観念を追いかけないといけないんでしょうか。

飛行機の歴史はライト兄弟から始まり、月にまで到達しましたが、写真もまた同じような勢いで進化しないわけがない。Photoshopはまだまだものすごい可能性を秘めたソフトです。まるで宇宙から降りてきたモノリスじゃないかとも思いますが、それを使う我々の意識が追いついていません。

写真は静止していなくてはならない、あるいは平面でなければならないなんて、誰が決めたんですか? 写真の進化はまだまだ、その入り口にさしかかった段階です。我々自身の意識が変わった時、写真表現は本当の意味で進化するでしょう。そして、長らく低迷している広告写真というジャンルも、そのとき初めて復活できるのではないでしょうか。

Profile:

甲斐 彰 Akira KAI

日本大学芸術学部写真学科卒業。1988年フォートンを設立。2002年から3年連続でAPA(日本広告写真家協会)賞を受賞。作品集に「フービズム-風美主義-」「THE DANCING WIND」など。

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