Blackmagic Cinema Camera

BMCCはこうして生まれた! Blackmagic Design CEO Grant Petty(グラント・ペティ)独占インタビュー

石川幸宏(DVJ BUZZ TV)

この特集記事を構成するにあたって取り上げるべき最重要人物は誰か? を考えたとき、やはり最初に頭に浮かんだのはこのカメラの生みの親であるブラックマジックデザイン(BMD)のCEO、グラント・ペティ氏だ。同社の全ての製品が彼の発想を元に開発されている中で、このエポックメイキングなカメラがどういう経緯で生まれて来たのか? そこを明確にするためにもグラント氏の声は外すわけにはいかない。BMCCの誕生秘話などをご本人に詳しく語ってもらった。

なぜブラックマジックデザインがカメラを開発したのか?

───Blackmagic Cinema Camera(BMCC)を開発するに至った動機、そしてその理由とは?

img_special_blackmagic02_01.jpg グラント・ペティ氏

グラント 私はBMD社を作る以前に、何年もの間、ポストプロダクションで働いてきた経験から、ポスプロで作れる最高の映像というのは、フィルムで撮影した素材を、ハイエンドのフィルムスキャナでスキャンし、才能のあるカラリストがDaVinci Resolveのようなツールを使ってカラコレしたものだと感じていました。

そして数年前にDaVinci を買収したとき、私はカラーコレクションをよりパワフルに、かつより多くの人が仕事で使えるように購入しやすいものにしたいと思っていました。それは多くの人が、仕事でカラーコレクションをしたことがなく、また、それがどんなにクリエイティブワークにとって重要なのかが分かっていない、と強く感じていたからなのです。

私たちは、ソフトウェア単体バージョンのDaVinci Resolveの開発に注力し、それを1000ドル以下で提供し、さらには無償ダウンロードバージョンもリリースしました。これは私たちにとって、本当にエキサイティングなことでした。

それによって、カラーコレクションをする人が確かに増えてきてはいたのですが、その結果は私たちが期待していたほどではありませんでした。その理由は、ARRIのようなデジタルフィルムカメラを購入したりレンタルできるのは、ハイエンドのユーザーの方々だけだったからです。普通の人たちは、ビデオカメラやDSLRカメラを使っていたのです。

もちろん、それでもいいショットが撮れるのですが、コントラストレンジがクリップされるため、カラーコレクションに必要なレンジが失われてしまうのです。普通のビデオカメラで撮影するということは、ユーザーの皆様にとって、クリエイティブな作品作りに対して妥協を強いられる、ということなのです。そこで、低価格で普通のビデオカメラにないような機能を幾つかつけたカメラが必要だ、と考え始めたのです。

まず、ハイライトと暗部のディテールを捉えることができるように、広いダイナミックレンジが必要でした。そして、ベイヤー型のイメージセンサーで撮影したときのロスがないように、解像度をHD以上にする必要がありました。RAW素材を収録でき、カラーコレクションのソフトウェア上でより良いディベイヤー処理ができるように転送速度の速いレコーダーと、別途オーディオを同期しなくてもいいように性能のよいオーディオレコーダーも(カメラ内に)同梱することが必要でした。

またDSLRカメラはピントを合わせにくく、イライラさせられます。カメラのモニターもフォーカスの確認をするためには十分なサイズでないので、撮影が終わったあとに、ピンぼけしたショットに気付くことも多く、この問題も解決したいと思いました。カメラ内でメタデータを入力したり、Final Cut ProやAvidでファイルをトランスコードすることなしにポスプロ作業ができたりすることも必要だと考えました。

欲しい機能を詰め込んだカメラを自分たちの手で作る

グラント このほかにも多くのアイデアがありました。私たちは最初いくつかのカメラメーカーに(このような仕様のカメラの共同製作を)打診しましたが、彼らは(私が考えているカメラに対する)マーケットが小さ過ぎると考えていました。確かにその通りでしょう。それでも私はそんなカメラが欲しいと思いました。それがなければ、思い通りにカラーコレクションできるような高画質の素材がなかなか撮影できないし、それによってユーザーの皆様のクリエイティビティが制限されてしまうからです。

他のカメラは、ビデオを規定値内にクリップします。これは、ホームビデオやENGの仕事においては良いことですが、フィルムライクな映像が欲しい場合は、カラーコレクションでクリエイティブに作り込めるように、もっとダイナミックレンジが必要です。そのため、自分たちで欲しい機能を詰め込んだカメラを作ろうと決めたのです。これがBlackmagic Cinema Camera誕生のきっかけです。

BMCCを開発したのは「カメラマーケットに参入」という理由ではなく、ただ、カラーコレクションに最適な映像が撮れるカメラがなかなかない、という問題を解決するためだったのです。その結果として、シネマチックで劇場映画並みの映像が撮れるカメラが誕生したのです。BMCCとDaVinci Resolveを組み合わせることで、ハリウッド映画や、世界的に評価が高いようなコマーシャルと同じ様なルックの映像作品が作れるのです。

本当の「デジタルフィルム」で作品づくりができるので、いくらでもクリエイティビティを発揮できます。これはユニークで、かつ全く新しいクリエイティブ・プロセスで、ユーザーの皆様がBMCCとResolveを組み合わせて作った作品はすばらしいものでした。

───BMCC製品化までに一番苦労したポイントは?

グラント 一番、難しかったのはデザインでした。余計なものを沢山つけなくてもいいように、多くの機能を搭載しつつも、小さくなければなりませんでした。本当のフィルムライクなイメージを得るため、カラーサイエンスの部分も、とても重要でした。

センサーの供給に問題があり、カメラの出荷に遅れが生じたこともとても大変でした。こういった難しい問題に直面しながらも、ユーザーの皆様がBMCCで撮った映像を見たときは、そのあまりのすばらしさに舞い上がるような気分でした。本当にワクワクしました。

img_special_blackmagic02_02.jpg Blackmagic Cinema Cameraは2012年のNABで初めて発表された。

デジタルフィルムイメージの完璧なワークフローを提供

───製品化にあたり、どんな方の意見が一番参考になりましたか?

グラント 多くの方とカメラについてお話をしていて、どの意見が一番参考になったと決めるのは難しいですが、基本的には自分たちが作りたいと思ったカメラを作りました。すでに欲しいカメラがハッキリしていましたので、とくに、誰かからアドバイスを受けたということはなかったのです。

私は個人的に、今までどこにもなかったような製品を作るのが好きです。そういうものは、誰かにどんなものが欲しいか聞いてまわっていても、なかなか生まれてきません。静かに物事を観察し、そして新しいアイデアで皆の抱えている問題を解決するほうが、ずっと面白いんです。

もちろん、自分たちの方向性が間違っていることもあるので、そのやり方は高いリスクが伴います。でも、方向性が正しかったときは、本当にエキサイティングです。おかげさまで、ブラックマジックデザインがカメラを作ったことに対する反応はとても好意的だったので、大変嬉しく思っています。

───ブラックマジックデザインが、このカメラ製品群を出すメリットとは?

グラント カメラを作ったメリットは、ユーザーの皆様にデジタルフィルムイメージと、DaVinci Resolveとの完璧なワークフローを提供できることです。ワークフローとして、それをお届けできることは、本当にエキサイティングです。

また、他社との関係も強化することができました。サードパーティのリグやレンズのメーカー、またオープンスタンダードなファイルを扱っていますので、サードパーティのソフトウェアメーカーとも一緒にお仕事をさせて頂きました。そのことで、多くの可能性が生まれたと思います。

───様々な製品を生み出すブラックマジックデザインという会社は、今後どんな会社を目指しているのか?

グラント 私たちは、とても優秀なチームを抱えており、沢山のアイデアがあります。そのリソースとアイデアで前進あるのみです。今後、どんな方向に向かうかは、私にも分かりません。ただ、私たちのアイデアが、具体的な道筋を指し示したときには、それに向かって素早く行動を起こしたいと考えています。数年先に、私たちがどんなことをしているか予測するのは難しいです。

ただ、今後のブラックマジックデザインについて一つはっきりと言えることは、“10年後も私たちはお客様とって、より価値のあるものを提供し、お客様を尊敬し、謙虚であり続ける”ということです。そうすれば、お客様との「正直でエキサイティングな」関係を築けるのです。

こういった関係こそが、まさに私がポストプロダクションで働いていたときにメーカーから欲しかったものであり、そのためにブラックマジックデザインを立ち上げたのです。私たちは、お客様とよりよい関係を築くように注力していかなければなりません。


※この記事はコマーシャル・フォト2013年10月号 特集「Blackmagic Cinema Camera」を転載しています。

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反射神経に応えられる機動性 ディレクター「柘植泰人」

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