ネットで話題の新映像表現

スーパースローモーション/タイムラプス

文:染瀬直人

時間伸縮で見慣れたシーンをスーパービジョンに

こんな用途に:映像にインパクトを出したい時の常套手段
使用機材:スーパースローモーション NEX-FS700J(ムービー撮影)
タイムラプスNikon D700他(スチル撮影)

タイムラプス

世界遺産の厳島神社を、Webサイトnippon.comで紹介するにあたり、潮の満ち引きや美しい自然の変化をタイムラプスで表現。撮影は早朝から深夜まで4日間に及んだ。カメラはNikon D700、D300S他、一部Go-Proを使用。またタイムラプスでありながら、モーションスライダーや複数軸の雲台でパンやティルト、平行移動を実現している。

YouTubeなどの動画投稿サイト、またテレビのCMなどで近年、非常に人気の高いコンテンツにタイムラプスがある。タイムラプス(Time Laps)とは微速度撮影とも呼ばれるが、直訳すると「時間の経過」という意味。撮影にはデジタルカメラが使われることが多く、固定したカメラで数秒〜数十秒に1シャッターのインターバル撮影は数時間、時には何日もかかるが、そうして撮られた連続写真を動画として再生するとタイムラプス映像になる。

元来、動画とは1コマ1コマの写真の集合体とも言えるが、タイムラプスはそのことをより実感させてくれる表現だ。

青空を流れる雲、刻一刻と色が変化する夜明けや夕暮れの空の様子、星の動く軌跡(スタートレイル)、揺らめくオーロラなどを捉えた映像は、息を呑むほどに美しい。大自然ばかりではなく高速道路を疾走する車からのドライブ撮影、群衆の動き、ネオンやビルの灯りのなど都会のダイナミックな変化を捉えた作品も多い。

スーパースローモーション

SONY NEX-FS700Jを使い240fpsで撮影。蓮の葉の上の雨露がダンスを踊っているように見える。肉眼では捉えきれなかった別世界だ。下の作例はモデルにバレエを踊るように動いてもらい、手足の動きや、髪がなびく様子をフルハイビジョンのスーパースローに定着することができた。モデル:河北桃子(ESPRIT) HM:篠原百合子(Queeva)

その逆に、時間を引き延ばして見せるのが、スーパースローモーションである。秒間数百コマというハイスピード撮影により、何気ない一瞬も突如緊張感を持ち、ドラマチックな時間へと生まれ変わる。鳥の羽ばたき、バレエダンサーの華麗な動きなどを分解して見せることができるのだ。

これらはもちろんフィルム撮影でも行なわれていたことで、今に始まった技術ではないのだが、デジタル撮影機材やソフトの進化により、大がかりな特殊撮影機材を使うことなく、ワンマンオペレーションでもハイレベル、ハイクオリティーな作品制作が可能になった。「古くて、新しい表現」と言えるだろう。ギガピクセルイメージが空間解像度を追求した表現とするならば、スーパースローモーションやタイムラプスは時間解像度をコントロールした動画の魔力。先端技術を用いた究極の映像表現のひとつである。

デジタルカメラ、ソフトウェアの進化でますます身近になった新しい映像表現

img_tech_netmovie06_01.png SONY NEX-FS700J 。スーパー35mm 単板“Exmor” CMOSセンサ搭載。HD 240 fpsの高速撮影、タイムラプス撮影なども可能。
img_tech_netmovie06_02.png SONYのコンシューマ向けミラーレス一眼「NEX-6」。別売アプリケーションを組み込むことで、タイムラプスなどの制作を、カメラ単体でできるようになる。
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SONY PlayMemories Camera Appsは使ってみたい機能を、後からアプリで追加できるユニークなシステム。

今回、紹介している様々な表現の中には、かつては非常に手間のかかるワークフローであったり、アプリケーションが日本語にローカライズされておらず、マニュアルやチュートリアルも見当たらないものが多かった。しかし、昨今では情報も増え、ソフトの性能も上がり、カメラ自体も進化している。


タイムラプスは、以前はインターバル撮影をした写真を、編集ソフトなどで動画に変換する必要があったが、大判センサーを搭載したSONYのNEX-FS700Jは、”スロー&クイックモーション”の設定で、インターバル撮影をした素材をそのまま動画として保存できる。同じくSONYの新発売のミラーレス一眼機NEX-5R、NEX-6はアプリを追加することにより、手軽にタイムラプス撮影ができるようになるし、NikonのD4、D800、D800E、D600なども同様に「微速度撮影」機能が搭載されている。


さらにSONYのNEX-FS700Jは、これまで高価な専用カメラでしかできなかった超高速撮影(=スーパースローモーション、HD時最速240fps、SD時最速960fps)を実現している。


またシネマグラフは、iPhone、iPad用のアプリもいくつか登場している。前述のNEX-5R、NEX-6でも、今後、別売りアプリとして「シネマフォト」などが予定されており、カメラ内での処理も可能となる。


このようにソフトやカメラの性能が向上し、誰もが手軽にそれを楽しむことができるのは素晴らしいことであるが、それをビジネスにしている我々フォトグラファー、クリエイターにとっては痛し痒しのところがある。それをアイデアやセンスで超越する力が必要とされているのである。


染瀬直人 Naoto Somese

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター
2014年、ソニーイメージングギャラリー銀座にて、VRコンテンツの作品展「TOKYO VIRTUAL REALITY」を開催。YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。Google × YouTube × VR SCOUTの世界的プロジェクト"VR CREATOR LAB”でメンターを、また、デジタルハリウッド大学オンラインスクール「実写VR講座」で講師を勤める。「4K・VR徳島映画祭2019」では、アドバイザーを担う。著書に「360度VR動画メイキングワークフロー」(玄光社)など。VRの勉強会「VR未来塾」を主宰。
naotosomese.com

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