カラーライティング 活用テクニック&役立つ機材・小物

Part1 基本テクニック

カラーライティングの基礎知識から応用テクニックまで取り上げる連載。Part1では円形の石膏を被写体に、色を照射することによる効果の違いや、バリエーションなどを解説。色同士の関係性についても触れている。

カラーライティングとは

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カラーライティングは、商品の色を忠実に再現する通常の撮影とは違い、カラーフィルターや、色温度可変式照明、カラーペーパーなどを駆使し、いかにインパクトのあるビジュアルを生み出せるかが、醍醐味となる。

画像左は、照明の色温度5500Kにカメラの色温度を合わせ、白い石膏をいかに白く表現するかを主題としたノーマルな写真だ。画像中央は、照明の前にブルーのカラーフィルターを垂らし、石工だけを青くした写真である。画像右は、レンズ前にカラーフィルターを垂らし、石工と背景までを青くした写真である。フィルターの使い方次第で、まったく別の意味合いの写真となる。

カラーフィルターで背景色をアレンジ

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カラーライティングで一番出番が多いのが照明用のカラーフィルターだ。ライトの前に設置して被写体に色を作ることはもちろんのこと、背景に打つことでカラーバックを作ることも可能だ。カラーフィルターは透過率も高いため、発光感が出やすく、抜けのよいスッキリとした雰囲気を作りたいときには有効な手段である。

照明の集光率を高め、スポットのような影を作ったり、左右のグラデーションを作ったり、光を均一に回しフラットなカラーバックを作れたりと、アプリケーションで作成するより繊細な色表現が可能だ。画像は乳白アクリルの背面にカラーフィルターを貼りつけ、カラーバックを作ったもの。

色をミックスするとどうなるのか

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2色以上の光をライティングする際、注意しなければいけないのが、色の境目部分だ。美しいグラデーションを出すには光の性質を理解する必要がある。

画像は、左からレッド。右からイエローのフィルターをつけたストロボを当てたグラデーションの写真だ。レッドとイエローの光が混じった部分は、インクのようにオレンジになるかというとそうはならない。光と光が交わった場所は白くなるという加色混合という現象のためだ。

光の三原色であるRGBは、インクのCMYKとは違い、混じわれば混じわるほど明るく、白くなっていくのだ。色を複数使用する場合は、これを頭に入れてライティングする必要がある。

カラーペーパーにカラーライトを当てる

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カラーペーパーにカラーライトを当ててみた。1枚目は黒紙にレッドのスポットライトを照射。中心部は彩度の高いレッドが残り、周辺はエッジがしっかりとした影のようなグラデーションができる。2枚目は白紙に同じくレッドのカラーライトを照射したものだが、蛍光色のような明るいレッドとなり、周辺にいくにつれ濃いグラデーションができた。

3枚目は黄緑色の紙に、ブルーのライトを照射した。周辺部の影にうすいイエローが感じられる。4枚目は、3枚目と同じブルーのライトにイエローのフィルターを追加。中心部はカラフルなグリーンとなった。

背景と、フィルターの掛け合わせによっても様々色やトーンを作ることが可能だ。

フィルターを重ねて色を作る

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次はカラーフィルターを重ねて色を作っ てみた。1枚目はレッドとイエローのフィルターを重ねオレンジに。2枚目はイエローのフィルターをはずし、レッドのフィルターだけの写真である。イエローの効果が効いていたことがよくわかる。3枚目はパープルを2枚重ねてみた。しっかりとした濃いパープルができあがった。4枚目は1枚パープルを外したものだ。4枚目と比べすっきりとした印象となる。

色合いや、色の濃さを変えたいときは、フィルターを重ねるのも有効的なので試してほしい。シチュエーションに合わせて色を変えたり、様々なパターンを試してみたりと、現場には様々なフィルターを持ち込むのがおすすめだ。

ライトの出力と色の関係

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色合いや濃度は、フィルターだけではなく、ライトの出力によっても調整することができる。

ここでは、乳白アクリル板の裏側にレッドのカラーフィルターを貼り付けて撮影してみた。使用しているのは、どれも同じ色のフィルターだ。色味が違うのはライトの出力を変えているため。

1枚目と2枚目の出力の差は2段分暗い。3枚目はさらに2段アンダー、4枚目はさらに2段アンダーで、1枚目と4枚目の露出の差は6段となっている。

このように同じフィルターでも、ライトの出力の強弱により色の濃淡を調整できることも、カラーライティングならではの魅力である。

影の色を変えるライティング

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次はメインの左側のライトは色をかけていないノーマルな光にして、シャドウ部である右側のライトにブルーのフィルターをつけて撮影。

1枚目と2枚目の違いは出力の差で、2枚目は出力が高いためシャドウ部のブルーの発光感が強い。それに比べ 1枚目はやや発光感が鈍く、墨っぽさも感じられる。3枚目はさらに出力を強くし、ライトを球体に寄せて撮影を行なった。シャドウ部のブルーが主役となるくらい球体前面に乗り、メインライトの存在感を消し去った。

ライトの出力だけでなく、色の濃淡をコントロールするためには被写体とライトの距離も考慮しながらライティングを行なうとよい。

補色と反対色の関係を生かす

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補色とは右の色相環で正反対に位置する色の関係性のことである。補色の関係にある色を組み合わせると、彩度が高くなったように感じられ、色の鮮やかさが強調される。また、補色とは別に反対色という関係性もある。色相環上の正反対の色の両サイドの色だ。

1枚目は補色を意識し、左からイエローのライト、右側からパープルのライトを当てたものだ。メリハリのきいた鮮やかな球体が印象的。2枚目はそのどちらでもない、同系色の組み合わせであるため、大人しめな色合いとなっている。

色の特性、関係性を理解しておくこともカラーライティグをする上では重要な要素である。

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Part1 基本テクニック
Part2 応用テクニック
Part3 役立つ機材&小物



解説・撮影:中村雅也
凸版印刷情報メディア事業部 ビジュアルクリエイティブ部 1977年生まれ。2000年中央大学文学部卒業。コマーシャルフォトを中心に活動中。静止画のみならず、動画制作も手がける。日本広告写真家協会(APA)会員。長岡造形大学非常勤講師。

※この記事はコマーシャル・フォト2021年8月号から転載しています。

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