IDEA of Photography 撮影アイデアの極意

Vol.2 ミラーレスカメラの可能性

撮影・解説:南雲暁彦(凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部)

nagumo_pr.jpg
機材や被写体、テクニックやコンセプトなど、様々なエレメントから“写真のイデア”を展開していくこの連載。連載2回目となる今回は、ミラーレスカメラについて取り上げる。フォトグラファーの感覚に寄りそってきた光学ファインダーを失くして得たものは一体何なのか。今回はその進化の可能性を考察していく。

南雲暁彦
凸版印刷 ビジュアルクリエイティブ部
チーフフォトグラファー
1970年神奈川県生まれ。幼少期をブラジル・サンパウロで育つ。世界約300都市位上での撮影実績を持つ。日本広告写真家協会(APA)会員。多摩美術大学、長岡造形大学非常勤講師。

ideaofphotography_vol2_1.jpg1/40s f18 ISO1600
撮影協力:深堀雄介 / 一山菜菜海(THS) / 高橋賢司(ノア動物プロダクション)
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ミラーレスとは、レンズを通して入ってきた光をファインダーまで導く光学系が存在しない設計のことだ。無いのはミラーだけではなく、当然その先にあったファインダースクリーンやプリズムも無い。ではどうやって何を見ているのかというと、レンズからの光を直接撮影するセンサーに導き、その映像をボディ背面でも、ファインダーの中でも、液晶に再生させて見せているわけだ。これにより、センサーは単純な光の映像以外に多岐に渡る情報を得て、それを活用することができる。

今回の作品では、ヤモリ(クレステッドゲッコー)を撮影。驚かせないためにストロボを使わず、熱もあまり出ない光源(LED)を使用。動き続ける被写体を追いかけ、フォーカスを合わせながらの撮影だ。ある意味カメラも被写体を生き物として認識する、かつて無い撮影の領域に未来を感じる。

ライティング図

ideaofphotography_vol2_2.jpg

【使用機材】
カメラ&レンズ
 Canon EOS R5…[1]
 Canon RF100mm F2.8 L MACRO IS USM…[1]

ライト
 dedolight DLED4.1…[2][3][4]


撮影の流れ

今回のビジュアルをどのように撮影したのか順を追って説明していく。
前述のライティング図と合わせて見ていこう。

1. 使用したカメラ

ideaofphotography_vol2_3a.jpgCanon EOS R5 + RF100mm F2.8 L MACRO IS USM

ideaofphotography_vol2_4a.jpgDEDOLIGHT DLED4.1

定常光の撮影ではファインダーの中で色調や露出など仕上がりのシミュレーションをしながら撮れるというのもミラーレスの強みである。

前述の通り、被写体のクレステッドゲッコー君はデリケートなので、熱の出ないタイプの定常光の使用がマストということになる。そうなってくるとプロの現場としては最新鋭のミラーレスカメラを使って、歩留まりを上げていくという方法が選択肢から選ばれるわけだ。

しかもこの被写体、微妙に動いており、マクロ域の為フォーカスは非常にシビア。今時の被写体検知能力を試すにも持ってこいのシチュエーションである。

2. ライティングとセットの構築

ideaofphotography_vol2_5.jpgセット全体の様子


ideaofphotography_vol2_6.jpgEOS R5が瞳を検知する様子

トップにディフューザーを張り、その上にLEDを3灯フレキシブルに動かせるように設置した。気まぐれに動くクレステッドゲッコー君の動きに合わせて、掴まっている木を回転させるため、ライティングの微調整を行ないやすくしてある。

基本的にトップライトのみのライティングだが、被写体の両目にきっちりとハイライトを入れて、体全体にもしっかり光を当てつつもコントラストを作れるライティングだ。また、背景は黒布で暗く落として存在感を立たせた。

今回使用したEOS R5の瞳検出性能も素晴らしく、被写体の瞳をしっかりと捉えてくれた。


バリエーション

セットやライティングを活かして別パターンの撮影。
アレンジアイデアのひとつとしてチェックしておこう。

ideaofphotography_vol2_7.jpg1/25s f14 ISO1600
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バリエーションカットの被写体はエボシカメレオン。僕はこれまで野生を含め、たくさんのカメレオンを撮影してきたが、このカメレオンは本当に立派な個体だった。

カメレオンといえば、環境の変化に対し即座に身体の色を変えて対応する生き物だ。環境に対応していく物の象徴として、ミラーレスカメラの進化への願いを込め、このカットを撮影した。

今までのカメラは環境に対して「耐える」ということで対応していた。ひたすら我慢強いことがプロ仕様の象徴であり、耐えている愛機をフォトグラファーがあの手この手で使いこなしていくというスタイルだ。それが最近「対応する」というフェーズに入ってきていると感じている。それはミラーレスカメラが光学ファインダーを捨て、代わりに多くの情報をリアルタイムに手に入れるセンサーを常に稼働させるシステムだからだ。


現行のミラーレスカメラ

現行のミラーレスカメラの中からこれぞというものを4つ紹介する。
特筆すべき魅力をスペックと合わせてまとめてみた。

Sony α1

ideaofphotography_vol2_8.jpg主なスペック
対応マウント:Eマウント/撮像素子:35.9×24mm Exmor RS CMOSセンサー/有効画素数:約5,010万画素/感度:ISO100〜32000(拡張:50〜102400)/AF:ファストハイブリッドAF(位相差検出方式/コントラスト検出方式)/連写:最高約30コマ/秒(電子シャッター時)/外寸:約128.9×96.9×80.8mm/質量:約652g(本体のみ)
詳細スペック:sony.jp/ichigan/

この1という数字に大きな意味を感じる。ミノルタから受け継いだαブランドはこれまで9がフラッグシップの象徴だったが、それを乗り越え、どっからでもかかってこいというスペックを提げてNo.1を持ってきた。実際このカテゴリーを開拓し牽引してきたのはSonyであり、カメラグランプリ2021の栄光を持つ1である。

Nikon Z 7II

ideaofphotography_vol2_9.jpg主なスペック
対応マウント:Zマウント/撮像素子:35.9×23.9mm CMOSセンサー(ニコンFXフォーマット)/有効画素数:4,575万画素/感度:ISO64〜25600(拡張:32〜102400)/AF:ハイブリッドAF(位相差AF/コントラストAF)/連写:最高約10コマ/秒/外寸:約134×100.5×69.5mm/質量:約615g(本体のみ)
詳細スペック:nikon-image.com/

AF化にも対応したFマウントも時代の流れには逆らえず、Zマウントが発表された時には時代が動いたと思った。Z7IIはファインダーの見え方がすごく良い。写真らしい見え方をするこのチューニングにNikonの匠を感じる。無くしてはならない文化、それがNikonである。やはり次期フラッグシップZ9には期待が大きい。

Canon EOS R3

ideaofphotography_vol2_10.jpg主なスペック
対応マウント:RFマウント/撮像素子:35mmフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー/有効画素数:約2,410万画素/感度:ISO100〜102400/AF:デュアルピクセルCMOS AF II/連写:最高約30コマ/秒(電子シャッター)/外寸:約150×142.6×87.2mm/質量:約822g(本体のみ)
詳細スペック:canon.jp/eos

Canonミラーレスカメラ第3世代。最大のトピックスは視線入力の搭載。僕が考えるカメラの進化に対して現時点で最も近い答えのひとつがこれだ。基本スペックの進化も怠っていない。高画素機R5と合わせて撮れないものはないというCanonのラインナップがミラーレスカメラでも完成しつつある。

Leica SL2-S

ideaofphotography_vol2_11.jpg主なスペック
対応マウント:Lマウント/撮像素子:35mmフルサイズ裏面照射式CMOSセンサー/有効画素数:2,460万画素/感度:ISO50〜100000/AF:コントラスト検出方式AF/連写:最高約25コマ/秒/外寸:約146×107×83mm/質量:約840g(本体のみ)
詳細スペック:leica-camera.co.jp

フルサイズミラーレスカメラ、2,400万画素という激戦区に投入されたLeicaの戦略機。4,700万画素の兄弟機SL2とのラインナップとなる。Lマウントアライアンスでレンズシステムを補完しつつ、Made in Germanyの超絶ブランド力と、写真力とでもいうべき高画質を備え独特の立ち位置を持つ。


カメラで撮影という概念を超えていけ

光を記録する部分がフィルムから撮像素子に変わった時、カメラは単なる画像を記録するメディアではなくなっていたのだろう。撮像素子(センサー)はスマートセンシングのコアとなるのだ。実はカメラがデジタル化した時にその種子はすでに生まれていたわけだ。

今やスマートフォンがカメラと同義語となり、写真文化が今までの「カメラ然としたカメラでの表現」に収まらないパラダイムシフトを起こした。

カメラも今、大きな可能性ともにミラーレスのマウントが出揃った。新たな写真の可能性や撮影スタイルを生み出し始めているし、それはフォトグラファーの仕事でもある。

現時点においては「便利になった、人のできることを超えた」というハードがハード然として猪突猛進しているようにしか感じない部分も多いが、センサーをコアに人間と結びついたシステムは楽しい未来を予測させてくれる。

もうひとつのエレメントはもちろんAIだ。スイッチやボタンがどんどん減って、有機的に繋がってコミュニケーションしてみたいものだ。例えばこんな風に。

─フォトグラファー「もっと感度をよこせ。AFをレースモードに切り替えて、No.5のバイクを狙うぞ。シャッタースピードと連写モードを最速に設定だ」。

─カメラ(が進化した何か)「了解しました。GPSロックオン。感度を240,000にセット。連写リミッターを解除します。15秒間の超高速連写が可能です。シャッターの耐久回数が0.2%減少します。CPU温度が15%上昇。残り連続撮影可能時間は5分21秒です」。

─フォトグラファー「ポートレイトバストアップ、絞り開放だ。情報を合わせ最適のセッティングに」。

─カメラ(が進化した何か)「F1.0有効被写界深度が0.8mmになります。フォーカスはこちらで制御します。瞳の虹彩のセンターをトラッキングします。レリーズタイムラグが5mmセカンド短縮可能となりました。周辺光量の補正を最適化します」。

ボイスオペレーションは既にスマートデバイスで実現されているし、もっと先には声など必要ないコミュニケーションもあり得るだろう。AIとクリエイターが同じ目的のため、補完しながらクリエイティブを進めていくのだ。フルAIモードからフルオーダーモードまで、こうして撮影してみたいと思う。

マニュアルやプログラムといった言葉が古くなったらそこが未来だ。そこではカメラや撮影という概念も超えているかもしれない。僕の想像の限界を超えて欲しい。

さて、人と被写体を光でダイレクトに結びつけ、フォトグラファーの感性を刺激する光学ファインダーと、取り込み得る様々な情報をしっかりと処理できるデータとして持ち、フォトグラファーの意思と結びつけていくミラーレスシステム。ミラーレスのE V Fは光学ファインダーと見分けがつかない画質を手に入れるだろう。だが、作られた映像という意味でそこにはやはりリアルは無い。だからこの二つに同じことは求めない。本当に人が欲するものが一体何なのかということも追い求めつつ、どちらもまだまだ進化して欲しいものである。


※この記事はコマーシャル・フォト2021年11月号から転載しています。

関連情報

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Still Life Imaging スタジオ撮影の極意

当連載の筆者・南雲暁彦氏の著作「Still Life Imaging スタジオ撮影の極意」。格好良い、美しい、面白いブツ撮影の世界をコンセプトに、広告撮影のプロによる、被写体の魅力を引き出すライティングテクニックや、画作りのアイデアが盛りだくさんの内容となっている。

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