光の魔術師ジョー・マクナリーの極意

華やかに、火花のように

解説:ジョー・マクナリー

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タイム、ライフ、ナショナル・ジオグラフィック等の雑誌で活躍する写真家ジョー・マクナリーは、光の魔術師とも呼ばれ、彼の撮影技法書は海外で人気が高いという。その日本語版「ホットシューダイアリー」「スケッチングライト」(発行:ピアソン桐原)の一部を、Shuffle読者のために特別公開する。

華やかに、火花のように

ファッションやセレブなどおしゃれなテーマの写真を撮る場合、小型フラッシュでは、洗練された雰囲気や華やかさを十分に表現できないと考える人もいるようです。もちろん、ダウンタウンのクラブで遊ぶ若者をモデルに、単純なフラッシュを使ってグランジ風の写真を撮影する場合や、ポップアップフラッシュを使って友人とあんなことやこんなことをする自分の写真を撮ることで写真家としてのキャリアを築いたテリー・リチャードソン風の荒っぽい写真を撮影する場合は、話は別です。

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しかし、DIY風の素朴な自動車修理工場を舞台に、シアラやリサのような美しいモデルを撮影する場合は、小型フラッシュでもまったく問題ありません。重要なのは、真のドラマ、インパクト、そして美しい色を生み出す位置にフラッシュを置いて、根気強く、頭を使って発光させることです。

img_tech_mcnally06_02.jpg いずれの写真も、前景へのライトはかなり単純なものです。NBAでもプレーできそうなほど足が長く、信じられないほど身長が高い、黒い巻き毛のシアラの写真(上)では、カメラ右の高い位置に設置したSB-900と透過アンブレラを使用しています。使用したのはそれだけです。この写真では彼女の全身を写す必要があったため、光源を彼女のすぐ近くまで接近させるといういつもの手を使うことができませんでした。光源は彼女の顔からおよそ2.5メートルの位置にあります。この距離からだと、鮮明でくっきりした光を彼女に当てて、メークアップとドレスの色を引き出すことができます。

一流の溶接技術を持つリサの写真(下)では、前景に2つの光を当てています。高い位置と低い位置という美しい光を生み出す組み合わせです。カメラ右の高い位置には、水平方向の3x6フィート(約90×180cm)Lastoliteパネルと2台のSB-900スピードライトを設置しています。ここで大型の光源を使用している理由は単純です。リサに美しい光を当てられるだけでなく、写真の前景全体をカバーできるからです。そのため、車などを照らすために、2つ目の光源が必要になりません。1つの光源で事足ります。

低い位置には、透過アンブレラとSB-800を設置しています(この本で度々触れているように、高い位置のメインライトと低い位置のフィルライトという昔からある組み合わせで、美しい光が実現します。フィルライトはフラッシュがフレームに入らないようにして被写体の顔の下から当てます。うまくやれば被写体をかなり引き立てることができます。通常、フィルライトの光量は、メインライトよりも1/3~2/3段下げます)。透過アンブレラはカメラレンズのすぐ下にあります。3x6フィート(約90×180cm)パネルとともに高い位置に設置されスピードライトをグループA、アンブレラとともに低い位置に設置されたフィルライトをグループBに分けたので、カメラ(D3)に取り付けたSU-800コマンダーから、出力に関してグループごとに異なる命令を送信できます。

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いずれの写真においても、前景(被写体)へのライトはこれだけです。比較的単純です。しかし、車庫に対して光を当てずに、暗い状態のままにしておくと、奥行きを欠いた平面的な写真になってしまいます。車庫は樹木に囲まれた場所にあったため、外は明るかったにもかかわらず、窓やドアからはほとんど光が差し込むことがありませんでした。そこで、車庫に暖かい光が差し込むよう、ライトを設置することにしました。

配置は簡単でした。1つの窓につき1台、そして車庫の開かれたドアのはるか外の位置にもう1台のライトを設置しました。暖かい光を得るため、各フラッシュにフルCTOジェルを付けました。すべてのフラッシュからドーム型ディフューザーを取りはずし、最大までズームしました。使用したフラッシュはSB-800とSB-900なので、SB-800のズームは105mm、SB-900のズームは200mmです。

「じっくり見ると、その太陽の下にはC-スタンドがあるのが分かるはずです」

しかし、重要なのはフラッシュの配置ではありませんでした。フラッシュの配置は極めて簡単でした。最も手腕を問われたのは、SU-800コマンダーをどこに置くかでした。カメラのアングルは、リモートフラッシュが写り込まないように調整されています。しかし、コマンダーとすべてのリモートフラッシュの間には遮る物があってはなりません。このような状況では、SC-28コードかSC-29コードが不可欠です。このコードをカメラの上を這わせ、アシスタントのカレンがホットシュークランプでスタンドに取り付けてくれました。私が撮影している間、バックライトが信号を受信しているかどうかをカレンがずっと見ていてくれました。彼女はSU-800スタンドの横に立ち、潜望鏡を除き込む潜水艦の艦長のように、リモートフラッシュに目を凝らしていました。「左10度に動きあり!i-TTLをフルパワーまで上げろ!ただちに発射準備に移れ!」

溶接の写真では、屋外のリモートフラッシュにより、車庫らしい色、雰囲気、そして深みが実現しています。シアラのファッション写真では、リモートフラッシュをバックライトとして使用することで、シアラの黒い髪にハイライトを作り、あちこちにつるされた金属製の自動車部品に光を反射させています。車庫の大きなドアの外には、一見すると太陽のようにも見える強烈なハイライトがあります。しかし、じっくり見ると、その太陽の下にはCスタンドがあるのが分かるはずです。あえてレタッチで消さずに残しました。まるで何かの自動車部品にSB-900がくっ付いているみたいで、消さない方がおもしろいと判断しました。このように、フラッシュを使って太陽を作り出したり、沈み行く太陽の光を補完したりできるのです。


※この記事は「ホットシューダイアリー」から抜粋しています。

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写真:ホットシューダイアリー

ホットシューダイアリー

世界的フォトジャーナリストにして「光の魔術師」のジョー・マクナリーがつづった「光」にまつわる撮影日記。本書の1/3は、1つのスピードライトだけで美しい写真を撮る方法について割かれており、そのほか複数のライトを組み合わせた方法についても詳しい解説がある。

発行:ピアソン桐原 3,465円・税込

写真:スケッチングライト

スケッチングライト

「今までもそうであったように、ライトはいつでも、どこでも、あらゆる写真家の言語であり続けます」と前書きにあるように、光で写真を自在に描くためのテクニックが詰まった1冊。1つか2つのスピードライトという最小限の機材で、最大限の効果を生み出す秘訣を披露する。

発行:ピアソン桐原 3,990円・税込

ジョー・マクナリー Joe Mcnally

タイム、スポーツ・イラストレイテッド、ナショナル・ジオグラフィック、ライフなど世界的に著名な雑誌で活躍するフォトグラファー。ナショナル・ジオグラフィック誌では、同誌史上初めて、全ての写真をデジタルカメラで撮影した特集「The Future of Flying」を発表。32ページにわたる同特集はその価値が認められ、米国議会図書館に収蔵されている。
・インタビュー ニコンイメージングジャパン 世界の写真家たち Vol.08
・公式サイト JOE MCNALLY PHOTOGRAPHY

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