デジタルフォト達人への道

プロのようにスタジオを使いこなす 第3回

解説:スコット・ケルビー 日本語版監修:早川廣行

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写真:デジタルフォト達人への道 3
アメリカで大ベストセラーとなった書籍「The Digital Photography」が日本語に翻訳されて発売された。この「デジタルフォト達人への道」(発行:ピアソン桐原)、著者は全米Photoshopプロフェッショナル協会(NAPP)会長のスコット・ケルビー氏、日本語版の監修は日本におけるデジタルフォトの第一人者・早川廣行氏だ。Shuffle読者のために、第1巻から第3巻まで各巻のハイライトを特別公開する。

これまでの連載のようにゼロから作り上げたスタジオは、さらに充実させることができます。「デジタルフォト達人への道」第3巻からは、「第2章 プロのようにスタジオを使いこなす」を公開します。

サンドバッグが必要になる理由

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購入するブームスタンドがどれほど頑丈でも関係ありません。いつかは(おそらくは早い時期に)倒れてしまいます。その場合の最善のシナリオは、ストロボの電球またはストロボ本体が壊れるか、ソフトボックスが破ける程度ですむこと。最悪のシナリオは、被写体、クライアント、メイクアップスタッフ、友人の上に倒れることです。これは、ハードドライブのクラッシュと同じで、起きるかどうかの問題ではなく、いつ起きるかの問題です。そこで絶対に必要となるのがサンドバックです。何かをブームに掛けたとき、あるいは屋外に持ち出すようなときには(風で倒れてしまいます)、必ずサンドバックを使ってください。

B&H Photoでは中身の入っていないサンドバックを販売しており、元に届いたときに砂を詰めます(あらかじめ砂詰めされたものもありますが、配送代がかさみます)。このサンドバッグを重さのバランスを保つためにブームスタンドの足の部分に置くか、平衡を保つためにブームの端に下げます(上の写真)。あるいはその両方を行います。これで心配事の1つが無事解決されました。

注意点が1つ。サンドバックを取り除くときは慎重に行ってください。サンドバックの重みでバランスを保っているとしたら、それを外すとブームは倒れてしまいます。よく見ながら(あるいは手を添えて)取り除くようにしましょう。


モノライト vs. バッテリーパック

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モノライト(モノブロック)は標準的なスタジオ用ストロボで、普通の照明器具のように壁のコンセントにプラグを差し込んで使います。スタジオ用ストロボを屋外の撮影場所に持ち出したい場合には、代わりにバッテリーパックとバッテリー電源用に作られた特殊なストロボヘッドを使用します。

私は両方がセットになったElinchrom Ranger(エリンクローム・レンジャー)を使っています。Rangerのような製品の長所は、スタジオ用照明機材を屋外(海岸、砂漠、船上など)に持ち出せることです。ただし欠点もあります。“バッテリー仕様”の特殊なストロボヘッドを使わなければならないことです。

しかし、最近では通常のスタジオ用ストロボのプラグを差し込むだけのバッテリーパックが売り出されています。私はInnovatronix(イノバトロニクス)のExplorer XTと呼ばれるバッテリーパックを使っていますが、これは通常のスタジオ用ストロボを2灯まで接続可能で、専用のバッテリーパックと比べて半額以下という購入しやすい価格です。したがって、すでにスタジオ用ストロボを持っているなら、新たにストロボヘッドとバッテリーパックを買う代わりに、このバッテリーパックを買うだけですむということです。すばらしい!


1つの背景で3種類の描写が手に入る

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SCOTT KELBY
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白い背景紙の長所は、ライティング(とシャッタースピード)を変えることによって3通りの違った描写ができることです。その方法を紹介しましょう。

(1)白の背景にするには、背景紙自体に光を当てる必要があります。低い位置にライトを1台(理想的には両側に1台ずつ)置き、少し上向きにして背景紙を照らします。これで白の背景になります。

(2)グレーの背景にするには、背景紙用のライトをオフにします。白い背景紙がグレーに見えないように光を当てるわけですから、ライトを消せばグレーになります。これが1枚の背景紙から作る2つ目の色になります。

(3)黒の背景にするには、ライトを消したままにし、さらにシャッタースピードをカメラが許す最高の数値(ストロボが同調する最大のスピード)まで上げます。おそらく1/200秒か1/250秒でしょう。これだけで背景がもっと暗く、少なくとも濃いグレーか真っ黒になります。シャータースピードを上げることにより、室内にあった光(周辺光)をすべて取り除いたということです。


リングストロボを使う

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ファッション写真家の間での最近の流行は、リングストロボ(リングフラッシュ)を使った描写です。小さな発光部が円形状に並んだストロボで、レンズが中央におさまるように取り付けます。これで非常にフラットな光が被写体に当たり、背後にはくっきりした影ができます。ストロボの章(1章)では、外部ストロボに取り付けてリングストロボのような効果を出すアダプターを紹介しました。リングストロボはかなり高価なものだからです。しかし、それほど高価ではないものを見つけました。ファッション写真家として生計を立てるつもりはないけれど、ときどきリングストロボ効果を使いたいという方にはうってつけです。

AlienBees(エイリアンビーズ)の「ABR800」という製品で、それほど極端に重くはなく(リングストロボであるかぎり、かさばって重いのは避けられません)、$399という価格の割には驚くほどの効果が得られます(リングストロボは$1,000を超えるものがほとんどです)。ABR800を使って撮影した写真は、「デジタルフォト達人への道」第3巻・223ページに載っています。それを見ると、どんな効果が得られるかがわかると思います。


ファッション撮影用にV-フラットを使う

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ファッション写真の分野では、全身撮影や半身(3/4)撮影の機会が多くなります。その場合にあると便利なのが「V-フラット」です(芯の部分が発泡状になっている大きなパネルで、高さ約240cm、幅は90〜120cm。片面が黒でもう片面は白)。白の面を全身用の大きなレフ板として使い、被写体の側面に置くか(メインライトの反対側)、あるいは被写体の正面より少し側面にずらして置き、被写体に向けられた光の一部を反射させます。

V-フラットと呼ばれているのは、このパネル2枚をV字型にテープでつなぎ合わせて使うからで、こうして立てたパネルを必要なところに置きます。スタンドの類は必要としません。また、片面が黒なので、これをフラッグとして使うことができます(被写体に向けられたバックライトをカメラが拾い、フレアを起こすのを防ぎます)。

あるいは、黒の面を被写体に向けると、光を吸収するため、被写体に当たる光を引き締めます。上のセッティングで撮影した実際の写真は、www.kelbytraining.com/books/digphotogv3で見ることができます。

*訳注:V-フラットという名称は、あまり耳にしたことがありません。日本ではカポック(発泡スチロール)で、片面黒片面白タイプがよく使われています(昔は、木製のパネル2枚を蝶番でつなぎ合わせた黒白のパネルも使われていました)。


キャッチライトが欲しい理由

img_tech_kelby09_08.jpg SCOTT KELBY

ソフトボックスの光が被写体の目に映り込むことは知っていると思います。これは「キャッチライト」と呼ばれ、必要なものです。キャッチライトがないと、残念ながら被写体の目は生気を放たず、死んだような、生命の宿らない絶望の水たまりのようです(これは少しいいすぎですが、いいたいことはわかると思います)。

ですから、キャッチライトがあっても慌てないでください。ましてや、Photoshopを使ってキャッチライトを消そうとはしないでください。逆に、確実にキャッチライトを入れるようにしてください。そこにあるのが当然のものだからです。

次にスタジオ写真家の作品を見る機会があったら、被写体の目を注意深く見てください。どのタイプのソフトボックスを使っているか(スクエア、ラウンド、アンブレラ、オクタゴン、ビューティーディッシュなど)がわかるだけでなく、ライトの位置(正面、側面上方など)までわかるはずです。瞳の下のほうにもう1つキャッチライトが見えたら、下側にレフ板を置いて、光の一部を目に送り返したということです。じっくり観察するたびに、ライティングのミニ講習を受けているようなものです。


※この記事は「デジタルフォト達人への道」第3巻 から抜粋しています。

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スコット・ケルビー Scott Kelby

『Photoshop User』誌の編集者兼発行人。『Layers』誌(Adobe社製品に関するハウツー雑誌)の編集者兼発行人。人気ウィークリービデオショー『Photoshop® User TV』の共同司会者。全米フォトショップ・プロフェッショナル協会(NAPP)の共同創設者兼会長で、ソフトウェアのトレーニング・教育・出版会社ケルビー・メディア・グループの会長。写真家、デザイナーで、著書は50冊を超える。
・ブログ(英語) Scott Kelby's Photoshop Insider
・トレーニングビデオ(英語) Photo Recipes Live by Scott Kelby


早川廣行 Hayakawa Hiroyuki

電塾塾長/株式会社電画代表/東京藝術大学大学院非常勤講師/日本写真学会会員/日本写真芸術学会会員。デジタルフォトの黎明期から画像処理に取り組み、デジタルフォトの普及啓蒙・教育活動に努める。デジタルフォト関連の雑誌への寄稿、講演活動、書籍執筆(Photoshopプロフェッショナル講座シリーズ他多数)など幅広く活動している写真家・フォトディレクター。

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