ジュエリーのイメージカット撮影
Photo&Words: Tetsuro Takai Photo: Tetsuji Noguchi

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
日藝写真学科3年の野口哲司君。
父親がジュエリーデザインの仕事をしているということで、
今日はそのジュエリーをお借りして撮影。
野口君は翡翠の指輪と石膏で作った岩盤を組み合わせた大地のイメージ。
「ならば」とゼウス高井は空のイメージでオパールの指輪を羽に飾った。
ジュエリー協力:HIRO INTERNATIONAL

大地から生まれ出る輝石
テツジが 宝石を持ってきた 家が 宝石を扱っているらしい 家にある 宝石の雑誌 広告のページを見て 自分もこんなの 撮影してみたいと 写真の学校に 入ることを決めたらしい 宝石って 撮影 簡単じゃないけどな 持ってきたのは 翡翠 奇跡の石 魔除け お守り 撮影のセッティングを 聞いた 論理的な 構築方法だ 大地から 生まれ出る そんな感じのイメージか 反対色の赤 を使うか それとも 同系色の緑か 大地を 石膏で固め 土色にするのか 試行錯誤 やり始めた ゼウスは オパールを選んだ 創造性・感受性・美的能力を高める キューピッドストーンと言われている その光を 感じるように再現 宝石からの 訓示を聞くように 希望の石 その夢を見るように 光を探っていく テツジは 論理的 ゼウスは 感覚的 スチルライフ 作り方はそれぞれだ 撮影者の 性格も写る 撮影完成物は 無限宇宙
ライティングの組み立て

ライト:❶broncolor Striplite 60 Evolution
❷ broncolor Pulso Spot 4+Optical Snoot
❸Godox WITSTRO AD600BM+光ファイバーアタッチメント(ハンドメイド)
カメラ:Hasselbrad H5D-50 レンズ:HC MACRO 4/120 II
1/125秒 f22 ISO200

長さ60cmバーライト❶をあてる。

岩盤のひび割れの隙間にグリーンの光を滲ませる。

石膏で岩盤を作る

最適な石膏素材などをリサーチして色々と用意してきた。

底にラップを張り、ゴムバンドでしっかり留めている。




石膏屑の影を強調する。なお、今回使用したファイバーライトは、
以前この連載にも登場した新藤龍之介君のハンドメイド。

岩盤のヒビ割れから、グリーンの光を滲ませる。
フィルターの中央は丸くくり抜いてあるので、指輪の周囲のグリーンが濃くなる。


写真に時間軸を入れるリアリティ
アシスタントを 卒業して 六スタ*に出入りしてた頃 スタジオの内藤さんに “宝石の撮影 やってみないか” と言われた ちゃんと撮れる自信は まったく なかったけど やってみたい気持ちは あったので 引き受けることになった スタジオにいたときは 宝石撮影の手伝いはしたから だいたいの撮り方は わかってる 問題なのは リングをどう立てるかだ あの頃は ホワイトワックスなどなく アロンアルファで 一つずつ 固定していったから 職人技みたいに 難しい 瞬間接着剤だから もう 一発勝負 一度止めたら 動かせない 緊張感が走ったね それに 小さいけど 超高額商品 痺れる 撮影だった 次は ライティング そのころは タングステンが主流 1KW、2KWのスポットライトを使い 白 または銀レフに あてて 光を 拡散させてから ダイアモンドのカットを 拾っていく 98面を 光で再構築していくんだけど これも 難問 当時はフィルム 確認は4×5の擦りガラスファインダー さらに確認するために レンズからの空中像を ルーペで見る 目の命を削る 網膜に穴が開くような 過酷な作業なんだな 一つ一つ 光の確認と ホコリの除去 宝石撮影は 高給だけど 疲れ方が 半端ではなかった いまはもう 大分 楽になったね ホワイトワックス あるから 簡単に立てて さらに 動かせる デジタルで 確認作業も簡単 ストロボで 熱も そんなになくて ブレる心配もない ホコリがあったとしても レタッチできるしね で 今回は LED 試してみた これが なかなか面白い ハイライトも 上手く作れる 演色性もいい スイッチだけで 色が作っていける 素晴らしい あとは 何回も試してみて LED の 特徴を掴めば とっても いい仕上がりになるね 光はどんどん進化する 近い将来 生命も 育めるようになるかもね 光は命だ 光は 命の源 *六スタ:六本木スタジオ
ライティングの組み立て

❸broncolor Picolite+Picobox ❹Aputure amaran P60c
カメラ:Canon EOS 5D Mark IV
レンズ:TS-E90 F2.8L マクロ+Kenko Extension Tube/0.3秒 f8 ISO100

フルカラーLEDのライト❹で背景の色を作る。



ダイアのきらめきを出し、リング部分を描写する。

ピンセットとハサミで羽根を揃えてセッティング完了。

エクステンションチューブ(接写リング)を付けて撮影。

LEDパネルライトを使用。前面は黒ケントで照射範囲を調整。
バリエーション


それに合わせ背景用LEDのカラー調整で背景を青にした。
高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
twitter.com/TetsuroTakai
コマーシャル・フォト2023年3月号記事より
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