2021年07月09日
何もない宇宙の始まり
創造主ゼウスのように
光を操って宇宙を 創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界 楽しい夢

高井哲朗が主催する「ゼウスクラブ」。月に2、3度は集まって、写真のアイデアやライティングを研鑽している。
今回は鉄道写真を撮り続けている朗くん(今年、大学を卒業して4月からスタジオ勤務)と花の撮影。LEDライトで新たな花の表情を引き出す。
きょうは お花 あるから
好きなように 撮ってみなよ
朗くん さぁ 鉄ちゃん だから
スタジオ撮影 あんまり やらないよね
きょうは お花 あるから 好きなように 撮ってみなよ
たぶん ストロボじゃ コントロール できなさそうだから
LEDライト 用意したからさ
――ありがとうございます
いいですね LED 見た目にわかりやすくて 明るいし 最高です
外だと 自然光で いい感じだったら そのままに写せるけど
スタジオだと 全て 作らないとダメだから難しいです
まぁそうだな 鉄道写真みたいに
いい風景を探し
いい光が来るのを待って 切り取るのと
何もないスタジオから
全てを作るのは ずいぶん違うからね
でも 光は どこからあてても 写るから 自由にやればいいんだよ
花のどこを 写したいか ということと 何を表現したいか
それさえわかっていれば 大丈夫だよ
例えば 花の形状 バッチリ 出したかったら
直射光を使い メリハリのある表現をする
花の柔らかい表情出したい時には 拡散光で 影が濃くならないようにする
よく見ながら 光の位置を決めればいいよ
大事なことは
何を表現したいか だけなんだから
Ph.1 / 2のセット

特殊偏光ガラスとナングレアガラス(無反射ガラス)を重ね、そこに花を置き、真俯瞰からの撮影。特殊偏光ガラスは光の角度によって、ブルーからイエローに変化する。
ライト:❶Aputure 120D II ❷broncolor LED F160+SoftBox 60×60 ❸Aputure 300X+Spotlight Mount
カメラ:Canon EOS 5D Mark II/レンズ:EF50mm f/2.5 Compact Macro/1/30秒 f10 ISO800

ライト❶+❷/乳白アクリルボードの後ろからブルーのゼラチンフィルターを付けたLEDライト(ライト❶)で全体の明るさを作る。メインライトはサイドからLEDのバンクライト(ライト❷)。拡散光で柔らかな表現。

ライト❶+❸/ライト❶はPh.1と同様。斜め手前からLEDスポット(ライト❸)による直射光表現。

Ph.2の撮影の様子。奥からの乳白アクリル越しのライト❶+左手前からのスポットライト❸でライティング。

ナングレアガラス(上)と特殊偏光ガラス(下)は4cmほど隙間を空けて重ねている。

特殊偏光ガラスは薄いイエローのコーティングが施されているが、光の角度によって、ブルーの光を反射する。
花なんて な 撮るもんじゃないよ
まだまだ な なんて 言われちまった
花なんて な 撮るもんじゃないよ
まだまだ な
なんて 言われちまった
花は 誰でも手軽に撮れるし
写ったものは どれでも 美しく 撮れてしまうからかな?
風景写真みたいに 撮れば 写ってしまう 自然の完成形 だからなのか?
花はいつも芸術としての モチーフ 誰でも撮っている
カール・ブロスフェルト
植物のプロダクト
アービング・ペン
命の造形美
ロバート・メープルソープ
エロスの輝き
ニック・ナイト
知性の形象
どれも 美しい作品が並ぶ
花を撮るときは 何を考えてるんだろう
あるときは 禅問答のように 問い 答えの やりとり
数学的に 構図 バランス 光の研究
よく見て たくさん観察して 美しい形を探す 愛でる
外見からの美 イメージの美 デッサン クロッキー
脳内の記憶の泉から 物語を呼び起こし 2次元に定着させる
写真の大先輩は問う
――写真を哲学しろ 写真の原点を考えて 自分を感性の伝達者と思え
俺の写真論は 卵だ なんてね
完全と言える 造形美追求 モダンデザイン バウハウスだな
ベッヒャー トーマス・ルフ 写真が拡張していく
写真って何? そんなこと 考える
仕事としての スキル
ビジネスとしての 職業的訓練
心の豊かさのための 自己研鑽
あらゆること いろいろ考えて
花と対話する 嬉しさ
スチルライフは
夢の 楽園世界の建築なのさ
Ph.3のセット

ライト:❶broncolor LED F160+Standard Reflector P70 ❷Aputure 300X+Spotlight Mount
カメラ:Canon EOS 5D Mark II/レンズ:EF50mm f/2.5 Compact Macro/1/30秒 f10 ISO800
※画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示
標準リフレクターを付けたLEDライト❶は、前面にトレーシングペーパー、ブルーのゼラチンカラーフィルターを貼り、花の横、やや手前から照射することで、花と背景の乳白アクリルボードに色を付けている。スポットライト用ユニットを付けたLEDライト❷で、光を絞って花の中心のみを照らす。

LEDライトAputure 300Xにフォーカシングレンズが内蔵されたスポットライト用マウントを装着して使用。

レンズスポットのため光が拡散せず、滲みのないシャープな投光が可能。

スポットの照射角度は自在に調整可能。照射角度を大きくしても、背景のアクリルボードにあたる光は、レンズの画角から外れるため、❷のライトだけでは背景が暗く落ちる。

花の横からのサイドライト(ライト❶)は、標準リフレクターにトレペとカラーゼラチンフィルターを重ねて、花と背景(乳白アクリル)の色を作る。周辺の花弁はフィルターの色が乗ってくるが、ライト❷のスポットがあたる部分は本来の色味が残る。


ライト❶のフィルターカラーを変えることで、周囲の花弁の色と背景の色が変わる。写真上段左がフィルター無しの花本来の色。上段右はカラーフィルター:レッド。下段左はカラーフィルター:グリーン。下段右がカラーフィルター:ブルー。

高井哲朗 たかい・てつろう
1978年 フリーとして活動開始。1986年高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
※この記事はコマーシャル・フォト2021年7月号から転載しています。
- 第12話「江藤くんが高そうなバッグを持ってスタジオに遊びに来た」
- 第11話「龍之介くんが二十歳の記念に買った革ジャンが本日のお題」
- 第10話「ナカムラさん、チョコレートをもらったから、撮ってみよう」
- 第9話「うさだだぬき こと 稲田大樹さんの写真集を写真する」
- 第8話「永井くん、マドレーヌの撮影だからフード撮影の基本を見せてよ」
- 第7話「緒方くん 今日はミネラルウォーターを撮るよ」
- 第6話「まりちゃん 今日は靴を撮るって言ってたよね」
- 第5話「みやこさん、コップと水だけで『しゃしん』してみてよ」
- 第4話「怜くん、光沢のある被写体は乳白アクリルのグラデを映し込むんだ」
- 第3話「朗くんは、スタジオで花を撮ったことがある?」
- 第2話「BOTCHANという名前の化粧水 桜子さんなら、どう撮る?」
- 第1話「いとちゃん、今日はカットグラスを撮ってみよう」