
人気Vシネマシリーズ『日本統一』の10周年記念スピンオフ映画として、6月6日劇場公開された映画『田村悠人』。
シリーズ屈指の人気キャラクター・田村悠人を主人公に据えた本作は、迫力あるアクションと陰影を帯びた人間ドラマで、『日本統一』ファンを中心に大きな注目を集めた。
そのU-NEXT公開にあわせて発表されたのが、メイキングドキュメンタリー映像『田村悠人 THE BACKSTAGE』。
スチール撮影のほか、映像撮影、インタビュー収録、編集までをすべて一人で手がけたのが、フォトグラファーの三戸建秀氏だ。
約1時間におよぶ長尺映像は、メイキングの枠を超えた“もう一つの作品”と呼ぶにふさわしい密度を備えている。
撮って、聴いて、構成する。
スチールカメラマンの“ワンオペ現場”力
映画本編では、主演の山口祥行さんによる激しい肉弾戦や銃撃戦など、派手なアクションシーンが見所となっており、メイキング作品『田村悠人 THE BACKSTAGE』では、その緊張感あふれるアクション撮影の裏側を間近で捉えている。
メイキング映像のほか、三戸氏自らインタビュアーとなり、監督や俳優たちに話を聞くなどインタビュー収録も並行して行う、まさにワンオペの極みといえる制作スタイルだ。
使用機材は、キヤノン EOS R5(スチル用)とR5C(ムービー用)の2台体制。
レンズはそれぞれ、スチルにはカールツァイス オータス、ムービーにはRFのズームレンズを使用し、静止画と動画の垣根を超えて“現場の温度”を切り取っていく。

「本編では戦ってるシーンは全部モノクロなんです。だからメイキングではカラーで、違う角度から見えるのがファンにとっては嬉しいかなと。迫真のアクションシーンがどう撮られてるかって気になりますよね。現場もかなり実戦さながらの迫力でした」。
三戸氏の言葉からは、裏側をただ撮るのではなく、“もう一つの視点”として届ける意識が明確に伝わってくる。
“もう一つの物語”として見せるメイキング
『田村悠人 THE BACKSTAGE』は「アクション」「ドキュメント」「インタビュー」など複数のブロックで構成され、音楽やスローモーションの演出も随所に取り入れられている。全体で約1時間におよぶ長尺映像は、単なる舞台裏の記録を超えた、一種のドキュメンタリー作品として成立している。
三戸氏は本作に関わる以前から、ドキュメンタリーという形式そのものに親しんできた。
「ビートルズのドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』や、マイケル・ジャクソンの『This Is It』のような作品はすごく好きで何回も観ました」という。
NY時代には師事していた画家・千住博氏がNHKのドキュメンタリー撮影を受ける現場に立ち会う機会があり、映像制作の現場を間近で見る経験を重ねた。また、もう一人の師である宮本敬文氏が撮影した、写真家・操上和美氏のドキュメンタリー映画『THE MOMENT 写真家の欲望』の制作にも関わるなど、映像を通じて人の営みや集中力を捉える現場に数多く立ち会ってきた経験が、本作の制作にも生かされている。
「本編では細かくカットを割ってるようなところも、メイキングではあえて切らずに流れを見せたり。自分が“かっこいい”と思った瞬間は、そのまま撮り続けました」と三戸は語る。
視点の置き方にも特徴がある。本編では映らないような画角で、時には本編カメラのさらに前へ出ることも。
“あのシーン”が別のアングルで見られるというファンにとって嬉しい視聴体験も意識したという。
張り詰めた緊張感、俳優たちの集中力、現場スタッフの気迫。
三戸のカメラはそれらを逃さずとらえ、映画『田村悠人』の裏側に、もう一つのドラマを描き出している。
ファンにも、映像制作者にも観てほしい“現場の熱”
「主演の山口さんやシリーズ主演で総合プロデューサーでもある本宮泰風さんをはじめ、大人の“漢”達が、本気でぶつかりあって、何かを作っている姿に熱くなりました。50歳を超えてからこんなにもキラキラするものなんだって感動すらしました。
僕はアーティスト写真やMVなど音楽の世界でも撮ってきましたが、ライブってステージの“下”から撮るんですよね。
でも映画の現場では、役者が怒鳴って、汗まみれになって演じてる様子をものすごく近い距離で、真正面から撮れる。音楽の仕事だとそんな機会、なかなかありません。
役者さんの顔を本当に撮れるのって、やっぱり演技中だと思うんですよね。取材でのポートレイト撮影にも魅力はあるけれど、演技中のあの熱量は出ない。
映画の現場には、集中力も熱もすべてが違う“役者の顔”があります」。
三戸が見つめるのは、“現場にしか現れない顔”。
その瞬間を、フォトグラファーとして、また、キャメラマン兼ディレクターとして、すべて一人で記録した。だからこそ、この作品は「究極のポートレイト」と言えるのだ。
「『田村悠人』の撮影に関わって、山口祥行さんの生き様に触れられた気がします。連日のハードなアクションシーンや、撮影が中止になりかけるようなアクシデントも乗り越えて、満身創痍で作品を作り上げていく山口さんの姿は本当に美しかったです」(三戸)。
プロフィール
三戸建秀(さんのへ・けんしゅう)
大学卒業後NYへ渡り、日本画家・千住博氏、写真家・宮本敬文氏に師事。独立後は人物撮影を中心に活動し、LEICAでのヌード作品展示などの写真展開催も積極的に行っている。
Web:https://kenshupix.com
Instagram:@kenshupix
作品概要
映画 『田村悠人』 (本編+特典映像「田村悠人 THE BACKSTAGE」)
U-NEXTにて配信中!
https://video.unext.jp/title/SID0213609
監督:辻裕之
アクション監修:坂本浩一
脚本:村田啓一郎
出演
田村悠人:山口祥行
河原崎和也:田島亮/山村義明:川﨑健太/中島勇気:舘昌美/坂口丈治:北代高士/斎藤浩樹:勝矢/川上章介:中澤達也
石沢勇将:本田広登/宇垣竜次:岸田タツヤ/翁長照邦:喜矢武豊/有森英二:神保悟志
氷室蓮司:本宮泰風

写真の現場でも「動画も撮れること」が求められる今、フォトグラファーが直面するのは“ワンオペ”での映像撮影。本特集では、ディレクション・撮影・編集まで一人でこなす映像制作者たちに取材。ミュージックビデオ、CM、ウエディング、プロモーション映像など多様なジャンルの現場から、少人数制作のリアルな工夫とノウハウを紹介。すでにワンオペ映像撮影を始めている人、これから挑戦したい人に向けた特集。
出演 加藤マニ/三戸建秀/Shuma Jan/ヒガテツヤ
Blackmagic Camera (Application for smartphones)/DaVinci Resolve 18 Special Interview
Kroi「Method」 木村太一(ディレクター)・西田賢幸(カラリスト)・内田誠司(DIT)
【FEATURE】
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