写真展レポート 須藤絢乃「MISSING」

写真家・須藤絢乃氏の新作展示「MISSING」が、12月22日 (日)までMEMで開催中。


須藤氏は「自分ではない誰か」への強い憧れをもとに、人形遊びのように衣装や化粧でなりたい姿を撮影した《Metamorphose》や、失踪した少女たちに扮するシリーズ《幻影 Gespenster》を発表。セルフポートレートという手法ゆえ、作品よりも“須藤絢乃”自身が注目されてしまうことに違和感を覚えしばしその手法は封じていたが、今回は約10年ぶりの発表となった。

今回のシリーズの発端となったのは中川比佐子という女性との出会いだった。須藤氏が敬愛する画家・金子國義氏に関する作品に取り組むにあたり調査していると、ここかしこに中川比佐子の面影を感じた。しかし彼女は1995年を境に表舞台から姿を消し、消息は明らかになっていない。須藤氏は中川比佐子への興味を、自身と同化することで彼女の思いを探ろうとした。

そのほか、ゴシック・ロックバンドのボーカリストや国際指名手配犯など、意図的/不慮の事故などによって忽然と姿を消した女性9名に扮する。須藤氏の体型にあわせて特注した衣装もある。「彼女らが身につけていた衣服を実際に身につけることでより彼女たちに近づくことができた」と須藤氏は語る。

「MISSING」シリーズは今後も続けていくシリーズだと須藤氏。「今回の対象は30〜40代。今の自分の年齢に近い方々です。これから年齢を重ねることで、もっと上の年齢の方に扮することができる」。髪を染め、あるいはばさりと切り、眉毛を剃る。須藤氏は筆で絵を描くように、自分という存在を使って表現をしている。それがどれほどの“力”を必要とするのかは想像だにできない。

作品に対する須藤氏の思いは《Metamorphose》や《幻影 Gespenster》から変わらない。煙のように実体がなく、今はどこでどうなっているかわからない、数十年前の姿しか残っていない彼女たちの存在を今に繋ぎ止めることだ。須藤氏を通して、出会ったこともない彼女らに思いを馳せ、対話する。

トークイベント
日時: 12月20日(金)18:30〜
登壇者: 椹木野衣、須藤絢乃
会場: MEM
参加費: 1200円
定員: 20名・要予約
https://mem-inc.stores.jp/?category_id=60e54f22ec877104ffa39eaf

須藤絢乃「MISSING」
日時: 11月30日〜12月22日(月)
13:00 – 19:00 [12月20日はトークイベントのため観覧は17:30まで]
会場: MEM

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