10月30日、佐藤勝利(timelesz)初のソロ写真集『A Bird on Tiptoe 』が発売となった。撮影は石田真澄氏。

撮影を担当した写真家・石田真澄氏が見つめたのは、アイドルではない、ひとりの青年としての佐藤勝利だった。
SNS用の短時間の撮影から始まり、雪の夜の公園や友人宅での即興的なセッションを経て、リスボン、台中へ。
生活の匂いが漂う光と空気の中で、被写体の“ただそこにいる”姿を丹念にすくい取っていった。
写真集『A Bird on Tiptoe』は、約1年半にわたる撮影を通じて、石田氏が捉えた佐藤勝利の時間と存在の記録である。
――企画の発端について教えてください。
石田 勝利さんとは、2019年に雑誌撮影の仕事でお会いしたのが最初で、Sexy Zone のカレンダージャケット、会報の撮影でも何度かご一緒していました。2024年1月、のちにtimeleszとなる3人が同時にInstagramを開設するタイミングで、投稿用の写真を撮ってほしいと依頼をいただき、葛西臨海公園でミニ撮影をしたのがこの写真集の発端でした。
それから1ヵ月後、都内に雪が降った日の夜に20~30分程度の撮影をしたのが2回目。それからさらに3ヵ月後、大和くんという知り合いの編集者の自宅で3回目の撮影をしました。
勝利さんと大和くんは同い年で意気投合したこともあって、打ち合わせをした際に紙に残せたらいいねと話をして、企画書を作成してマネージャーさんに提案しました。
―― ロケ地について教えてください。
石田 東京と関東近郊にくわえ、リスボンと台中で行いました。今までの撮影が即興的な場面も多かったため、海外ロケでは少し余裕を持って、見たことのない景色を楽しみながら撮影したいと考えました。そういう意味で言うと、東京から離れていれば場所はどこでも良かったんです。そのため、いわゆる観光名所での撮影はほぼなく、市場やスーパー、生活感のある場所が中心になっているので、建物や植物を見て初めて異国だとわかる程度になっていると思います。
佐藤 それぞれの場所でしか撮れないものがありました。単にロケーションということだけでなく、目に見える光や目に見えないものまでもが影響していると思います。具体的に言うのは難しいですが、それが写真の奥深いところだなと思いました。
―― リスボンを選んだ理由は?
石田 勝利さんは長年表舞台に立つ仕事をされているけれど、本人は日々の生活をとても大切にしていて、誤解を恐れずに言うと、とても“ 普通の人” だというのが、お話をする中で感じていた印象でした。そのため、ロンドンやパリなどの華やかな街ではなく少し田舎の方が合いそうだと思ったんです。手作りのものや体験を好み、料理や食事にも関心があるという点から、あまりメジャーではないけれど街並みがきれいで水辺があり、食事もおいしいポルトガルのリスボンを選びました。
佐藤 印象的だったのは、リスボンで有名なエッグタルトです。出来立てあつあつのものを食べられるお店に行ったんですが、現地の人が頼んでいたエスプレッソを真似して、それも一緒に。最高においしかったです! シナモンをかけると
さらにおいしいことも知りました。
―― 台中はいかがでしたか?
石田 台湾は私も仕事や展示で何度も行ったことがありましたが、訪れたことのなかった台中を選びました。アジアらしい独特の湿った雰囲気があり、多少肌の露出があっても過度に色気を感じさせないため、勝利さんらしさを生かせる場所なのではないかと思いました。雑味のある服装やアースカラーを用いると、体格の良さや色気が出るよね、と衣装も担当してくれた大和くんと話していました。台中での撮影は、彼の等身大の姿を捉えることができたと感じています。
―― 撮影で工夫・意識されたことは?
石田 勝利さんはどんな状況でも成り立つ端正な顔立ちだなと何度撮影しても新鮮で驚きます。ただ、今回長期にわたって撮影することになり、もっと違った見たことのない表情や瞬間を収めたいと思いました。旅先の撮影ではいつも通りあまり指示を出さずドキュメンタリー的に、東京で様々なシチュエーションで撮影する際はこちらから細かい要望を伝えて動いてもらうようにしました。
佐藤 僕としては、今回の撮影では基本的には“ ただそこにいる” ように意識していました。そして素直に感情を出すことも大事にしていましたし、ふざける時は徹底してふざけることを心がけていました(笑)。
―― 石田さんが他のフォトグラファーと一線を画すと感じられるところは。
佐藤 作為的じゃないというか、そこにあるものをただ切り取ってくれる写真家さんだと感じています。ありのままを撮ってくれるので、自分自身を肯定してくれている感じがして、被写体として、純粋に嬉しいんですよね。
石田 勝利さんは不思議なくらい、いつまでも少年のように見える方です。また、意見にきちんと一本筋が通っているところをとても尊敬していますし、現場の雰囲気や目的、方向性をとてもよく理解してくれていて、チームで何かを作る際のバランス感覚が素晴らしいです。
そんな人間的で表情豊かな魅力を伝えられるような一冊にしたいというのが、私と大和くんで話していたことです。今
まであまり見たことがないような様々な姿や表情、雰囲気、少し中途半端な顔なども含めて詰め込みましたし、勝利さんのも重要なポイントです。
―― ものづくりに対する想いを綴った文章が印象的でした。勝利さんにとって“ つくる” ことのルーツとはなんでしょうか。
佐藤 父の影響が大きいですかね。プラモデルやラジコンが好きで、仕事では建設に携わっていました。そんな父の姿を見ていたので、僕の小さい頃の夢も自動車を作ることでした。ものを作る上で大切にしていることは、関わってくれる人を大事にすることと、嘘をつかないようにすることです。
―― 写真集の構成・編集について。
石田 全体を通じてひとつのトーンに固めるというより、撮影しながら調整していく形でした。リスボンと台中では流れるような“ 暮らし” や“ 生活感” を意識し、東京では車に乗っている姿など、いわゆる決めカットを押さえています。その結果、写真集では様々な側面を見せることができたと思います。

―― 写真のセレクト作業について。
石田 タレントの写真集ということはもちろん前提に、アートブックのような雰囲気を目指しています。セレクトは、私と大和くん、デザイナーの村尾雄太さん、編集の河田さんで行いました。たまに勝利さんにも写真を見てもらいましたが、編集作業は基本的に一任してくれました。約1年半分の写真をA4でプリントし、粗くセレクトしたのちに4人で抜き差しを繰り返しながら選定。膨大な量の写真があったので、かなりの時間を要しました。
―― お気に入りの写真は?
石田 「通常版」の表紙のカットです。あとは、リスボンの写真も全体的に好きです。物寂しさを感じるような表情に引き込まれます。村尾さんに「リスボンの写真だけ眠そうだよね」と言われたのですが、時差ボケなどもあり力が入っていなくてとても良い表情でした。浮き足立っているというか、どこか地に足がついていない感じで、とてもいい雰囲気に撮れたと思います。
―― 写真集のタイトル『A Bird on Tiptoe』の由来を教えてください。
石田 撮影中、勝利さんに対して「動物的だな」と感じる瞬間が多々ありました。表情がコロコロ変わったり、何も喋らないかと思えば、口ずさんで歌っていたりと、動きにコミカルさを感じることがあったんです。ただ、動物といっても、犬や猫のイメージではありません。それで思いついたのが、“ 鳥” でした。鳥が歌ったり、ちょこちょこと走ったりしているイメージです。そんなタイミングで、偶然にも本人から「最近、鳥の巣箱を作った」という話を聞いたので、自然と鳥というモチーフが彼に結びついたのかもしれません。さらに、彼を撮っている時、「まっすぐ立っているけれど、どこか揺らいでいる」と感じることがあり、その姿がつま先立ちの鳥に重なったため『A Bird on Tiptoe』というタイトルになりました。
―― 最後に、この写真集への思いを教えてください。
石田 一般的な写真集はロケ地などがあらかじめ決まっていることが多く、もちろんそれが正しい流れであることは理解しています。ただ、今回はディレクションからしっかりと携わることができ、勝利さんはもちろん、編集の大和くんとみんなで意見を交わして作り上げることができました。勝利さんとも「何かを作ること」について、しっかり話すことができて良かったです。1年半ほど一緒に撮影して、この写真集にはたくさんの勝利さんが写っています。もちろんそれでもまだ一部に過ぎず、知らない一面のほうが多いのは当たり前のことですが、それこそがとても大事なことだと思っています。
佐藤 この写真集を見て、飾っていない自分も良いんじゃないかなと思えるようになりました。自分自身を愛せるようになった気がします。これからもこの写真集を心の盾にして、生きていこうと思います(笑)。
(テキスト:安倍美和)
プロフィール
いしだ・ますみ
2017年初個展「GINGER ALE」を開催。2018
年初写真集『light years ‒ 光年-』を刊行。そ
の後、様々な雑誌や写真集、ドラマ・映画のス
チール撮影、広告など幅広い撮影を手がける。
さとう・しょうり
1996年10月30日生まれ、東京都出身。
STARTO ENTERTAINMENT 所属。アイドル
グループ・timelesz のメンバー。2011年11月、
シングル「Sexy Zone」でメジャーデビュー。俳
優として、ドラマ・映画・舞台などでも活動。

上がファンクラブ会員限定版、下が通常版。「限定版の写真ページには片面が光沢、片面がマットのエスプリという用紙を選んでいます。テキストページには、少し黄色みがかったわら半紙のような風合いのモンテシオンを使用し、写真とテキストのページで質感を変えています。表紙は空押し加工で、上質な仕上がりを実現しました」(石田)。
佐藤勝利氏の29歳の誕生日に発売ということもあり、SNSでも佐藤氏の自然体の姿や写真の質感に癒されるなど多くの優しい声が上がっている。
佐藤氏の純粋な姿が石田氏によって切り取られた写真と共に、細部までこだわり抜かれたこの一冊を1ページ1ページずつ温かい気持ちと共に堪能していただきたい。
書籍情報
『A Bird on Tiptoe』
発売日:2025年10月30日(木)
仕様:ファンクラブ会員限定版/ B5 変型
(H233× W174mm)・上製本・320ページ
通常版/ B5 変型(H233× W174mm)・並製本・
320ページ
※ファンクラブ会員限定版・通常版共に、本文
の内容は共通。
価格:ファンクラブ会員限定版・通常版ともに
5,500 円(税込)
発行:MCO
この記事はコマーシャル・フォト2025年11月号の記事からの抜粋です

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