進化を続けるアドビの革新的機能に迫る特別企画。今回はクリエイターチーム、コントラスト&むすびから小暮和音氏、小柴託夢氏、川村将貴氏、浦川紗琳奈氏にご登場いただき、どのように使っているか、またどのような革新的な進化を遂げているのか、紐解いていく。
——まず2023年を振り返り、どのような1年でしたか?
小暮 コントラストに仲間が増えたことは大きな変化ですね。コントラストの強みは、撮影から納品まで一括で制作できるという点。2023年で言うと、日本ロレアルのお仕事など、むすびとコントラストのワンチームでできた仕事は印象的です。弊社は僕がアマナ出身で、小柴が博報堂プロダクツ出身という珍しい融合ですし、僕と川村の得意な撮影分野も違うので、そういう意味でバランスの良いメンバーが揃いました。
浦川 むすびはもともとクオリティとアイデアに定評のあるグラフィックとWebの会社で、去年に動画メンバーもジョインし制作できるコンテンツの幅が広がりました。動画メンバーの多くがTVCMの制作会社出身で、その後IT企業でSNS分野に携わってきたので珍しく経験分野の広い会社かもしれないですね。グラフィック、Web、映像がワンストップでできて楽しいことが大好きなメンバーが揃いました。
AIをうまく使うことで、ランダム感を生み出す
——そんな4人に今回は、“革新的”進化を続けるアドビ製品の活用方法というテーマでお話お伺いできればと思います。まずはPhotoshopの進化についてです。
小柴 新機能の「生成塗りつぶし」は衝撃的でした(笑)。「AIがここまで進化しているんだ」と。AIの進化によってかなり効率アップ、時短につながります。手作業で背景を新たに作成しようとすると、コピペ感が出てしまいがちですが、「生成塗りつぶし」を適用することで、いい感じにランダム感を残した自然な背景を作ることができるのがすごいですね。
小暮 解像度が足りないところは粒子やシャープネスでうまくカバーしつつ作り上げていけるのは、レタッチ技術のあるレタッチャーならではかもしれないですね。AIとレタッチ技術をうまく組み合わせることで、仕事でも活用できそうです。
小柴 少し前に小暮と一緒に受けたお仕事で、スタジオで撮影した横位置想定の物を急遽、縦位置で作らなければならなくなったことがありました。そういう時に「生成塗りつぶし」だと、ここまで欲しいと選択するだけで、すぐに伸ばしてくれてありがたかったですね。他に使っていてすごくいいなと思ったのは、例えば「黒背景玉ボケ」とテキスト入力すると黒い背景の玉ボケ素材をいくつか表示してくれて、そこから使いたいものを選択した後に描画モード・スクリーンに変更すれば、簡単に人物にも組み合わせられるんです。コンテキストタスクバーというのが最近追加されて、今自分がしている作業と関連性の高い次の作業が表示されるのでとても助かっています。その中でも自動で被写体を認識して選択範囲を取ってくれる、「被写体を選択」はどんどん精度が上がってきてるように感じます。実際の撮影現場だと、レタッチャーにかかるプレッシャーって大きくて(笑)。「5分以内にすぐ背景と合成して見せてくれない?」という要望もあったりするので、操作数を減らせるのはだいぶありがたいです。どんどん精度が上がることで、仮合成の段階でもクオリティの高いものをクライアントにお見せできるようになります。
川村 僕も同感です。人物と背景を別々に撮影して合成するような場合、現場で簡易合成して人物が背景に馴染むかどうかを見ながらライティングを調整することはよくあることなので、正確で早くできるのはとても助かりますね。
——近年では、スチールはもちろん、映像系のお仕事の機会も増えたのではないかと思います。Premiere Proの使用についてはいかがでしょう。
川村 使用したきっかけは友人の結婚式のムービーを作る時ですね。「フォトグラファーだし、動画も撮れるでしょ」みたいな(笑)。案外、そういう機会に使い始めるフォトグラファーも多いと思うんですけど、使い方も簡単で編集しやすいなと思いました。
小暮 僕の場合は「どういう風にこの映像が繋がったら気持ちいいか、どんな素材を撮影したらいいか」をテストする時に、既存の動画を切って貼ってVコン(ビデオコンテ)を作っています。
浦川 私はプロデューサー職なのでエディターとして編集することはできないんですけど、お客様によってはそこまでコストをかけられない案件もあるので、その場合は簡単なインタビュー動画などは自分で編集しています。あとは、自社の広報としてストーリーズでアニメーション投稿をしていて、そのイラストを動かすのにもPremiere Proを使っています。
“革新的”進化によって生まれた「時短」「手軽」という恩恵
新機能により作業効率アップと正確性の両立が可能に
——映像のお話が始まったので、ここからはアドビの担当者にもご説明をいただきつつ、新機能に触れていければと思います。
アドビ 2023年に実装された新機能「文字起こしベースでの編集」。こちらは使っていらっしゃいますか?
浦川 これはもう、とても便利です。やっぱり動画のテロップを作る作業はすごく大変で。今までは「この辺りが良いだろう」と思う部分をざっくり切ってから作業をしていたんですけど、「文字起こしベースでの編集」は先に動画の文字起こしをしてくれるので、その文章を見てから「ここを抜粋しよう」と、作業順も変わりましたし、何よりも誤字・脱字のチェックが早くなりました。映像の中にある文字は雰囲気で見てしまいがちなので、実はすごく見落としやすくて…。作業スペースの左側に文字だけが羅列されるので、間違いも見つけやすくなりました。
アドビ 精度の面ではいかがですか?
浦川 音声だと、聞き取りづらくて自分で聞いてもわからない時があるんですけど、AI にはそう聞こえているんだというベースがあるだけで推測しやすかったりするので、そういう意味でもかなり正確だとは思います。
アドビ 「フィラーワード検出」という機能があるのですが、すでに使用されましたか?
浦川 言葉の間に「あー」「えー」と入れる方もいらっしゃるので、そこを切ることで不自然さが出てくることもあるとは思いますけど、その辺りは手動でちょっと調整すればいいので効率的ですよね。
アドビ 他に気になる機能はありましたか?
小暮 音に関して「オーディオリミックス」機能があるんですよね。
浦川 これ、ありがたすぎて(笑)。映像制作でいうとオフライン試写の時に何曲か当てて出すんですけど、「違う音楽を試したい」というリクエストがその場であった際、音楽が続いているのに、映像が先に終わるということになりやすいんです。それを瞬時にリミックスしてくれる機能は本当にありがたいです。現場での対応もすごく早くなるんじゃないかなと思います。
川村 普通は修正するのにけっこう時間ががりますよね。
浦川 あと、もらい素材の際に、最近はスマートフォンでHDRを設定して撮られる方もいて、どうしても色調整が難しく、大苦戦したことがありました…。
アドビ HDRからRec.709 にリマップする機能はご好評をいただいている機能です。また、他におすすめの機能は、朝撮ったものを夕焼けにしたいという希望があった時に、リファレンスの夕焼けがあればその色に合わせる…という「カラーマッチ」という機能があります。
小暮 すごい便利ですね!
川村 動画だと、色が一番気になりますよね。
「Premiere ProやAfter Effectsに慣れていないフォトグラファーも動画に挑戦しやすい。その挑戦しやすさはとても大事だと思います(小暮)」
アドビ After Effectsも年々進化を続けています。最近だと「ロトブラシ」機能。AIの力も借りて、例えば人物を始めとした被写体の選択やトラッキングの精度がかなり上がりました。
小暮 動画で精度高くマスクしてトラッキングまでできるなんて本当に信じられないよね。
浦川 手軽に切り抜き合成した動画が作れるなら、コンペで披露するVコンにも活かせるので心強いですね。そのほうがお客様にも伝わりやすいですし。
小暮 クオリティも上がりそうです。例えば、商品が回転している映像でもこの機能で気軽に背景の色の変更を試せる可能性があるよね。
浦川 撮影コストの削減にもなりますし、あと! グリーンの衣装が気兼ねなく着られるかも(笑)。グリーンバックだと綺麗に抜きやすい、という話ですが、ビューティ系の案件の場合、グリーンバックやブルーバックだと肌に影響することが結構あります。本当は白バックで撮った方が肌色は絶対綺麗なのに…という時にロトブラシの向上は助かりますよね。
アドビ また、Frame.ioという共同作業ツールを使うと、編集した動画を書き出しせずにPremiere Pro経由でクライアントへのレビュー用にアップロードすることができます。
小暮 レビューの効率化ももちろんのこと、修正前と修正後を比較して見ることができるのは良いですよね。編集の違いって場合によってはわかりづらいこともあるじゃないですか。文字をちょっと小さくしたとか、少し色味を変更したとか。
挑戦のしやすさは大事! 見ているだけでワクワクする
小暮 様々な機能の説明を聞いて、アドビの革新的な進化に驚きました。そして使用者目線で考えると「時短」「手軽に操作できる」という印象を受けました。このような機能があることによってあまりPremiere ProやAfter Effectsに慣れていないフォトグラファーも、動画に挑戦しやすいですよね。その挑戦しやすさはとても大事だと思います。新機能って、なかなか手を出しづらかったりするんですけど、説明を聞くととてもワクワクして早速使いたくなりますね。
浦川 「自分事」にできなくて腰が重くなっちゃうのはもったいないと思いました。
——最後になりますが、コントラスト・むすびの、来年の展望はいかがでしょう。
浦川 むすびは今年Web、グラフィック、動画のメンバーが揃ったので、来年はチームとしての案件をより一層充実させていきたいです。動画を使ったプロモーションでいうと、縦横比が年々大きく変わってきています。セーフティゾーンもメディアによってが全然違うのでそれぞれの比率に合った動画の作り方が必要なのです。いつも新しいものが出てくるので常に勉強と挑戦といった感じです。
川村 色んな方にコントラストという会社を知ってもらうという意味で、写真展をやってみたいですね。それぞれフォトグラファー、レタッチャーとして色々な人に出会うことが大事だと思っています。スタジオで写真展とかができればコントラストのことはもちろんTOGU STUDIOのことも知ってもらえますね。
小暮 コントラスト・むすびとしては、それぞれ個人で強いメンバーが揃っていて、得意なことが違ったりもするので、それぞれの得意なことをもっと伸ばして、ワンチームになることで更にぐっと底上げ、そんな形で攻めていけたらめちゃくちゃ楽しいのかな、と。もっといろいろな方とお仕事をして「なんかいいよね、あの会社」という口コミ、評判のいい会社・チームになれたらと思います。
【出演者PROFILE】
小暮和音(こぐれ・かずね)
フォトグラファー。1990年 東京生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。アマナグループVda入社。吉田明広氏に師事。2014年 PARADE設立と共に参加、坂本覚氏に師事。アマナグループから独立後、小暮和音写真事務所を設立。2019年コントラスト(CONTRAST Inc.)を設立。
小柴託夢(こしば・たくむ)
レタッチャー。1990年 東京生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。博報堂プロダクツ REMBRANDT入社。2022年博報堂プロダクツ REMBRANDTから独立後、コントラスト(CONTRAST Inc.)入社。
川村将貴(かわむら・まさき)
フォトグラファー。1993年 北海道生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。2017年小暮和音写真事務所に参加し、小暮和音氏に師事。2020年アマナグループに所属、青山たかかず氏に師事。2023年 コントラスト(CONTRAST Inc.)に入社。
浦川紗琳奈(うらかわ・さりな)
プロデューサー。1990年 東京生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業後、ティー・ワイ・オー入社。2017年3ミニッツ入社。2022年むすび入社。
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