キヤノン RF20mm F1.4 L VCM で撮り下ろす スチルライフの世界

広角レンズは「広く写す」だけにとどまらない。被写体と背景の関係を再構築し、見る者の感覚を揺さぶる豊かな視覚体験を生む手段だ。

コマーシャル・フォト8月号 特集「広角表現の可能性」では、4名のフォトグラファーが16mm、20mm、24mm、28mmの焦点域でそれぞれ撮り下ろし、ジャンルを超えたアプローチを試みた。


この記事では、EOS R5 Mark IIとRF20mm F1.4 L VCMでフラワーベースをグラフィカルに切り取った八木斗希雄氏の作品を紹介する。

RF24mm F1.4 L VCMで撮り下ろした池嶋徹郎氏の記事はこちらから


八木斗希雄 RF20mm F1.4 L VCM

❶ キヤノンEOS R5 Mark II RF20mm F1.4 L VCM 1/200秒 F1.4 ISO200
❷ キヤノンEOS R5 Mark II RF20mm F1.4 L VCM 1/100秒 F1.4 ISO400 
❸ キヤノンEOS R5 Mark II RF20mm F1.4 L VCM 1/250秒 F1.4 ISO400
❹ キヤノンEOS R5 Mark II RF20mm F1.4 L VCM 1/250秒 F1.4 ISO400

Interview

寄れる広角、F1.4の滑らかなボケ
RF20mm F1.4 L VCM

20mmの焦点距離でブツ撮りをするのは今回が初めてでした。これほどの広角を使うのは風景や建築の撮影でしか経験がなく、今回は新しいチャレンジになりました。僕は美術系の学校に通っていたのですが、まずシンプルな白い石膏像デッサンで光と影を観察するところからスタートしていました。
広角レンズでの新しいチャレンジということで初心に立ち返り、デッサンするように白いオブジェクトを光と影のシンプルな形で捉えることにしました。

また、レンズで気になっていたのはキヤノンRF20mm F1.4 L VCMの明るい開放値です。広角レンズは広い範囲を全て見せるという役割があり、全ピンで使われることが多いと思うのですが、このF1.4をひとつの特徴と捉えてボケ感を表現に入れたいと考えました。

実際にレンズを手に取ってみて、まず驚いたのはコンパクトさです。F1.4で広角単焦点というと大きくて重いイメージでしたが、とても軽くて小さい。使ってみてさらに驚いたのが、すごく寄れること。広角レンズとは思えないほど被写体に近づけて、しかも歪みが気にならない。嫌なパース感も出ていません。

❶のカットではボケ感が滑らかで、レンズが高性能なためデジタルカメラが苦手なハイライトもトーンがしっかり残っています。階調とボケ味が丁寧に描写されている印象です。花瓶の下のシャドウも、グラデーションが滑らかなのでふわっと浮いて見える浮遊感と、不思議な奥行きが生まれました。

❷のカットでは花瓶の凹凸側面にできるだけ寄りました。マクロレンズ的な感覚で「寄れる広角」というイメージで撮影しています。

❸は2つの花瓶を前後に置き、手前から奥への距離感を見せつつ、奥の花瓶が浮いて見えるような不思議な画が作れました。
こういった立体感や浮遊感は、広角レンズだからこそ出せるものですね。

❹は、光と影とボケ感で遊んでみました。中空になった花瓶の穴越しに、奥の花瓶を覗くような構図にしています。手前の花瓶はぐっと大きく写して迫力を出しつつ、奥にもうひとつポツンと見える感じが、広角レンズならではの面白さだなと思いました。

今回撮った花瓶は、不思議な形ばかりで、意図があるのか、感覚的にデザインされたのか。その理由をレンズを通して探るようにフォルムを見つめるうちに気がつけば400枚近くシャッターを切っていました(笑)。

広角の話からズレますが、AF性能にも驚かされました。
最初はマニュアルで撮っていましたが、試しにAFに切り替えたら、ピシッと合ってくれて。その後は全てAFで撮影しました。普段使っているEOS R5とRFズームの組み合わせも充分速いですが、EOS R5 Mark IIRF20mm F1.4 L VCMの組み合わせはそれ以上の速さと精度です。特に今回のようにフォーカスが迷いやすい被写体でも一度も迷わず、安心感がありました。

軽くて、フォーカスも速いので、気軽に外に持ち出せるレンズとして、スナップ的な使い方も試してみたいです。

Making

背景には白ペーパーを垂らし、花瓶を透明なアクリル板の上に配置。照明はモノブロックストロボのモデリングライト3灯使用。メインの1灯だけをカメラ上から被写体に向け、残りの2灯は背景用。
❷の撮影風景。被写体に寄って撮影。「寄れる広角」という印象どおり、RF20mm F1.4 L VCMの高い近接撮影性能を実感したという。

八木斗希雄(やぎ・ときお)

1988年 愛媛県生まれ。10BANスタジオで勤務後、フォトグラファーの上野山裕二氏に師事。
クライマーズでフォトグラファーとして活動。2024年独立。

Web:https://www.tokioyagi.com/
Instagram:@tokio.104

RF20mm F1.4 L VCM

対応マウント:RFマウント
焦点距離:20mm
明るさ:f1.4
レンズ構成:11群15枚
寸法:約Φ76.5×99.3mm
質量:約519g

詳細はこちらから
https://personal.canon.jp/product/camera/rf/rf20-f14lv

RF24mm F1.4 L VCMで撮り下ろした池嶋徹郎氏の記事はこちらから

協力:キヤノンマーケティングジャパン

コマーシャル・フォト2025年8月号より転載