【特集】Canon RF F1.4 L VCM Series 三宮幹史×鈴木愛理

フォトグラファー・三宮幹史が、Canon RF F1.4 L VCM Seriesにラインナップする85mm、50mm、35mm、24mm、20mmという5本の単焦点レンズを駆使。それぞれの画角と開放F値1.4という特徴を生かしながら、アーティスト、俳優の鈴木愛理をスチルと映像で撮り下ろす。

 特別映像「三宮幹史 × 鈴木愛理 × Canon RF F1.4 L VCM Series Behind the Scenes」

Photographer + Image Director:Motofumi Sannomiya Movie Director:Motohiko Tsukahara Videographer:Yosuke Omori Stylist:Mayumi Ando(Super Continental&nude.) HairMake:Yuina Iwata Casting:Yoshichika Chiba(ribelo visualworks) Artist:Airi Suzuki Produced by COMMERCIAL PHOTO
【Shooting Information】 Camera:Canon EOS R5 Mark Ⅱ Lens:RF20mm F1.4 L VCM、RF24mm F1.4 L VCM、RF35mm F1.4 L VCM、RF50mm F1.4 L VCM、RF85mm F1.4 L VCM
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「三宮幹史 × 鈴木愛理 × Canon RF F1.4 L VCM Series」撮り下ろし

PHOTOGRAPHER Interview5本のレンズで探る RF F1.4L VCMシリーズの魅力

――9月に発表となった85mm が加わり、20mm、24mm、35mm、50mm、85mm の5本となったRF F1.4 L VCMシリーズですが、どのような印象を持っていましたか?

 僕はEF レンズを長く愛用していて、その描写力や質感については高く評価しています。特に独特な柔らかさが好みで、自然に写るんですよね。人物撮影では重宝しています。ボディを完全にミラーレス移行できていないため、RF レンズについては本格的に導入していなかったのですが、情報をチェックしつつ何度かテスト的に触らせていただいた感覚ですと、フォーカスの速さと解像感の高さが特徴かなと思っていました。

―― 今回の被写体は鈴木愛理さんですが、どんなイメージの撮影を設計されましたか。

 まず、等身大の鈴木愛理さんを撮りたいと考えました。アイドル、俳優、モデルとして多面的に活動されている方ですが、今回はあえて飾らない姿を引き出すことで、より彼女らしい魅力を伝えられるのではないかと思いました。現場でも過剰な演出を避け、自然光や空間の力を借りながら、彼女自身の持つ雰囲気をそのまま写真に映し込むことを意識しました。スタイリストやヘアメイクとも事前に方向性を共有し、衣装はシンプルで動きやすいものを選んでいます。
 ただ、レンズそれぞれのバリエーションを見せなければならないのと、生っぽい写真だけでは誌面にメリハリがつかないので、僕なりのフィルターを通して彼女の素を演出しつつ、映画のようにストーリー仕立てにすることで、世界観を構築することにしました。

――撮影場所についてはどうでしたか。

 今回はハウススタジオを選びました。空間のあちこちにグリーンや雑貨が置かれていて、サブカル的な雰囲気が魅力的でした。そこで暮らしている女の子、という設定を意識して撮影を進めています。

―― 撮影時の進め方や被写体とのセッションについては、どうでしたか?

 最初に先ほどお話ししたコンセプトを本人に伝えて撮影に臨みました。経験豊富な方ですから、きちんと意図を理解してくださって、流石だなと。撮影中もこちらの提案をすんなりと受け入れてくれる懐の深さもあり、全体通してスムーズに進行できました。
 自然体ということで、自由演技に近いんですけど、同じシチュエーションで何枚もシャッターを切っていくと、お互い煮詰まってくることってあるじゃないですか。それを打破するために、こちらのテンションを変えて一言投げかけてみたり、シャッターのリズムをあえて崩してみたりして、そこで生まれる被写体の変化を捉えるといったことはしましたね。

―― ここからは各カットについてお聞きします。まずP013〜P017のシチュエーションについてはどのような狙いがありましたか?

 最初に撮影したのが、この部屋の中での撮影です。緑に囲まれた気持ちの良い空間で、ソファに横たわってもらってリラックスしているようなイメージです。どんな撮影でも最初は緊張感が出てしまうもので、それをあえてファッション的にバシッと撮ることもありますが、今回は自然さを撮りたかったので、緊張感をほぐすために、このシチュエーションを持ってきました。
 P013は最初のカットで、これが撮れたことで僕の緊張感もほぐれると同時に、現場の空気感や撮影のリズムが定まりました。レンズは85mm を使用しています。これまで自分にとって85mm は“ 腰を据えて撮るレンズ” というイメージが強かったのですが、RF の85mm ではAF がしっかり追従してくれるので、コンパクトですが手持ちでも信頼感があり、フットワークの軽さを生かして撮影できましたね。
 P014〜P015のカットは、ウォン・カーウァイのオマージュで、一枚絵の中でも、彼ならではの独特な構図から生まれるストーリー感を取り込みたく、いい所に鏡があったので、それを活用し、実像と鏡像を写した映画の冒頭のようなカットにしました。24mm ならではのワイドな画角によって画面内の情報を増やしつつ、開放時のボケ感によって被写体が際立つ絵になりましたね。
 P016〜P017では、35mm に持ち替えました。周りに広がる空間を生かしながら人物も歪みなく撮れる焦点距離で、今回は背景の緑や雑貨にこだわっていたので、寄り引きを組み合わせながらバランス良く撮影しました。

――表紙とP018〜P023のカットはベッドルームでの撮影ですね。

 大きめのベッドの周りに植物が置かれた狭い部屋なのですが、レンズの焦点距離を変えながらバリエーションを出しました。前半の明るいトーンとは違い、少し湿度のある暗めのトーンで艶っぽさも出しましたね。彼女に対しては、ポップなパブリックイメージがあったので、そのギャップとして少し陰鬱な雰囲気も盛り込みたかったという気持ちもあります。
 ヘアメイクも素を出すからといってナチュラルなものだけですと、誌面として成立しないので、色っぽさを強調していますが、それに引っ張られ過ぎると、演出感が出すぎてしまうので、あえて逆さまに寝転んでもらうことで、自由奔放なポージングでラフさのバランスをとってみました。自然体を演出するといった意味です。
 P018〜P019のカットは、ストーリーの中で客観視する場面として、俯瞰で撮影しています。20mm を使用することで、狭い空間でも被写体を大きく写しながら遠近感を強調することが可能です。
 P020〜P021は35mm で、先述したように背景のベッドや植物を盛り込んだカットにしています。
 P022〜P023で初めて50mm を使用しました。やはり標準レンズとしての強さがありますよね。被写体との距離が縮まって、そこから周囲に画面が広がっていくような印象です。被写体を掴んで離さないとでもいうのでしょうか。
 同じシチュエーションで表紙も撮影していますが、こちらは85mm です。50mm と比べて背景がより引き寄せられるので、ボケが大きくなるため、表紙の文字も乗せやすくなりますよね。ボケのとろけ方もとても素敵でした。


――85mm のレンズは、P024〜P025のカットでも使用しましたね。
 ここから部屋の外へ出ていくのですが、その導入的なシーンです。廊下での撮影
になるのですが、街並みの情報量の多さを美しくぼかしてくれることで、被写体に目を奪われるような写真が撮れました。開放で撮影しているのですが、寄っても、解像感が素晴らしいです。髪の毛の質感などがとてもシャープに描写されています。

――P028〜035のカットは、屋外での撮影でしたが、いかがでしたか?
 時間帯的には夕方なので、天気が良ければセンチメンタルな絵を撮ろうと考えていたのですが、当日は曇りでした。しかし、上がってきたヘアメイクと衣装を見た時に、日が暮れる前の曇った空も相まって、香港の朝のようなイメージが浮かんできたんです。少し人生に迷ってしまっているような女性像を描くことで、
ストーリーに奥行き感が出てくるかなと。そのトーンを出すためにクリップオンを装着して撮影しました。
 スナップ的な撮り方をしたかったのですが、35mm ですと背景が映り込み過ぎて世界観を損なうのと、被写体を大きく見せたかったので、50mm を使用してP028、P030〜P031を撮影しました。 P029、P032〜P035、P041のカットは85mm でより被写体にフォーカスしたい場面で付け替えました。50mmだと絞っても背景が映り込み過ぎてしまうなと感じた場面ですね。
 最終的に前半は趣味の部屋でリラックスしている明るい写真、中盤はベッドで艶やかな写真、終盤は内面を映し出すような感傷的な写真といった構成にして、普段人前では見せない彼女の日常を1本の映画のように撮ってみました。


―― 今回はRF F1.4 L VCM シリーズの特集ということで、単焦点に絞って使っていただきましたが、ズームレンズにはない単焦点ならではの魅力は、どこに
ありますか?


 単焦点レンズは明るい絞りが特徴で、被写体にピントを合わせながら周囲を大きくぼかすことができます。そのため、今回のように対象物を際立たせたい場面でよく使いますね。
 さらに、単焦点は自分が動いて距離を調整する必要があるため、被写体の気持ちを揺さぶったり、意識を変えたりする効果もあります。先述した撮影が煮詰まってきた時の打開策としても有効ですね。逆に、ズームレンズは撮影側が動く必要がないので、落ち着いた撮影をしたい時に有効で、距離を変えずに静かに撮影することができます。

―― 改めて振り返ってみて、レンズ5本の使用感はいかがでしたか?

 機動力の高さが魅力的でしたね。小型軽量というのはもちろんですが、AF 性能の高さにより、開放で撮っても狙いたい瞬間を素早く的確にキャッチしてくれる。その分撮影に集中できるので、フォトグラファーとしてはとても心強いです。「映画のように」という言葉を何度か使いましたが、本当に動画撮影のように流れの中でシャッターを切っていけました。これは、僕の撮影スタイルとマッチしていて、ストレスフリーな撮影を行うことができました。今回のように限られた時間の中で多くのバリエーションが必要な撮影では、間違いなく活躍してくれるレンズシリーズですね。
 あとは、サイズや重さが大きく変わらないのもいいですね。構えた時の感触の変化が少ないおかげで、一定のリズムをキープして撮影できました。ムービー撮影ではかなりのアドバンテージになると思います。

――描写力についてはどうでしょう?

 冒頭で述べたEF レンズの魅力である自然な描写を残しつつも、シャープで解像感のある仕上がりだなと感じました。ピン位置やエッジ部分もカリッとしすぎずに、周囲に自然に馴染んでいる印象です。ミラーレス機だとシャープになりすぎるのが嫌で、薄くフィルターをかけて和らげるといったことをするのですが、今回は必要ありませんでした。
 人物撮りの際には、肌色の再現性が重要なのですが、バッチリでしたね。ほとんど自然光で撮影したのですが、周囲の緑の色被りなども気にならずに、自然な色味になっていました。


――今後RF レンズに求める要素は何かありますか?

 性能面の進化とは逆のアプローチになってしまうのですが、変わったフレアが出るとか、独特なボケ感など癖の強いレンズがあっても面白いと思います。使い手を選ぶような。そういった特殊需要以外では、現状のラインナップで充分なのではないでしょうか。
 実際、今回の撮影ではRF レンズシリーズの魅力を大きく感じましたし、とても満足のいく撮影になりました。

【PROFILE】
さんのみや・もとふみ
1984 年兵庫県出身。2006 年スタジオエビス入社。2010 年フリーランスとして独立、活動。2019 年TRIVAL 所属。広告、カタログ、雑誌等でファッションを中心に、国内外のモデルやアーティストを撮影。
Web:https://trival.jp/motofumi-sannomiya
Instagram:@sannomiyamotofumi

【PROFILE】
すずき・あいり
1994年4月12日生まれ。アイドルグループ「℃ -ute(キュート)」を経て、2018年、ソロヴォーカリストデビュー、ソロとして初の武道館公演を行う。2021年、二度目の武道館公演開催。その他俳優、モデル業など
多岐にわたり活動の場を広げている。
Web:https://www.airisuzuki-officialweb.com
Instagram:@airisuzuki_official_uf

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