Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K Special Interview|
加藤ヒデジン(映像ディレクター)
教室、公園、部屋の中など、様々なものを破壊していたBiSHのメンバーが、古き良きディスコのような空間に飛び込んではしゃぎまわる。破壊と開放の対比が印象的なMV。加藤ヒデジン監督は2つの異なるトーンを自ら撮影することで表現している。
演出の意図に応えられる魅力
―どのような映像を作りたいと考えたのですか。
加藤 最初に「パーティ感を取り入れて欲しい」というオーダーがあったのですが実際に曲を聴いてみると、パーティ感という要素だけではなく、シュールな印象も受けました。
タイトルが「脱・既成概念」だということもあり、がんじがらめの状態からパーティで解き放たれるという流れを映像で描こうと考えました。
スタジオに2つのシチュエーションを作り、白い世界のシンプルな美術セットの方はがんじがらめの人間社会を表現しました。その一方で、全てから解き放たれたような”パリピ感” のある黒い世界はミラーボールなど煌びやかなイメージです。白い世界から黒い世界に抜け出す入り口は人が1人ギリギリ通れるぐらいの狭い壁。それは既成概念と開放をつなぐ道の役割を果たしています。
―今回、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以下BMPCC4K)で撮影しているそうですね。
加藤 BMPCC4Kは最低限の装備で撮れるところが気に入っています。今回、2つの世界をつなぐ狭い通路はジンバルも使えず、手持ちでしかも片手で撮らなくてはならない。そうなってくるとBMPCC4K の特徴が活きてきます。マイクロフォーサーズレンズでシネレンズ(コシナ Voigtlander NOKTON)を付けて、若干劣化したような映像で雰囲気を作っていこう。個人的にはそこがBMPCC4K の強みなんじゃないかと感じています。
最近はきれいな映像がマストだという考え方が変わってきていると感じていて、そういう意味では昔の機材で撮っていた頃のように、ノスタルジックな雰囲気を演出の意図として使えればと考えています。そこで、あえて手ブレさせて撮るということを演出として取り入れたんです。
―手ブレの撮り方にもこだわったと聞きました。
加藤 演出として手ブレを取り入れることが絵の強さにつながることがあります。大判カメラでは出せない小味というか、いい意味で生々しい演出ができると言いますか。どこまでブレさせればいいのかなどは微妙なニュアンスを言葉で説明できないので、自分でカメラを回しました。
今のカメラは、強力な手ブレ補正機能が搭載されているのが主流ですが、手ブレ感を活かした演出ができるところが素晴らしい。これからもこのカメラを使っていきたいですね。
※この記事はコマーシャル・フォト2023年1月号から転載しています。