ゼウスのスチルライフマジック Vol.45

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

中国から来て日本で活動するリン・インヨウ(林 允燁)さん。
普段の撮影はポートレイトが中心だが、今日はブツ撮りに誘ってみた。
場所は池袋・アガイ商事のスタジオ。
被写体はリンさんが持って来た美しいマイセンクリスタルのデキャンタ。
アラビアンナイトのお話の一場面が彫られている。
これにウィスキーを入れて撮ってみよう。

Photo:リン・インヨウ(林 允燁)

アガイ商事のスタジオに 到着したときには
もう 撮影セットはできていた
リンくん 仕事早い

デキャンタ 撮るとしたら 背景にアクリル板を置き
バックライトで 透明感を出していくのが
一般的な撮影セットなんだが
リンくん なかなか考えてきたな

リムライト的な手法で 光をそれぞれに足していく
立体的な ライティング

光 研究して来てるね
高度な テクニックだ

デキャンタに施されてる彫刻を
丁寧に浮かび上がらせていく
細やかな 演出
デキャンタの後ろから フィブロライト
左右上からも2灯

背景は手塗りで アンティークテイスト
重量感 感じさせるよう
ディテールに 濃厚な赤色をのせてる

さらに てっぺんに
星の光を 輝かせようと 考えているのか

だけど この光を狙うのは 至難の業

スポット・ライト 的確に ピンポイント
Brilliant Star 美しい瞬く光 登場だ

ライティングの組み立て             



ライト:❶broncolor siros L ❷broncolor fibrolite ❸❹broncolor picolite+honeycomb grid attachment
    ❺broncolor Picolite+Projection attachment 
カメラ:HASSELBLAD X2D 100C レンズ:XCD80 1/125秒 f11 ISO64 1/100秒 f8 ISO100

デキャンタにウィスキーを入れて黒布の上に配置。
赤のカラーフィルターを掛けたライト❶を、撮影台の向こう側から
背景の黒ムラバックに向けて照射。
光ファイバーのライト❷をデキャンタの後ろからあてて、
ウィスキーの色とレリーフを浮かび上がらせる。
デキャンタの斜め上からスヌート・グリッドをつけたライト❸&
ライト❹を加え、デキャンタの全体フォルムを描写。
右斜め後ろからピンスポットライト❺で半逆光を入れて、
デキャンタの栓に光芒を作る。
光の角度で光芒の数や入る位置や変わるので、ライトの向きを
細かく調整をしながら仕上げた。

テーブルに黒布を敷いてデキャンタを置く。
背景はリンさんが自分で塗ったというキャンバス地の黒バック。
撮影台の後ろに仕込んだ光ファイバーストロボ(フィブロライト)。
デキャンタ背後から光を入れて、中のウィスキーを透過。
レリーフを琥珀色に浮かび上がらせる。
背景用ライト。
赤のカラーフィルターをかけて下から手塗りの黒バックに光を入れると、塗りムラ部分に光がのって奥行き感が出てくる。
金色の紙を丸く切ってデキャンタの下に敷いている。
トップ2灯からの光を反射、ボトルの底部を明るくし、底縁に彫られたマイセンの「M」を浮かび上がらせる仕掛け。
デキャンタの栓に斜め後ろからピンスポットをあてる。
きれいな星形の光芒を写すには逆光の入射角度がポイント。
ライトと対角位置に木箱を置き、そこに映る影を見ながら微妙な調整をした。

ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

Photo:高井 “ゼウス” 哲朗

ウィスキーを デキャンタに移し替える
揮発した香り キレイな琥珀色を 見て楽しむ

美しい デキャンタ
それだけで 陶酔感 あるよね

撮影は アクリル透過の背景からの光で
その透明感 出せるけどね
全体に 白っぽくなって 製品説明写真になりがち

だから リンくんは
ムーディーな奥行きと 深みを出すために
映画的なリムライトで 光を演出していく
ライテイングにしたんだね

リムライトって 裏からの光(逆光)を
あてることによって
光が回り込み 人物の輪郭が
強調される効果を狙う って ヤツなんだよ

リンくん この方法で
デキャンタ撮影セット 作ってたんだ

ゼウスは
リンくんのライティングを 同じようになぞって
さらに 細いラインライト 入れて
あともう一つ 何か 加えようかと
水槽を使ってみた

俯瞰で撮るから デキャンタを横に倒し
転がらないようにして 下から ライトをあてる

そのスペース 考えて 組み立てていこうか

デキャンタのレリーフ アラビアンナイト だってさ
気持ちよく 酔えるな
浮遊感 感じさせるよう
水槽に 水 入れて 泳いでもらおう

酔っ払って お風呂に入るのって
気持ちいいんだよね
ホワーン と 柔らかな 浮遊感
幸せな 酔いごごち

真っ黒な夜に 星が散る
素敵な 飛行船
妄想が広がっていく

キラキラの 夢世界
飛翔する アラビアンナイト

Amore

ライティングの組み立て             



ライト:❶❷ broncolor picolite+honeycomb grid attachment
    ❸broncolor Striplite 120 Evolution ❹Aputure INFINIBAR PB12
    ❺broncolor picolite+Projection attachment
カメラ:Canon EOS R6 レンズ:SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG 1/100秒 f10 ISO100

ライト❶でデキャンタの左下部を描写。
ライト❷を加えてデキャンタ下部のライティングは完了。
縦長のバーライト❸でデキャンタ左側面に縦のハイライトラインを入れる。
縦長LEDバーライト❹を右から入れて、右側面に細いハイライトを入れる。
左右対称ライティングだが、ハイライトの幅を変えることで光の方向性を作っている。
デキャンタの首の部分に、トップからピンスポットを入れる。
Dで作った光の方向性に合わせてデキャンタの左側にライトの反射が出るように調整した。
このライティング状態で水槽に水を入れて、エアスプレーで飛沫を作り撮影。

2卓のテーブルにアクリル水槽を渡したセット。
下には黒ボードを敷いて、俯瞰から黒バックで撮影。
トップからのピンスポットはデキャンタの首の部分に狙いをつける。
透明な被写体のため、光の大部分は透過してしまうが、凹凸の細工のある部分は光が乱反射して煌めく。
左の水槽下にはスヌート・グリッドをつけた小型ストロボと長さ120cmのストロボバーライトをセット。
レリーフを浮かび上がらせ、デキャンタ左側面にハイライトラインを入れる。
右側の水槽下には小型ストロボと長さ120cm、細身のLEDバーライトを使用。
デキャンタ左右に入るハイライトラインの太さを変えて、画面に強弱をつけている。
ライトのセッティングが完了したら、水槽に水を流し込む。
透明アクリル背景での黒バック撮影は、アクリル表面の細かい擦れ傷が目立ってしまうこともあるが、
水を入れるとそれも解消される。
薄く張った水槽の水を揺らしたり、波紋を作ったりしながらバリエーションを撮影。
その中でもエアスプレーで水を散らしたカットが面白く、決定カットとした。

林 允燁(Yunye Lin)
リン・インヨウ/1994年生まれ。中国福建省出身。
2020年から独学で写真を学び始め、2023年3月より正式にフォトグラファーとして活動を開始。
現在は主にポートレイト撮影を中心に日本で活動中。
Instagram:0y2photographer

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai

コマーシャル・フォト2025年01月号記事より

ゼウスのスチルライフマジック 記事一覧

コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。

Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック

プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」

Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」

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PART1では、上村窓、ヨシダキヅク、小見山峻、佐野円香の4名が、それぞれの作品を通して“新時代の自然光ライティング”を解説。PART2では中野敬久が俳優 宮﨑優を撮り下ろし、自然光撮影の実践テクニックを紹介します。自然光のメリット・デメリットを理解し、ポートレイト撮影の幅を広げたいフォトグラファーに向けた保存版特集。

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