ゼウスのスチルライフマジック Vol.52

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

ゼウス高井の古くからの知り合い、作宮 隆さん。

広告のAD/CDとして活躍していた頃から、造形作家として木や植物の炭を使った「活け花炭」という立体作品を作り続けている。

今回はその漆黒のアートを撮っていこう。

1カット目は図録に載せるような俯瞰撮影。

2カット目は、作宮さんの造形を題材にゼウスカラーも加えてみた。

Art&Photo Direction:作宮 隆 Photo:高井哲朗

作宮 隆さんから 炭の作品を展示すると
個展案内状が来た

炭ね?

随分前に 広告の仕事を
一緒にしていたこともあって
懐かしさもあり 覗きに行ってみた

確かに 炭だ まっくろくろすけ
でもなぜか 惹かれるものがある

日本古来の炭焼技法 「花炭」
別名「飾り炭」と 説明してくれた

作品集もあって 写真は自然光で撮っているみたい

自然光もいいけど ライティングするのも良いよって
ゼウスのページに お誘いした

昔の広告仕事の時みたいに
作宮さんは アレコレ 言ってくれれば
ライティングするからさ って事でね

黒い炭となっても その美しさは 崩れることなく
カタチとして実在する
植物と 火と 人の手が融合した作品
「活け花炭」 いけはなすみ

わび・さびの美の空間を 展開していきたい

作家としての生き方が 綴ってあった 写真集

でも今日は 広告仕事の時の デザイナー 作宮さんだった

ブツ撮りの原点
光で モノの存在感を演出
漆黒の美の境地に生きる

ライティングの組み立て

ライト:❶broncolor Picolite+Picobox ❷ broncolor Pulso+Conical snoot
    ❸broncolor Imapact 21+Fibrolite(製造終了製品)
カメラ:Canon EOS R6
レンズ:EF50mm F2.5 Compact Macro 1/125秒 f9 ISO100

削り出した檜の炭に小麦などの花炭を配した作品を俯瞰撮影する。

小型ボックスライト❶を被写体横の低い位置から照射。
ほぼ真横からの光で表面の木目を際立たせる。
スヌート❷を斜め上から打ち、画面の明るさを補う。
メインライト❶に対して、フィルインライト的役割。
ストロボヘッドに光ファイバーアタッチメントをつけた❸
(以下「光ファイバーライト」と表記)のピンスポットで
センター部分に光を入れて完成。

撮影台に黒布を敷き俯瞰で撮影。作品左に置いた小型ボックスライトをメインライトに、
スヌート、光ファイバーライトのスポットで部分的に光を入れている。
ライトは3灯ともストロボ。
檜の炭を削り出した2枚のブロックに麦などの炭を配した作品。
メインライトの小型ボックスは、木のブロックの木目と並行になるように置き、木目の凹凸を強調した。
メインライトの小型ボックスだけでは、作品の右側が暗くなるため、
手前からのスヌートでフィルインライトを入れる。
炭の黒さや立体感を損なわないように、光を回しすぎないのがポイント。
光ファイバーライトのアタッチメント先端。
ストロボヘッドに繋がっていて、瞬間光のピンスポット照射が可能。
ここではスポット範囲をさらに狭めるため、先端に黒テープを巻いている。
作宮さんのディレクションで、ライトの調整をするゼウス高井。
特に今回のようなモノトーンの被写体では、光の強さやあて方で、
作品のイメージが大きく変わってしまう。
昔の広告仕事の時のように「あ・うん」の呼吸で、作宮さんの求めるイメージに近づけていく。

ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

Art:作宮 隆 Photo:高井哲朗  

炭の作品は まっ黒なのに どこか 密やかに光る

吸いこまれた光が きらり と 返してくる
石炭のよう あるいは 黒い宝石

深く 静かな光沢を持ち
表面を包むのは 有機の記憶なのか

「ぬめり」と光を返す

光を当てれば 影が踊り 奥から声がする

立体が ゆっくり 息をしはじめ
影と光が 舞をはじめる

命が そこに宿っているようで 無彩色の 黒なのに
見つめていると
いろんな色が 心に広がっていく

「絵の具はダメでも 色の光なら
高井さんのイメージで自由に使っていいよ」って
作宮さんが 言ってくれた

だから 好き勝手に光を踊らせた

反射する光たちで 形を浮かび上がらせる実験

炭の中には 生き物みたいな 細胞たちが
ぎっしり うごめいてる
ひとつひとつが 命の種

土台の檜は 磨かれて まっすぐで
深海を進む 船

進行色の緑が 先を照らし あとを追うのは 燃える赤

暗闇をゆく 飛行船
炭の黒に パースを与え 下から上へと 立ち上がる

光を裂いて 空を抜け 宇宙を目指す
地球の生命をのせて

うごめくDNA 未来の宇宙船が
飛び立つみたいに

この宇宙にある すべての命は
かたちを変えて めぐり続ける

繊細で 力強く 永遠に 循環していく
形の奥にある 命の気配
美のはじまりだと

作宮さんは 燃える炎で
純粋な形だけを 閉じ込めた

これからも 漆黒の世界へ
わび・さびの宇宙へ
静かに 深く 入り込んでいくのだろう

ライティングの組み立て             

ライト:❶ Aputure STORM 80c ❷amaran 300c
    ❸ broncolor Imapact 21+Fibrolite(製造終了製品)
    ❹LEDハンドライト(懐中電灯) ❺ broncolor Pulso+Conical snoot
カメラ:Canon EOS R6
レンズ:EF50mm F2.5 Compact Macro 1/10秒 f8 ISO100

ライト❶。炭にして削り出した木の表面は光沢があり、
カラーライトを反射してかなり色がのってくる。
ライト❷でグリーンをのせる。
光ファイバーライト❸で箱の上部にスポットを入れる。
ハンドライト❹で船の上部に強めのハイライトを作る。
船の中の種子に向けてスヌートをつけたライト❺をあてる。
ライトの照射口半分をブルーフィルターで覆っているため、
手前の種子はやや暗く青みがかる。

ハンドライト(懐中電灯)を含めLEDが3灯、ストロボ2灯の計5灯で撮影。
光ファイバーライトは写真右下にあるストロボヘッドに繋がっている。
2カット目の被写体は、檜の炭に様々な植物の種子(の炭)が入った造形物。
黒い木の箱に収められている。種が詰まったサヤようにも、船のようにも見える。
奥右からのライトはAputureの80WスポットLED「STORM 80c」。
最新LEDチップセットを搭載しRec.2020色域の90%以上を再現可能なフルカラーライト。
赤〜オレンジに設定して照射。
もうひとつのLEDライト「amaran 300c」はグリーンに色調整。
右写真の「STORM 80c」でオレンジに染めた炭の表面に、補色のグリーンでグラデーションをつくる。
LEDハンドライト。
撮影専用ライトではないが、光線が強く、照射範囲もある程度の調整ができるので、
この連載でも何度か登場している。炭の船の上部に強めのハイライトを入れた。
種子の部分にスヌートをあてる。
明るくなりすぎないようにスヌート先端の半分を厚手のブルーフィルターで遮り、
手前部分に種子に青みをのせている。

作宮 隆 / さくみや・たかし
1954年 金沢市生まれ。1978年 日本デザインセンター入社。
以降、第一企画、ADK、アイプラネットにて広告デザイン、TV-CFのアートディレクター&クリエイティブディレクターとして活躍。2004年 植物の炭化焼成「花炭」を使った作品を発表。造形作家として作品発表を続ける。2025年3月 銀座・ギャラリー枝香庵で個展「生け花炭~いけはなすみ」を開催。
右写真は個展に併せて作られた作品集。

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai

コマーシャル・フォト2025年08月号記事より

ゼウスのスチルライフマジック 記事一覧

コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。

Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック

プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」

Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」


特集「LEDライト最新活用術」&別冊付録「CM・映像 キャメラマン&ライトマンファイル 2026」。

巻頭特集ではフォトグラファー福岡秀敏が俳優・田中麗奈をLEDで撮り下ろし。さらに倭田宏樹、森山将人、川村将貴、須藤絢乃による現場事例や機材検証を通して、LEDライティングの実践的な活用方法を解説。「Aputure LED 4機種 実践検証」ではCOB型、パネル型、スポット型、ストリップ型という異なる光源を用い、静物撮影で検証。光の質や質感表現の違いを比較しながら、LEDライトの特性を具体的に探る。撮影と解説は中村雅也氏が担当した。

【広告特集】King & Prince「STARRING」のクリエイティブ

2025年12月24日発売のKing & Prince 7thアルバム「STARRING」。本企画では、収録曲それぞれを“架空の映画の主題歌”に見立て、1曲につき1本の特報映像を制作するという前例のないプロジェクトを徹底取材。本編は存在しないにもかかわらず、長編映画を想定した設計で10本の特報映像とポスターを制作。さらにレッドカーペットイベントや映画館での上映会まで展開するなど、アルバムの枠を超えた大規模なプロモーションとして構築されている。特報・ポスター制作全体のプロデューサー加藤諒氏をはじめ、3人の映像監督、アートディレクター、フォトグラファーが参加。企画設計の背景と制作プロセスをそれぞれの立場から語る。

【好評連載】
フォトグラファー生存戦略 Vol.36 小暮和音×黒田明臣「退路を断った行動から生まれた転機」
ゼウスのスチルライフマジック 高井哲朗 vol.60 イメージセンサーで描く未来の風景
長山一樹流 違いを生み出すコマーシャル・ポートレイト 第13回 建築とポートレイト
写真を楽しむスペシャリストたち 中野敬久 Vol.12 小髙美穂が考える写真の“今”
GLAY CREATIVE COLLECTION 2024 – VOL.21 TAKURO 4th SOLO ALBUM「May Love Guide Your Way」
Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る- vol.19「ブツ撮り 記憶を感じさせる写真」金村美玖

ほか