注目の風景写真作家・今坂庸二朗氏の日本で初の作品集『Wet Land』が販売中。

NYをベースに活動し、アメリカ国内はもちろんパリや東京などで数々の個展を成功させている気鋭の写真家・今坂庸二朗氏のランドスケープ作品集『Wet Land』が刊行された。
アナログ撮影にこだわり、撮影イメージによって撮影技法を変える今坂氏が本シリーズの撮影に選んだのは、写真フィルムが発明される以前の19世紀末に用いられていた「コロジオン湿板法」。
薄いガラス板に像を焼き付けるこの手法から生み出されたイメージがもつ、デジタル撮影では表現し得ないどこか懐かしくも繊細な表情を堪能できる作品集となっている。

アメリカ南部ミシシッピ河口に広がる手つかずの自然美を超アナログ撮影で収めた作品集

ランドスケープ写真をライフワークとする今坂氏の撮影スタイルは、インスピレーションを受けた土地へのリサーチを積み重ね、その土地に合った撮影方法を選択することから始まる。
撮影場所に入ってからは長期にわたり現場の光の移り変わりを見続け、撮りたい風景イメージを頭の中で固める。
細かい作業を積み重ね、今坂作品の特徴である「風景絵画を思わせる繊細な作品」が完成する。

本書には、ミシシッピ河口に広がる「バイユー」と呼ばれる湿地帯の風景写真76点を収録。
この撮影で今坂氏が選択した撮影技法は「コロジオン湿板法」。
8×10の大型カメラに、厚さ1ミリほどのフィルム代わりのガラス板をセット、長時間の露光を経てイメージを焼き付けます。
今坂の風景作品は、背景にある土地の文化も映し出していることも特徴の一つに挙げられる。
かつてこのバイユーに移り住んだフランス系カナダ移民は、原住民とともにケイジャン文化を生み出した。
《Wet Land》シリーズの制作において今坂氏は、ケイジャンの食生活に欠かせない食材「タマネギ」をプリント時の調色に使用することを思い付く。

こうした柔軟なアイデアも、彼の作品をより重層的なものへと昇華させている。

そんな今坂作品を知る手立てとなるテキストも充実。19世紀西洋絵画を専門とする美術史家キャサリン・キャリー・ガリッツ氏(メトロポリタン美術館所属)によるエッセイ、テート・モダン写真部門シニア・キュレータなどを歴任し、現在アジア・ソサエティ館長を務める中森康文氏による今坂インタビュー、今坂本人の解説による撮影プロセスも収録。

  • プロフィール

今坂庸二朗

1983年、広島生まれ。日本大学芸術学部写真学科、プラット・インスティチュートにてMFA取得。2007年に活動拠点をアメリカに移す。ニューヨークやパリを中心に数々の個展を成功させ、日本では表参道 ストリート アート プロジェクトでの「FENDI × Yojiro Imasaka」(2022)などの展示も。

『Wet Land』今坂庸二朗 ランドスケープ作品集
発行|カルチュア・コンビニエンス・クラブ
発売|美術出版社
価格|10,000 円+税
発売日|2023年10月20日(水)
仕様|168ページ、 B4変型
ISBN|978-4-568-10570-4 C0072
ご購入はこちら|https://amzn.asia/d/fHjC7FC

コマーシャル・フォト 2024年10月号

■特集「令和の時代に、フィルムで写真を撮るということ。」
写真家・石田真澄がフィルムを使い、ハウススタジオやフェリー、海辺で自然体の齋藤飛鳥を11Pにわたって撮り下ろした。また、これまで石田が積み重ねてきた仕事の数々から一部を抜粋して紹介する。

また、中森 真、大野隼男、木村和平、竹中祥平、三部正博という5人のフォトグラファーがフィルムを使って撮影した仕事例、作品を紹介。フィルム撮影に関する考え、使用機材やよく利用する現像所などを伺った。

■連載「撮影を楽しむスペシャリストたち」
写真業界には数多くの撮影ジャンルがあり、それぞれの分野で活躍するスペシャリストたちがいる。この連載では、フォトグラファー中野敬久氏が毎回気になるスペシャリストにインタビューを行ない、その分野ならでは魅力や、撮影への向き合い方を聞くことで、“撮影を楽しむ”ためのヒントを探っていく。今回のゲストは新津保建秀氏。

■連載「GLAY CREATIVE COLLECTION 2024- VOL.03」
GLAY 30年間のクリエイティブを網羅した書籍「GLAY CREATIVE COLLECTION 1994-2024」が好評につき連載化!今回紹介するのは9月18日発売の「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025 in BELLUNA DOME Blu-ray & DVD」のアートワーク。アートディレクターの吉野晋弥氏、フォトグラファーの岡田祐介・田辺佳子氏に取材した。