撮影:渡邉 肇 能楽師:辰巳満次郎
2023年9月末に発売されたラージフォーマットミラーレスカメラ「FUJIFILM GFX100 II」。
従来機の「GFX100」が持つ、約1億200万という圧倒的な画素数はそのままに、
新開発された撮像センサーと最新の画像処理エンジンを搭載することで、
さらなる高画質化と高速化がなされている。また、外観も小型軽量に改善され、
より機動力が上がったモデルだ。本記事では、この「FUJIFILM GFX100 II」を使用して、
「能」をテーマにした作品を撮り下ろした、フォトグラファー渡邉 肇氏にインタビュー。
同時に発売された新レンズ「フジノンレンズ GF55mmF1.7 R WR」についても話を聞いた。
INTERVIEW
機動の力を活かしたラージフォーマットならではの表現
─写真展「面と向かう」での展示作品となりますが、「FUJIFILM GFX100 II」を使用した理由は?
渡邉 今回の展示は、撮影と印刷両方の面で挑戦をするというのが前提で、制作チームで話し合う中、「伝統芸能×最新技術」「オーソドックス&チャレンジング」というテーマが決まりました。
そこで、最先端のラージフォーマットミラーレス機である「FUJIFILM GFX100 II」で「能」を撮影し、超高画素を活かした大判プリントを行なうことにしました。「能」を被写体とした写真は、アーカイブ的な撮影が多いのですが、今回は僕の得意とするファッションやビューティといった撮影ジャンルのエッセンスを取り入れたいとも考えていたので、「FUJIFILM GFX100 II」の特徴のひとつである機動力についても期待しつつ撮影に臨んでいます。
─実際に現場で使用してみて、機動力はいかがでしたか。
渡邉 ラージフォーマットでありながらこのコンパクトさは驚きですね。前機種の「FUJIFILM GFX100」よりも更に軽くなっていて、グリップ感も充分です。安心して手持ち撮影ができました。人物撮影では、被写体と呼吸を合わせながらセッションをしていくので、自分が動かないと成立しません。これまでの中判撮影では、どうしても三脚が足枷になる場面がありましたが、そこから開放されることで、表現の幅が広がります。
それを後押ししてくれたのが、オートフォーカス(以下AF)の性能です。従来機「GFX100」のAFは、合焦するまでのスピードが遅く、精度もあまり信頼できなかったのですが、「FUJIFILM GFX100 II」のAFは実用的なレベルまで向上しています。舞のシーンでもしっかりと追従してくれたので、動きものの撮影でも活躍してくれました。
─撮影したデータについてはどのように感じましたか。
渡邉 フィルム時代から蓄積されている色設計の技術には信頼感があります。「FUJIFILM GFX100 II」のデータも非常にナチュラルな色再現で、扱いやすいデータです。
また、誌面では伝えきれませんが、約1億200万画素という画素数で描写されるディテールは圧倒的です。今回撮影した能面の中には制作から400年を越えるものもあり、そこに刻まれた染みやヒビといった数々の歴史を精細に確認することができます。そういったドラマティックな部分も含めて写真展のタイトル通り、“面と向かう”撮影ができました。
─掲載している人物撮影のカットは全て新レンズ「フジノンレンズ GF55mmF1.7 R WR」を使用していましたね。
渡邉 開放F1.7の大口径標準レンズということで、ラインナップの中でも需要の高いレンズですよね。「FUJIFILM GFX100 II」が持つ超高画素のポテンシャルを引き出すことができる高い描写力を持ったレンズといった感想です。今回は表現にボケを取り入れていませんが、被写界深度の幅が大きいラージフォーマットを活かした撮影も面白そうですね。
─最近は媒体サイズの大きな広告物が減ってきていますが、「FUJIFILM GFX100 II」の活躍の場はどこにあると思いますか。
渡邉 確かに大判ポスターは減っていますが、その分媒体の種類が増えています。ひとつのキービジュアルをトリミングして使用するため、画素数が求められる機会は多いです。ラージフォーマットならではの豊かな階調や圧倒的なディテールを活かしつつ、手持ちでフレキシブルに撮影できるという点は、クリエイティブの拡張に大きく役立つことでしょう。
フォトグラファー:渡邉 肇
わたなべ・はじめ
ビューティ、ファッションを主体とした商業写真を中心に活動するかたわら、プライベート作品の製作や、国内外での写真展の開催も精力的に行なっている。最近では、10年の歳月をかけて撮影した、文楽人形遣い三世吉田簔助(人間国宝)の写真集『簔助伝』を刊行。
能楽師:辰巳満次郎
たつみ・まんじろう
シテ方宝生流能楽師。古典継承の活動をする一方、能が持つ宇宙観、引き算の美学を、他ジャンルとの融合を通じて様々な表現に挑み、追求・普及している。2001年重要無形文化財総合指定に認定。文化庁文化交流使。日本芸術文化戦略機構(JACSO)名誉理事長。
コマーシャル・フォト 2025年1月号
【特集】フォトグラファーたちの これまでとこれから
2024年もそろそろ終盤。フォトグラファーたちが2024年に発表した作品や仕事、取り組みを作品とインタビューとともに掲載。それぞれの写真観や作品制作、仕事についてなどたっぷりと語ってもらった。
ソン・シヨン、𠮷田多麻希、濱田英明、金本凜太朗、服部恭平
FEATURE 01 薄井一議「Showa99 / 昭和99年」
FEATURE 02 金澤正人「KANA Kana Kitty」
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