
五十嵐隆裕(SIGNO)と六本木スタジオによる写真教育プロジェクト「ロクスタアカデミー」の第2回が4月25日に開催された。
今回のテーマは、ポートレイトライティングの基礎である「Loop」と「Butterfly」。
午前・午後の2セッション構成で、それぞれ異なる光の考え方が提示された。
このロクスタアカデミーの特徴は、ライティングを単に“感覚的に光をあてる”のではなく、まず“理論や構造として理解する”ことにある。
ライトの位置や強さだけでなく、被写体や背景との関係、トーン設計、さらには写真としての意味づけまでを一体で考えていく。
その思考のプロセスが、五十嵐氏が制作したテキスト、参加者からの質問、実演を交えながら丁寧に共有された。
「教えることが、自分の学びになる」
講義の冒頭、五十嵐氏はこのアカデミーを続ける理由についてこう語った。
「僕は人に教えることが、自分にとって一番の学びになると考えています。
好きな言葉に、“Teaching is the best way to learn.”というものがあります。
だからこそ、ここでは一方通行ではなく、皆さんと一緒に考えながら進めていきたいです」
参加者とのやり取りを重ねながら進行するスタイルは、単なる技術講座ではなく、思考を深める場として機能している。
【午前セッション:Loop】
光を“再現できる技術”として扱う

午前はLoopライティングを軸に進行。
ここで強調されたのは具体的なセッティングではなく、「なぜそうするのか」という考え方だった。
印象的だったのは、ライティングを個別に組み立てるのではなく、被写体・背景・光を同時に設計するというアプローチだ。
どこに光をあてるかではなく、どのような関係性の中で画を成立させるか。
その前提を整えることで、結果として自然に光の位置や強さが決まっていく。
また、写真のトーンについても触れられ、「豊かな階調を持つ写真」をどう捉えるかが提示された。極端なコントラストに頼るのではなく、画面全体のバランスの中でトーンを構築していく。その考え方は、スタジオワークに限らず広く応用可能なものだ。

【午後セッション:Butterfly】
ハリウッドから現代へ ライティングの系譜を読み解く

午後はButterflyライティングへ。
被写体の正面から光を入れることで、顔の存在感を強く押し出す手法であり、ビューティやポートレイトの分野で多用されてきた。ここでも重要なのは、“形”ではなく“意図”。
顔にどのような印象を与えたいのか。
どこに立体感を持たせ、どこを整理するのか。
その判断によって、同じButterflyでもまったく異なる表現へと変化していく。
講義では、Butterflyライティングの歴史的背景にも触れられた。
1930〜40年代のハリウッドにおいて確立されたスタイルが、時代とともに変化しながらファッションやビューティーの分野へと受け継がれていく。その流れを踏まえることで、現在のライティングがどのような流れの上にあるのかが見えてくる。
単なる技術としてではなく、表現の一部として光を捉える視点が提示された。
写真は“影で語る”
講義を通して繰り返し語られたのが、「写真のストーリーは影で語る」という考え方だ。
光をあてることで見せるのではなく、影をどう設計するかによって印象が決まる。
どこに情報を残し、どこを削るか。その選択が写真の強度を左右する。
この視点は、ライティングだけでなく、写真全体の捉え方にも直結している。
ランドスケープとポートレイトをつなぐ

実演では、ランドスケープとポートレイトを組み合わせるアプローチも紹介された。
異なる要素を並べることで、単体では生まれない意味や文脈が立ち上がる。
人物と風景、あるいは有機物と無機物といった対比を用いることで、写真はより豊かなストーリーを持つ。
今回の撮影もまた、単体で完結するポートレイトではなく、あらかじめ用意された風景写真と対になる前提で設計されていた。
五十嵐氏がアメリカ・ホワイトサンズで撮影してきた風景を起点に、その色味や空気感に呼応するかたちでヘアメイクやスタイリングが組み立てられている。
リップの色や質感に至るまで、砂漠の光や温度感を踏まえて選択されており、撮影時点からすでに“組み写真”としての完成形が意識されていた。
つまりここでは、ライティングは単独の技術ではなく、ビジュアル全体の設計の一部として機能している。ランドスケープと人物をどう接続するかという発想そのものが、撮影の出発点となっているのだ。
ポートフォリオにおいても、こうした組み合わせが作家性を伝える重要な手段になるという指摘は示唆的だった。
「なぜ自分が選ばれたのか」を考える

前回に引き続き、多くのプロフォトグラファーが参加しており、質疑応答ではクライアントワークに関して踏み込んだ質問も。
仕事を受ける際に重要なのは、「なぜ自分に依頼が来たのか」を考えること。
その理由を理解し、自分が担うべき役割を見極めることで、現場での判断が変わってくる。
技術だけではなく、関係性の中でどのように価値を発揮するか。
その視点もまた、この講座の重要なテーマのひとつとなっていた。

光を“構造”として学ぶ場
LoopとButterflyという基本的なライティングを扱いながら、今回の講義が示していたのは、より本質的な問いだった。
光をどうあてるかではなく、どう設計するか。
写真をどう撮るかではなく、どう成立させるか。
ロクスタアカデミーは、そうした視点を鍛える場として機能している。
技術の習得にとどまらず、写真そのものへの理解を深める機会となっていた。
ロクスタアカデミーは全5回を予定。次回の開催告知は、<Webサイト>にて。
このセミナーで撮影した写真は五十嵐氏のInstagramで見られる。
ST:SOHEI YOSHIDA (SIGNO) Instagram:@soheyoshida
Hair:TETSUYA YAMAKATA (SIGNO) Instagram:@tekote_official
Make: Tadayoshi Honda Instagram:@tahman78
Model:MAYLAN (tomorrow Tokyo) Instagram:@maylan_y
Model:MIAO (tomorrwo Tokyo) Instagram:@niuanmiao
■ 開催概要
【ロクスタアカデミー】ライティングの5つのパターン
01 「Loop」 / #02 「Butterfly」
講師:五十嵐隆裕(SIGNO)
日時:2026年4月25日(土)
1部 「Loop」 10:00〜13:00
2部 「Butterfly」 14:30〜17:30
会場:六本木スタジオ 東京都港区六本木4-6-9
Webサイト:https://academy.roppongi-st.co.jp/
Instagram:@roppongi.studio
主催:六本木スタジオ
協力:SIGNO
協賛:Capture One/Profoto/EIZO/LIGHT UP/TAKE
機材協力:Nikon
■ 講師プロフィール
五十嵐隆裕(SIGNO)
緻密なライティングと深い表現力で知られる。広告・ファッション・ビューティーなど幅広いフィールドで活躍し、現場での判断の速さや、レタッチ・レイアウトまで見据えた制作スタイルにも定評がある。近年はムービー制作にも活動の幅を広げている。
https://signo-tokyo.co.jp/
Instagram:@520_igarashi

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