【CP+2026レポート】CREATORS EDGE Spring Edition セミナー Munetaka Tokuyama編

2026年2月26日(木)から3月1日(日)までの4日間、パシフィコ横浜で開催された「CP+2026」

本記事では、そこで行われた玄光社のVIDEO SALONとCommercial Photoがプロデュースしたイベント企画「CREATORS EDGE Spring Edition」のMunetaka Tokuyamaさんによるセミナーの模様をお届けする。

2月28日(土)16:50-17:30にステージCで行われたこのセッションでは、広告フォトグラファーとしてキャリアを築いてきたトクヤマさんが「撮り方」ではなく、フォトグラファーとして生き抜くための方法論を語る。

NYでのキャリアをスタートさせたトクヤマさん。いま20代なら何をするか、プロとアマの違い、写真で食べていくために必要な考える力までを自身の体験を交えながら解説。さらにAI時代に残る価値として「制作物を語れる熱」を挙げ、写真館をアップデートする自身の取り組みへと話をつなげた。


はじめに:技術の話じゃなく、僕の方法論の話をします

今日はよろしくお願いします。フォトグラファーのトクヤマです。
僕は広告関係の撮影をする広告写真家なんですけど、キャリアの最初がちょっと特殊で、アメリカでキャリアを始めて14年ほど活動していました。
写真の学校には行っていません。オーセンティックな写真とか技術の話は正直弱いと思っています。

でも、そんな僕でもどうやって広告の仕事や大きな仕事をさせてもらえるようになったのか。自分の中に方法論みたいなものがたくさんあるので、今日はそれを話します。

駆け出しの頃:誰もいない場所で、まず現場に潜り込みました

アメリカの写真スタジオで働き始めた時、最初は給料をもらわずにスタジオの片隅で荷物の整理整頓から始めて、アシスタントとしては四番手くらいの立場で、少しずつ現場を見せてもらった。
そこで見ることができたのが、世界のトップの現場だったのは本当に幸運でした。
そこで教えてもらったり見たりしたものが自分のベースになって、行動の基準値になりました。
だから最初はぶつかりながら、ほとんど負け続けて、たまに一つ撮りに行ける、みたいな状況でした。

もし今20代なら:まず情報を集めて、進む方向を決めます

今の状況で、20代に戻って希望を持って写真の道に進めるかと言われると、正直難しいと思っています。時代背景も社会状況も、僕が20歳の時と全然違うからです。
でも、もし今の時代にもう一回「視座を高めてくれる人」に出会えるなら、写真の道、あるいは写真に関連する仕事を目指すと思います。
人生の中で写真しか褒められたことがないので、多分進むんだと思います。

じゃあ何から始めるか。まずは情報収集です。
今の時代で何が起こっているのか、どこにチャンスや夢があるのか、今の表現とは何か。情報を取るのが簡単な世の中だからこそ、まず集める。
その上で、東西南北どこに進むかを決めます。
広告にいくのか、風景にいくのか、写真館を始めるのか。

何が今の時代に合っているのか。そこにエネルギーを込めないとダメです。
僕は目標がないと何もできないタイプなので、なおさら最初に決めます。

プロとアマチュアの違い:クオリティじゃなく「役割」と「時間」です

僕はプロとアマチュアの上下はないと思っています。機材も同じですし、むしろアマチュアの方がいい機材を使っていることもある。
でもプロは、報酬をもらって役割を全うしなければいけない。限られた時間の中で、求められたことを達成する。
使命を決められた時間内で達成できる人がプロだと思っています。

例えばタレントさんを5カット10分で撮ってくれと言われた時、10分で収めるのがプロ。20分、30分かかったら使命を果たせていない。プロアマはクオリティでは測れない。役割の部分です。

そしてプロはチームで一つの写真を作る。その周辺のクリエイティブも含めて、自分の役割を理解している人の方がキャリアが長い、というイメージがあります。

「写真で食べていけるか」:従来の道は泥船。新しいゲームを作れるか

食べていけるかはYES/NOじゃなくて、普通に食べていくのが難しい世の中になっている、というのは感じます。
先輩たちが生きた「写真のいい時代」は、僕らの時代でも既に難しいし、下の時代ではもっとなくなる。
だから新しいゲームを始めないといけない。広告や雑誌と接続しないとお金を作れない、という従来の道だけで考えると泥船に乗っている感じがします。
でも、違う道を作れる、考える頭を持った人なら食っていける。
プロアマ関係なく、社会と写真、社会とフォトグラファーをどう接続するかを考えられる人は残っていけると思います。

分業制が進んで、考えることを半分やめている人もいると感じています。昔はロケハンも自分たちでやっていたのに、今は写真を撮るだけになっている。
僕らの世代は退化してる、という感覚すらあります。だから戻さないと、この先しぼんでいくだけ。
誰かから仕事が来るのを待ってる人はアウト。口を開けて待つんじゃなく、自分から行動を起こせる人じゃないと、自分の人生は変えられない。
これから写真の世界はもっと厳しくなっていくので、立ち向かう人が残ると思います。

AIの時代:戦うより「別の生き方」を作る。語れる熱が必要です

AIは本当にすごいし、止められない。思った以上に足が速くて、対策を練ろうとしている間に席巻してしまった。
だからAIと戦うというより、AIは一つのジャンルだと思っています。

興味がなければやらなくてもいいけど、その分パイは取られる。写真で生きている人たちがAIに取られるパイは必ず出てくるので、そうじゃないところで生きていかないといけない。

AIが一瞬ですごいもの、映えるものを出せるのは理解できます。海外で撮るようなコストのかかるものも一発で出せる。
ただ、AIにできないところとして僕が思うのは、作ったものに対して、どれだけ作った人が語れるか、ストーリーを持てるか、ということです。

AIは説明はできるけど語れない。
だから自分の制作物に対して語れるくらいの熱がないと、AIに滅ぼされると思っています。

さらに言うと、ストーリーすらAIが作り出せる時代になる可能性はある。
だからこそ、好き嫌いを捨てて今の状況を冷静に把握して、「自分は何をやりたいのか」をピュアに持つことが大事です。

AIに惑わされたらAIには勝てない。でもAIに100%任せられるわけでもない。
人間が生きている限り、そこは人を信じながらやるしかないと思っています。

僕の今の答え:写真館をアップデートする(THE PORTRAIT STUDIO)

僕が昨年立ち上げたTHE PORTRAITS STUDIOでやっているのは「大人の写真館」です。
広告の世界の延長で片手間にやる、というより、写真館のアップデートを考えています。

ただ撮るだけじゃなく、写真館で何ができるのか、写真館と何かを合わせたら何ができるのか。その先に写真館文化が復活するんじゃないかと思っています。

僕は1時間かけて撮影します。写真は単なるお土産物だと思ってやっている部分もある。
僕たちに残されたものは、商業写真家として撮った写真じゃなくて、写真術や撮影術の方だと思っているからです。

1時間で、人は大人でもこれくらい成長するんだな、という実感がある。
撮られたことのあまりない人たちを撮って、自己肯定感が上がっていくのが見える。

広告の現場だと「撮ってくれてありがとう」は基本ない。でもここでは目の前で言ってもらえる。その驚きと感動が、事業化して始めた理由の一つです。

この写真館をBtoCだけにせず、BtoBとBtoCを行き来しながら写真を撮って食べていける環境を作りたい。
全国には素敵な大人がたくさんいるので、ポートレイトを撮るべき大人を撮って生きられるマーケットを作りたい。

被写体は選ばない。写真が社会の役に立つなら誰でも撮る。料金さえいただければ誰でも撮ります。

スタイルはシンプルです。たくさんのライティングやバリエーションはいらない。ひとつ、明確にこのスタイル、このテイストを提示した方が親切だと思っています。

撮らないとわからない、ではなく、撮れるものがわかる形で提示する。
そういう写真へ、という考え方です。

僕らは写真を渡しているんじゃなくて体験を渡している、という感覚もあります。

お子さんにカメラを渡して親を撮らせたりもする。そうすると僕たちでは出せない表情が出る。
そういう仕掛けを1時間の中に散りばめて、表情を動かすのも写真術の一つとしてやっています。

諦めず、考えながら、希望を持って戦いましょう

いまこの会場に集まっている方は、写真を撮っている人たちだと思うので、本当に諦めず、AIに負けず、希望を持って、これから先もなるべく写真が残るように、皆さん頭を使って一緒に戦っていけたらなと思います。今日はありがとうございました。

Munetaka Tokuyama
1978年大阪生まれ。2001年よりNYへ移住。米・独・仏・日・中のエージェントと契約し、日米で多数受賞。現在は日本を拠点にワールドワイドに活動。
2025年7月には渋谷区代々木にスタジオTHE PORTRAITS STUDIOをオープンしている。

Instagram:munetakanyc
THE PORTRAITS Instagram:@the_portraits_jp

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