映像ディレクター 東海広宜氏が感じた制作プロセスの違いとは。



「デロイト トーマツ」という会社名を聞いて最初に思い浮かぶのはグローバルなコンサルティング会社というイメージではなかろうか。
その実、2012年にデジタル分野に特化したグローバルブランドであるDeloitte Digital(デロイト デジタル)を立ち上げ、クリエイティブとストラテジーが一体となり、ソリューションを提供している。
今回、映像ディレクター·東海広宜氏を招き、Deloitte Digitalでクリエイティブディレクターを務めるRovan Yu (余 若帆)氏とともにお話を伺った。

“誰に、どのようなメッセージを、どうやって届け、その後もたらされる結果がどうなるのか”
メッセージ戦略、クリエイティブ、メディア戦略と一気通貫で行うからこそ、効果が倍増する広告となる。
日本でのCreative offering を設立以来、Deloitte Digital と東海氏は、Deloitte 自体のプロモーションや大規模なビジネスプロジェクト、全国的なキャンペーン展開など多岐にわたる業務に携わっている。
Deloitte Digital では、クリエイティブとコンサルティングを組み合わせて業務を行なっているため、クリエイティブチームがクライアントのニーズに非常に近いところで働いている。この距離感の近さは、ディレクターやプロデューサーをはじめとするクリエイターたち自身も感じているという。
Rovan 氏 もともと、Deloitte のインダストリーチームが多方面からクライアントを支援していたのですが、ある時からクリエイティブチームも参画することになりました。その際、東海さんと一緒に作り上げたV コンテを提案したところ一発でOK。クライアントのGo から配信まであまり時間のない短い制作期間でしたが、東海さんだから信頼してお任せできましたし、結果的として継続してその後も東海さんと一緒に制作することができました。
東海氏 カッコいいものにしようとか、見たことのないものにしようとか、そういう方向だけでなく、他と差別化しつつ、かつ気持ちの良い、制作を意識しています。どのように作ったら、映像でそういった気持ちの部分を伝えられるのかを意識していますね。
――Deloitte Digital が制作するクリエイティブにおいて意識していることはあるのでしょうか。
Rovan 氏 私たちの制作スタイルは少し特徴的かもしれません。一般的なクリエイティブは制作がメインになるため、メッセージ性を中心に考えていきますよね。それに対し、私たちは“ 誰に、どのようなメッセージを、どうやって届け、その後もたらされる結果がどうなるのか”まで、すべて最初の段階で考えなければいけません。もちろん、それは一緒に仕事をする東海さんも同じです。メッセージ戦略、クリエイティブ、メディア戦略と一気通貫で行うからこそ、効果が倍増するのだと思います。
東海氏 一般的に私のようなクリエイターは企画が決まったあとから参加するケースも多いと思うのですが、デロイトさんはかなり初期のプレゼン段階から一緒に話を詰めていくスタイルです。クライアントの話を直接聞くことができ、そのクライアントが大事にしている核の部分を初期段階から意識できるのは完成した映像に大きな影響を与えていると思います。
――2017年末のクリエイティブチーム立ち上げ以降、お仕事を重ねてきたお2人には互いに対する信頼が感じられます。

Rovan 氏 東海さんの映像は絵の濃淡がすごくきれいですし、人の表情や感情にキャプチャした作品なら、やっぱり東海さんですね。あと、新しいビジネスをとりたい、提案で勝ちたいときはクライアントの気持ちを動かさなければいけませんが、東海さんが素敵なVコンテを作ってくださるので助けられています。東海さんのVコンテは、アイデアをブラッシュアップさせるプロセスでも効果的です。
東海氏 Vコンテばかり作っているみたいですね(笑)。“ このくらいでいいかな”とか、“ このくらいで伝わるだろう” という考え方が苦手なんです。“ このくらい” は、自分が納得していない証拠ですよね。何事も、真面目に一生懸命やりたいと思っています。ちなみに、デロイトのクリエイティブは、みなさん視点が広くてピュアですよね。型にはまっていない印象を受けます。
Rovan 氏 東海さんがおっしゃる“ ピュア” はわかる気がします。全部を作りこんでいけば仕上がりはきれいになりますが、私は意図的に作り上げていくことがあまり好きではなくて…。もちろんこちらの狙いは伝えますが、現場の東海さんや役者さんたちが自分なりの解釈を持ち寄って、みんなでゴールに辿りつけばいいと思っています。グローバルな観点でいうと、最近はそういった自然なあり方が主流になってきているような気がしています。
――今後、タッグを組んでやってみたい仕事について聞かせてください。

東海氏 実は僕、台湾とのハーフなんです。Rovan さんも台湾出身ということで親しみを感じているので、台湾に関わるお仕事を一緒にやってみたいと思っています。故郷でクリエイティブって楽しそうですよね。
Rovan 氏 私はデロイトの強みを活かし、日本企業や日本の観光などをグローバルに発信する仕事がしたいと思っています。それには、東海さんの絵の美しさや繊細さがピッタリだと感じています。
映像ディレクター
とうかい・ひろき
台湾台北市出身。OVERA 所属。
TVCM、WEB ムービーなどを中心に活動。
撮影= 大塚素久(SYASYA) テキスト= 安部美和
協力:Deloitte Digital

コマーシャル・フォト 2025年5月号
【特集①】
「ソニーα1 II×映画『SUNA』スチル&ムービーシューティング」
2025年5月公開を控える加藤シゲアキ監督映画「SUNA」。スチル・ムービーの撮影に使用されたソニーα1 IIの高画素、高感度耐性、AF性能を遺憾なく発揮した現場からレポート。(撮影:末長 真)
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【特集②】
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回答者:小暮和音/瀧本幹也/長山一樹/南雲暁彦/吉田明広/李 有珍
【連載】
長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
「 ポートレイトisブラックアンドホワイト」
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Vol.9 「風景写真」 金村美玖
ほか