今回は新進気鋭のフォトグラファーたちが、それぞれのレンズを使い、新しい表現の可能性を探る撮影へと臨んだ。
今回はレンズの魅力を最大限引き出すため、被写体選び、撮影手法、アイデアにこだわった湯本浩貴氏の挑戦に注目してほしい。

湯本浩貴×ZEISS Otus ML 1.4/85



INTERVIEW
――初めてOtus レンズを使われたそうですが、感想を教えてください。
一番は「開放で撮った時、とにかく気持ちいい」ということです。開放でもピント面がしっかり立っていて、周辺は柔らかくほどけていく。その両立がとても心地よかったです。
――今回の撮影のポイントは?
広いスペースと、被写体との距離が近い親密な空間、その二つの環境で撮りたいという考えがりました。気持ちよさが伝わるように自然の中で撮りたいと思い、撮影地にススキ畑を選びました(P46〜47)。ススキと人物との距離があまり離れていない状況でも、しっかりと背景と分離し、開放であってもピント面は解像している。
いいレンズを言葉で表現する時に「立体感のある描写」と言いますが、その言葉だけでは括りきれないスケールで、被写体だけでなく、空間全体を含めて魅力的に見せてくれました。
――撮影後にデータを見て、印象に残った点はありますか?
ボケ味ですね。逆光気味だったので現像で空のハイライトを少し抑えていますが、そこに光を受けたススキが浮かび上がり、玉ボケやきらめきが気持ちよく残ってくれていました。また、ススキの束感と光の重なりもきれいに出ましたね。
――85mm はよく使う画角ですか?
フルサイズの85mm で撮るのは久しぶりで、その点も含めて新鮮でした。特に室内のカットでは、85mm らしさを強く感じました。85mm は「その人を見る」という行為に向いている焦点距離
だと思います。余計な情報を削ぎ落としながらも、空間はきちんと残せる。ポートレイトであれば、ストレートに被写体を見ることができると思っています。
ただ一方で、85mm は何も考えなくてもポートレイトとして成立してしまうレンズでもあるなと感じています。
人物が強く立ち上がるぶん、顔だけが印象に残ってしまい、被写体が立っている空間や、撮影者との距離感が写らない写真にもなりやすい。僕自身は、ポートレイトであっても人物だけを撮るのではなく、その人が立っている背景、空間も含めて写したいという意識が強いんです。だから、85mm ではなおさら、背景や画面に映り込む要素を意識しながら撮影しました。
ZEISS Otus ML 1.4/85は、ピント面が明確に立ちながらも、背景が過度に主張せず、整理された形でボケていく。被写体、同時に空間や距離感も印象的に写してくれたと感じました。
――普段からMF で撮影しているそうですね。
AF は便利ですし、現場によっては心強い存在ですが、MF での自分が置きたいところに正確にピントを置くという感覚を大事にしています。その点でも、このレンズはとても相性がよかったです。
ピントリングのトルク感も含めて全体に重厚感があり、操作していて気持ちがいい。しっかりとした重量があるからこそ、道具として信頼できる感覚がありました。
――ZEISS Otus ML 1.4/85はどんな撮影で活きるレンズだと感じましたか?
狙いを定めて被写体と向き合う撮影で、撮る側の意図や判断を受け止めてくれる、信頼できるレンズだと思います。
Making

Canon EOS R5にZEISS Otus ML 1.4/85 RF-mount を装着して撮影した。半逆光のススキ畑で、被写体と背景の距離が大きく取れない状況の中、開放F1.4で、ピント面と背景の関係性を丁寧に確認していった。
ゆもと・ひろき
1993年 東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2017年 上田義彦氏に師事。2023年 独立。最近の仕事に無印良品「あったか綿インナー」、三井不動産「 三井のすずちゃんの友達夫婦」Web CM 撮影、PARCOCLUB QUATTRO などがある。
Web:https://www.hirokiyumoto.com
Instagram:@hiroki_yumoto

ZEISS Otus ML 1.4/85
2025 年10 月発売。DSLR 用Otusシリーズの思想を受け継ぎ、ミラーレス機に最適化された大口径中望遠レンズ。Apo Sonnar 設計とZEISST コーティングにより、高い解像力と色再現、立体感のある描写を両立する。約240°の回転角を持つ精密なフォーカスリングや堅牢な金属外装を備え、ポートレイトを中心に高品位な表現を可能にする。ソニーE/ニコンZ /キヤノンRF マウントに対応。
詳細はこちらから
https://www.cosina.co.jp/zeiss/otus-ml/otus-ml-1-4-85
協力:コシナ
コマーシャル・フォト2026年3月号より転載

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巻頭特集ではフォトグラファー福岡秀敏が俳優・田中麗奈をLEDで撮り下ろし。さらに倭田宏樹、森山将人、川村将貴、須藤絢乃による現場事例や機材検証を通して、LEDライティングの実践的な活用方法を解説。「Aputure LED 4機種 実践検証」ではCOB型、パネル型、スポット型、ストリップ型という異なる光源を用い、静物撮影で検証。光の質や質感表現の違いを比較しながら、LEDライトの特性を具体的に探る。撮影と解説は中村雅也氏が担当した。
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