CP+2025ソニーステージ 加藤シゲアキ×末長真トークショー「α1 IIで映画を撮る 映画『SUNA』スチル&ムービーシューティング」

加藤シゲアキ氏・末長真氏が登壇したCP+2025のステージでのトークを一部抜粋・編集して紹介する。

加藤 映画「SUNA」は、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」のために制作した作品です。砂に溺れた遺体をめぐる事件に刑事2人が向き合うというオカルトスリラー作品となっています。2025年5月9日から2週間、全国の映画館で上映され、その後順次配信となります。

末長 基本的にはBURANOをメインカメラとして、画作りで重要になるシーンや慎重にこだわりたいカットを撮っていきました。一方、BURANOを設置している時間や場所の余裕がない場合はα1 IIを手持ちで撮っていくスタイルに切り替えました。

上がα1 II、下がBURANOを構える末長氏。α1 IIでアングルを決めたあとBURANOを同位置に設置。普段からαシリーズを使用している末長氏は、スチル撮影の延長のようにムービー撮影ができるため捗ったという。

加藤 末長さんとは事前にロケハンに行ったものの、アクションシーンはやはり俳優ありきのものなので、事前に綿密なところまでは決めきれないんです。そして迎えた撮影本番、時間も押してきていた時に、α1 IIが役立ちました。シネマカメラに比べて圧倒的に軽量かつ手ブレ補正の効果もかなり強いので、手持ちならではの画作りも活かし、スピーディーな撮影に一役買ってくれました。8Kで撮れるので画質も担保されている安心感もありましたね。当初はBURANOをメインにα1 IIをバックアップ用として考えていたのですが、その役割が反転した瞬間が何度かありました。

コンパクトなボディに8.6K、35mmフルフレームイメージセンサーを搭載したシネマカメラBURANO。デュアル・ベースISOの採用で、暗い環境下でのシーンが多い本編でもノイズを限りなく抑えたクリアな画が得られた。スキントーンの美しさ、フルサイズセンサーを活かした立体感・密度感のある画は、ぜひ劇場の大スクリーンで体感してほしい。

末長 BURANOは撮影部の方がRoninを動かして僕は遠隔でオペレートすることもありましたが、スケジュールやロケ地がかなりタイトだったこともあり、時間や場所に余裕がない場合は現場で判断して僕自身が手持ちで回すことに切り替えられたことで、助かったシーンもかなりありましたね。加藤さんがこだわっていたアクションシーンも、α1 IIによる身軽な撮影体制のおかげでとても躍動感のあるシーンが生まれました。

加藤 もちろん、細かい部分を観れば描写力の違いは感じられるのかもしれませんが、画質の差はまったく気にならなかったですね。とはいえBURANOの繊細な表現力は圧倒的で、用途によってこの2台を使い分けるという体制がぴったりハマりました。

末長 カラリストの方も、それぞれの画のマッチングがまったく苦でなかったと言っていました。

末長 スチル写真とは映画のポスターやWebサイトなどの広告物として使われる写真なのですが、それらを撮る上では、なるべく映画本編と同じ画角やライティングにならないように意識しています。同じにするのであれば映画の切り出しでもいいですからね。映画の世界観を伝えられるものであるという前提の上で、制約がないのがスチル写真の面白さだと思っています。

ソニーα1 II FE 50mm F1.2 GM F1.2 1/125秒 ISO3200

加藤 映画冒頭の事件現場ですね。ロケ地は生コンクリート工場で、タイトル通り「砂」を連想させる場所です。

末長 照明部が作った空間のライティングのみで、2人に対して特別にスチル用のライトをあてているわけではありません。事件性が伝わる赤いライトと、砂を感じる背景で光の良い場所に立ってもらいました。レンズはFE 50mm F1.2 GMで、開放F1.2で撮っています。誰かにピントが合わなくなってしまうので、複数人のカットにおいて開放で撮ることは一般的に避けがちです。仔細にみれば2人にピントは合っていないけれど、今回は空気感を重視して開放を選択しました。FE 50mm F1.2 GMは絞り開放でもかなりシャープな描写が得られるので、たとえば印刷物になった時にピントが外れていることを感じさせません。

ソニーα1 II 1/160秒 ISO4000(マニュアルのオールドレンズ使用のため、F値不明)

加藤 これは事件の真相に迫るシーンで、室内プールで撮影しています。ぜひ映画を観てほしいのですが、プールならではの天井の高さや青みがかった色味が印象的な場面です。今回は映画本編もスチルも末長さんが撮影されているので、映画のカットとカットの合間にスチルを撮ることができて、スムーズでしたね。

末長 そうですね。ここのシーンは映画でもα1 IIを使っていて、違うセットの準備をしている合間に同じ機材でシームレスにスチル撮影ができたのは大きいです。また、加藤さんもおっしゃっている通り、今回はどちらの撮影にも僕が関わることができたので、撮るべきポイントや、セットチェンジのタイミングが理解できているので、とても効率がよかったです。

末長 これも映画用の空間ライティングのみで、屋外から大きなライトを打っていますが、室内は薄明り程度のとても暗い空間でした。一方で余計なライトをあてると雰囲気を損ねてしまうので、2人の持つ懐中電灯の光をわざとレンズに入れてフレアを起こし、さらにレンズ表面の反射によるレフ板効果で顔を少し明るく持ち上げています。

加藤 これ、すごく難しい撮影でした。実際にはほぼ真っ暗で、懐中電灯と窓の明かりのみ。そんな状況下で、短時間でこのカットを切り取れたのは、末長さんのカメラやレンズ、ライトへの理解度、長年培われてきた判断力あってこそだと思います。懐中電灯の角度や位置も実はかなりシビアでした。まさに、それまで映画を回していたα1 IIだからこそ、スムーズにスチル撮影へ切り替えられたのだと思います。

末長 本当にα1 IIの圧倒的なボディ内手ブレ補正機能には助けられました。手持ちで1/15秒〜1/30秒くらいのシャッタースピードに設定してもギリギリシャッターが切れます。また、今回のように非常に暗いシーンでも高い高感度性能のおかげでディテールが損なわれていないのも驚きでした。

加藤 撮影は、屋外のシーンは夜、室内でも薄暗いシーンが多かったのですが、それに対応してくれたソニー製のセンサーの力をまざまざと感じましたね。

ソニーα1 II FE 70-200mm F2.8 GM OSS II F2.8 1/250秒 ISO12800
ソニーα1 II FE 70-200mm F2.8 GM OSS II F2.8 1/250秒 ISO2500
ソニーα1 II FE 70-200mm F2.8 GM OSS II F2.8 1/60秒 ISO200
ソニーα1 II FE 70-200mm F2.8 GM OSS II F2.8 1/200秒 ISO2500

加藤 2025年の1月に、僕がファシリテーターを務めた音楽イベント「S-POP LIVE」からの4枚です。ちょうどカメラをお借りしていた時期でもあったので、せっかくなのでライブ撮影をしてみたいなと。僕も20年くらいカメラはやっているのですが、これほど高機能のカメラを使ったことがなくて、驚きました。特にポートレイトを撮る方には本当におすすめしたいですね。それはやっぱりオートフォーカスの性能の良さもそうですし、さっき末長さんもおっしゃっていたようにボディ内手ブレ補正機能のおかげで、気合を入れれば手持ちでも1/8秒でカメラブレは防げました。ライブフォトでは1/250秒くらいをベースにしていたので、1/8秒はありえない数字ですし、今まで見たことのない新しい表現が得られました。

末長 そうですね。僕も基本手ブレを抑えられるギリギリのシャッタースピードで撮ることが多いですね。「怪物」のポスターもそうですが、手ブレは抑えつつもよく見ると被写体ブレしている感じがどことなく目を引くものになっていると思います。

ソニーα1 II FE 24-70mm F2.8 GM II F2.8 1/2500秒 ISO800

加藤 いろいろな風景や状況でα1 IIを試したのですが、オートフォーカスの性能を検証するために鏡越しに挑戦してみました。実はこういう鏡越しの写真って難しいと思っているのですが、シャープな描写、躍動感、そして何より車の車窓越しに撮っているのにもかかわらず僕の目にちゃんとフォーカスセンサーが反応していたことには感動しました。

加藤 これも先ほどのライブ写真と同じく少し粒子を足しているのですが、元のデータはもっときれいでシャープな写真でした。レンズはFE 24-70mm F2.8 GM IIですね。

加藤 これまでほとんど単焦点レンズしか使ってこなかったのですが、このFE 24-70mm F2.8 GM IIで撮影した絵は、まるで単焦点レンズで切り取ったように美しい描写力でした。それはちょっと驚きでしたね。

末長 α1 IIはスチルのクオリティはもちろんですが、動画撮影機能のスペックも高く、何より8Kが撮れるのは驚きです。CMやWebムービーの現場で使われることが増えていくんじゃないかなと思っています。今回の「SUNA」も最終的には4Kで書き出しているのですが、8Kで撮っておいてクロップするためのバッファを確保でき、安心して撮影を進めることができました。

末長 真 すえなが・まこと
1990年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後アマナを経て、2016年より瀧本幹也氏に師事。2021年独立。
Web:www.suenagamakoto.com/ Instagram:@makotomaxx

加藤シゲアキ かとう・しげあき
アーティスト・小説家・俳優。1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒。NEWSのメンバーとして活動しながら作家活動を両立させ、2025年2月26日には最新長編小説『ミアキス・シンフォニー』が発売。

MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)
《MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)》はクリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト。
年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦している。

MIRRORLIAR FILMS Season7
5月9日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか2週間限定上映
X:https://x.com/mlf_TokaiCity

<製品情報>

ソニー α1 II

ソニー BURANO

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コマーシャル・フォト 2025年4月号

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【誌上写真展】 
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ほか